バニラ香る白


右の二の腕


小さいナイフが突き刺さった


弾けるようなふわっとした痛み


か細い吐息が漏れる


もっと叫ぶものだと思ってた


新たな発見だと、呑気なことを考えていた


血が滴り落ちる。


崩れ落ちる。


視界がチカチカと チカチカ


あたまが ふわふわし る


白 男の顔  えた


捕らえた


睨み付ける白い男


押さえていた左手の血がついて


 いス ツが汚れた


蹴  る私


倒れて額を打った


歪む視界


おんなのこみたいなかお




「………ローズ……アリス……」


死にたくないよ私


しにたく ない


あたし また  さんにん で


うた うたいたいな


ぎたー 弾き た









「マーガロ!マーガロ!」


「…!目開けた!開けた!開けた!ローズ!!」


あたまに響く声


高めの だいすきなこえ


「アリス……ローズ……」


涙を流してる二人


ローズギプスしてるのに暴れてる


「……白い男、見えた」


「今は話さなくていい…無事で良かった…見つけるのが遅れたら…」


声が震えてるアリス


ふと、目に入った私のギター



「……ッ!!!!」


そのときおもいだすしろいおとこ


「ッ!!!!」

「……!マーガロ!!アリス!看護士さん呼んでこい!」

「わかった!!ローズはマーガロを見てて」



白い男の手を思い出した

ぬるい、暖かな手を

うなじに、走る、なにかを

ぬるりとした何か

その時バニラの香りがしたのは覚えてる

甘い匂いとか呑気なことおもって…


……?


「ローズ…バニラの匂い、覚えてる?」

「…覚えてる、なんか、でも、記憶が曖昧で」

「マーガロ!看護士さん連れてきたよ!」

「[隕九k縺ェ]さん!どうされましたか!?」

「看護士さん、あの…麻酔って…どんな匂いしますか…」

「ま、麻酔…?なんというか…人工的な…匂いですね…」

「麻酔がどうした?」

「…私もこの子も、あの時の記憶が曖昧で…白い男がね」

「……白い、男」


「バニラの匂いがして、そのあと…腕を刺されたの…痛みはあまりなくて…今になって痛む感じ」

「だから麻酔かも…って?」

「私もそうだった、違法なドラッグかなって一瞬思ったけど、そうだったら病院が何か言うはずだろ?でも何も聞いてないから…」

「あ、あの…」

「?はい、どうされましたか」

「…ハンカチとかで、口を押さえられて麻酔吸わされるシーンって実際にあり得るんですか?」

「あり得なくはないと…思いますが」

「え?…何…口を、押さえられたってこと?」

「でも普通気付くはずだろ!マーガロならまだしも私だって襲われたんだ…」


「……なにか…気が逸れるような事をされてた?」

「…そういえば…首、うなじに……なんか、ぬるい…熱い何かが押し当てられてて」

「……その時バニラの香りがした」

「……ぬるい、熱い何か?」

「そのぬるい何かは……湿ってた?」

「……濡れてた」

「濡れてたよね…」

「……………舌ですかね…?」


「……舐められてる時、息苦しさは?」

「……あった」

「……うん」

「白い男は人に幻覚を見せられる…とか、能力者だとか…そういう説はない?」

「……」

「…ある、かもしれませんね」

「看護士さん…?まさか看護士さんにも心当たりが…?」

「私も元々…学生の頃力を持っていた過去があるので…その…色々、詳しくなっちゃって」

「……どういう、力を持ってたんですか…?」

「……」

「……」

「……消しカス綺麗にまとめられる」

「……それって能力?」

「…………それ…友達にも言われました」

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