神の道
灰色のスウェットから覗く細い指先。艶々の爪。
首を傾げる。
連動して揺れる栗色の髪。
指で梳かすと、雲母坂は微笑んだ。
微笑んで、俺の胸へ頭を寄せた。
「今日は、胸、暖かいね」
そう言いながら頭をぐりぐりと動かす雲母坂。
「こっちの方が好きか」俺がそう尋ねると、彼女は首を横に振った。
「貴方なら、なんでもいい」ベージュの毛布が擦れる音。微かな血に似た香り。唇の皮を噛む癖。俺の血を嫌な顔せず舐める彼女。血の匂いに混じる俺の吐息。彼女の吐息。
「かわいい」
俺は、妙だった。
その時の俺は。
赤子のように泣く。俺。
彼女は、ただ、その場に居た。
髪を撫でてくれた。撫でて、撫でていてくれた。
筋肉質な太もも。細い腰。
俺と似た、暖かな胸元。
愛していた。
愛している。
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