二部

少女は知ることになる


ストーカーだ。

私は、多分、なんか…あの~、部類的にはいわゆるストーカーってやつ。

好きな人の家を特定して、ピッキングして侵入して、私物を色々持ち出したりして、一晩隠れて無断で泊まったり、捨てたゴミ漁って生活の基準?基盤?みたいなのを知って、こっそり差し入れとかしちゃってる私は多分ストーカー。


一口さんが引退した原因のひとつだと思ってる。

私っていう面倒なファンがいたらそりゃ心病んでやめたくもなるよねって思ってる。

他人だったら私はそう思う。

そう思うだろうなって客観的に思ってる。

でもストーキングは意地でもやめない。

私は私であってあなたじゃない。

あなたはあなたであって私じゃない。

一口さんは私を受け入れてくれてる。

じゃなきゃ私を通報してるはず。

あの人は私の想いを 私が貴方の事を愛していて それも大好きだって事を分かってくれてる


一口さん

一口さんだいすき

だいすき

だいすきだな

引退したの悲しいけどこうやって見れてるからいいんだ

一口さんのグループたまに後ろにバックダンサー居るからさ、少しでも近付こうとか思ってダンス学んだりしたっけ?

懐かしいな

私と一緒にライブやる前に解散しちゃったね

脱退しちゃったね一口さん

寂しいね一口さん

一緒に立ちたかったね一口さん



月に照らされる一口さん

王子さまみたい

私を迎えに来てくれたのかな(これはさすがにキモいw)



一口さんが

……え?


え?まって?やば

やばいやばいやばい

一口さんの隠してた重大な秘密ってそういうこと!?

まって、まって!?隠し子!?

隠し子が居た!!

いや隠し子じゃない?

隠し子??いいよ?愛せるよ?????

やば物音立てちゃった



「……お前、白百合か?」

「え?あ、い、一口さん……!その子は…?」

「…白百合」

「い、一口さ」

「白百合」

「いもあ」



……抱き、しめられる、わたし。



「……白百合…」


なまえ、おぼえてくれてた

どすっぴんなのに、顔見て、わかってくれた


「……」


……泣いてる、一口さん。


「……俺、もう仕事やりたくない…」

「…バンド辞めて、新しくした仕事…嫌なんですか?」

「うん……俺、悪人になれなくて」

「……」

「ずっと、見てたから、わかるだろ」

「……!」


何回も私を救ってくれた、一口さん。

私が、私が出来ることは?


「…に、逃げよう!!」

「は?」

「か、駆け落ち!!二人で!!!」


頭の隅で思った「あほらし」って


「分かった」

「分かった!!??」

分かった!!!!!?????


……


分かった!!!!!!!!!!??????????





一口さんになんか腕引いて連れていかれた

目の前に居るのは一口さんの妹さんとお友だち達。

いきなり家族に紹介~!?

なんて呑気なこと思ってたら一口さんがこんな一言を。


「こいつ、俺の彼女」

「彼女!!??」

「一口さんこの人めっちゃ驚いてるよ、ちゃんと同意貰った?」


…?


「新しく仕事探して…俺、こいつと逃げるよ」

「まあ…確かにこの辺り一口さんのファン多いですしね」

「今死ねって言ったか?」

「兄貴ちょっとマイナス思考すぎる」


……にげる、あいてとして、わたしを、えらんでくれた。


「こいつ白百合って名前でさ…なんつーか…リリーを思い出して…俺の推しキャラの」

「あー、一片のリリー?なんで?」

「俺はカルマだろ?」

「なんで?」

「意味不明」

「イケメンキャラを自分だと思う癖治して」

「そいつの恋人ならリリー」

「無視するな」

「でもマーガロだってカルマと…」

「あれは一晩だけの関係だろ」

「それもそうか~」


……何を話してんのか微塵も理解できん

でもリリーは分かる!カルマ様推しだからどちゃくそに嫉妬してたわ~。

なんて思っていると、その一口さんのお友だち達の中にいる、一番小さい女の子が私にこう話しかけてきた(この子はマジでかわいい)


「あの、白百合さんは…音楽好きですか?」


……音楽?んー…一口さん以外の曲聞かないしな…。


「こいつはダンス踊るよ、俺と同じステージで踊りたいらしい」

「そう、ダンスがないと生きていけない」

「そうなんだ!」

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