程よい恋愛


ブーツの音が、広いエントランスに響いた。

受付の女性にこう伝える。

「島原です、帰ってきました。代表へ伝言お願いします」


すると、彼女は妙な顔をしてから代表へ連絡した。


その後、目を見開いてから「こちらへどうぞ!!」と大慌てで頭を下げてからエレベーターの場所を指差して教えてくれた。


「久しぶりに来たから分からなくて…最後まで一緒に来てくれませんか?」

彼女へそう言うと、耳を赤く染め照れてしまった。


同じ受付の子達に背を押され、困惑しながら僕の隣に立ち、一緒に向かってくれる彼女。


「この会社、いいよね」

「そ、そうですね…」

ひとつにまとめた髪がかわいい。

綺麗なうなじ…脱毛とかしてるのかな。

白くて細い腕に長い足。



エレベーターに入った瞬間彼女の肩を抱くと目を見開いて驚いた。


「あ、あの、し、島原さん?」


困惑し、僕を見上げる彼女。


しかし僕の顔を見た瞬間、綺麗な顔を悲しげな表情に変化させた。


「……ごめん、あの…ダメだ…僕……怖いや」


察した彼女は僕を抱き締めてくれた。

少しだけ背伸びをしてるのがかわいい。



彼女の胸ポケットにストリップバーの名刺を入れ、営業用の連絡先を教えてから最上階へ向かった。


僕とすれ違うみんな驚いて「島原だ」とひそひそ話をしている。


「…来たよ、代表者さん」


ボディチェックを受けてから、だだっ広く趣味の悪いクソでか窓のついた社長室へ通され、SPに見張られながら後ろを向いている社長へこう話しかけた。


「ご苦労ご苦労~久しぶり!」


振り返った彼は……社長ではなかった。

「!!誰だ!!」

僕の隣にいたSPに拳銃を向けられるのは……白い男だった。


……


SPへ「顔よく見なよ」と叱りつけると、彼はぐっと俯きながら拳銃を懐にしまった。


……この子かわいいな。

後で連絡先渡そ。


いや、今はそれどころじゃないな。


「うん、久しぶり」

白い男にこう話しかけると、彼はうんうんと頷き、椅子から立ち上がった。


「ここのコーヒーおいしいよね!これだけでも来る理由になるよ~」

「……あは、それわかる」

「まあ島原は…向日葵は、コーヒーが目的じゃないんだろうけど」

「察しがいいね、心が読めるからかな?」


首を傾げながらそう尋ねると、彼は手元にあったペンをべきりとへし折った。


「あ、やべ、社長に殺される」

「私から説明しておきます…」

「僕の顔も分かんないようなポンコツが口出すなよ」

「まあまあまあまあ!ほら!SP君は帰って!ね?」

「向日葵のお人好し」

「ですが…」

「SP!!お前にできる仕事はないよ!!」

「白い男!コラ!黙りなさい!!SP君、コーヒー2つお願いできるかな?ミルクとガムシロ4つずついれてね?」

「…ぇ…わ…分かりました」


……。



「……島原がここに来た理由を当ててみせましょう」

白い男が呟く。


「……」

「…ずばり、アリスの……神足の死の真相?」

「…図星」


白い男はうれしそうに笑った。


「じゃあこれも当ててね?当てたら僕が僕の秘密を教えてあげる」

「いいね、どうぞ?」

「…僕は、アリスの死をどう捉えてるか、分かる?」

「…復讐、かな?」

「ニアピンだね、秘密の先っぽだけ教える」

「……」

「…僕の性感帯は、項」

「……気持ち悪い…」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る