潔白の少女2
私達が所属していた事務所は、一言で言うとクソだった。
ただただ一生懸命だという理由でリーダーや運営方針を決めさせられていた、中学生のアリス。
未成年なのに、綺麗だという理由で無駄に露出させられていた高校生のマーガロ。
可愛げがないからと暴言を吐かれていたローズ。
儚げで、人見知りで、可愛いからという理由で「何も言わずに黙っていろ」と言われていた雪。
雪とは反対に、前へ前へと押され、身体の性を無理矢理アピールさせられ、衣装を見ては泣いていたクロエ。
そして、私。
こんなクソ事務所と契約しようと決めたのは、私だった。
アリスへ土下座した。
アリスは何も言わず、顔を上げさせてから「泣かないで」と慰めてくれた。
私が100悪いのに、5人は私を責めなかった。
隠れ家。
アヤが置いていったぼろぼろのクソダサスニーカーを見ていると、服に感心がなく、いつもダサいボロボロの服を着ていたアリスの事を思い出した。
「…」
アリスが初めてのお給料で買ったのは、アイシャドウだった。
スモーキーで、ラメが妙に艶っぽく、初心者では使い方に困ってしまうようなアイシャドウだった。
中学生のアリスには、少し、早すぎるようなコスメだった。
アリスはそれを使ってメイクしようとしていたけど、上手くいかないと笑いながらマーガロへ微笑みかけていた。
そんなアリスが、少し悲しげに見えて、5人でアリスを抱き締めた。
隠れ家を見つけた時、アリスは、この場所の防音機能がどれほどかを確かめるためか、大声で歌い始めた。
何の曲だと尋ねると、アリスは「即興ソング」と笑い、私達もアリスを見習って、アリスに合わせて歌った。
その時が、なんか、何も考えずにいれて、ほんと、心の底から、楽しかった。
「ん、ねえ、このクソダサスニーカー誰のです?」
「アヤのだよ」
私がそう言うと、クロエはスニーカーを掴み、首を傾げてからスニーカーのサイズを読んだ。
「27.5ね…」
「……クロ、一個聞いてもいい?」
クロエへそう尋ねると、クロエはスニーカーを優しくもとあった場所へ戻してから私の隣へ座った。
「うん」
「…あの事務所、契約して、ごめん」
私の言葉に目を見開くクロエ。
クロエは少し悩んでから、首を横に振った。
「いい加減忘れてよ、僕達みんな忘れたんだから…あなたも忘れて」
私の髪を撫でるクロエ。
私は一度頷き、鞄の中に入れていた水筒を取り出して一口飲んだ。
「ラフさんは、あの事務所がした、一番のミスが何か、わかります?」
水筒をカウンターの上へ置いてから、首を横に振る私。
クロエは首を横に傾け、クスクスと笑ってからこう答えた。
「神足をリーダーにしたこと」
「……あは、それ言えてる」
「リーダーは貴方がよかった」
「…いいや、ローズだよ」
「僕は貴方だと思う、事務所の事だって貴方が決めたことだから僕達は着いていったんだし、貴方じゃなきゃ…僕はきっと、今も、事務所の事を引き摺っていたよ」
「……」
「僕達の分も、貴方が気にしてくれていたから、今もこうやって、あの頃の6人だけじゃなくて、新しく入った、11人を合わせた、17人みんなで…一緒にいれるんでしょう?」
、涙が、流れた。
クロエは私の事を抱き締めてくれた。
「ありがと、クロエ」
「いえいえ」
「クロエがいてくれて、本当によかった」
「あは……そうですか…?」
「……ほんと、ありがと、愛してるよクロエ」
「うん……僕も…あ…あい…してる…」
そう言い終わってから、クロエは、照れ隠しのためか、イヤホンのLやRを、どう見分け、どう判断し、どう覚えればいいかを20分にかけて説明し始めた。
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