『パーフェクト ワールド -完美世界-』
パーフェクト ワールド -完美世界-
運営元 C&Cメディア
運営開始日 2007年4月9日
(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
二回目はこちら、完美世界。
先に言います。
これが僕の魂の故郷です。
僕が今でもネトゲを転々としているのは、このゲームのせいだと言っても過言ではありません。
それくらい思い入れの強いゲームです。
なので他のネトゲの話に比べて、文字数など気合の入り方が明らかに違うと思いますが、まあそれはこのゲームだけなのでご了承ください。
◆出会い◆
完美との出会いは、一回目で紹介したカバルで遊んでいる時でした。
ワールドチャットで誰かが、完美のクローズドβテストに応募した……などと言っていたのを偶然見かけ、なんだそりゃと検索してみたのが最初でした。
余談ですがワールドチャットで雑談する系の人は、常に心の中に満たされぬ渇望を抱きながら新しいネトゲを探してうろつき回っている悲しきモンスターであると相場が決まっています(個人の意見です)ので、そういったワールドチャットが活発なタイプのネトゲをやっていれば、高い確率で新しい別のネトゲの名前を耳にすることになるでしょう。
それはさておき。
当時、カバルでもやることがなくなってきていた僕は、物は試しとβテストに応募し、見事当選しました。
時折エラーを吐く中国製の怪しいクライアントをインストールし、細い回線で長い時間をかけてデータをダウロードして、初めて足を踏み入れたその世界は……広大でした。
完美は今で言うオープンワールドで、ダンジョンなど特殊な場所を除けば全ての世界がシームレスに繋がっています。やろうと思えばレベル1の状態で世界の端から端まで行くこともできました。
カバルしかネトゲを知らなかった僕が驚いたのはそれだけではなく、完美ではジャンプや飛行、海に潜ることすらできたという点。
今のゲームでよくあるスタミナ(ダッシュしたりすると減るやつ)というシステムがなかったため、無限に空を飛んでいられるし、ずっと海に潜っていられます。空には空の敵、海には海の敵がいて立体的な戦闘を楽しめます。
そんな、カバルにはなかった世界の広さに僕は圧倒されることになりました。
完美では、人間やエルフなどの種族によって職業が固定されていました。
人間族は戦士と魔導師、エルフは精霊師と弓使い、妖族は妖獣と妖精……といった具合に。(現在では種族も職業も増えています)
βテストで僕は悩んだ結果、妖精のキャラクターを作成しました。
妖精はモンスターをテイムして戦う職業で、自分自身も狐に変身して戦うことができます。
むき出しの茶色い土くれが強い日差しを反射してまぶしい妖族の拠点付近から始まった僕の冒険。その最初の感想は……「なんかもっさりしてる」でした。
ビカビカ光るスキルでスタイリッシュに戦うカバルしか知らなかった僕は、完美の控えめなグラフィックとゆったりとした動きがどうにももどかしく、まあこんなもんかな……と少し引いた目線でプレイしていました。
最初の頃は。
気づけば僕はレベル20くらいになっていました。
なんというか……それほど好きでもない煎り大豆を摘んでたらいつの間にか一袋食っていたみたいな……クセになるっつーかいったん味わうと引きずり込まれる面白さっつーか……
このゲームは中国製というだけあって、全体的に中国の文化を感じられるつくりになっています。
ゲーム内のシステム(五行相克とか。後半になるとプレイヤーは仙人に近い存在になっていく)や風景、中でも特徴的なのがBGMで、中国の伝統音楽を感じさせるものが多く、印象に残ります。
ログイン画面で流れている曲がまたいいんだこれが。
それとどうでもいいことなんですが、完美の中でも一番印象に残っているアイテムがありまして。
その名を『仏手柑』といいます。
これは最初のマップの雑魚がドロップする換金用アイテムです。
仏手柑は現実にもある果物で、その名の通り手のような形をした柑橘です。なぜ何の効果もない換金用アイテムにそれをチョイスしたのか謎なんですが、妙に印象に残っているんですよね……。
話を戻して。
レベル19になるとダンジョンに挑むクエストが出るのですが、これをクリアすると強い武器(しかも青く光ってる!)が貰えるため、ダンジョンを攻略するためにパーティを組まなければならなくなります。
どうしたもんかと途方に暮れていた僕は、まあどうせβテストだしと思い、白チャット(近くにいる人にだけ見えるチャット)で攻略メンバーを募集していたパーティに参加しました。
そのパーティリーダーは本国で先行してプレイしていたらしく、既にレベル30を超えている魔導師でした。
このゲームではレベル30になると空を飛べるようになるアイテムが貰えるのですが、人間族は『飛剣』と呼ばれるでかい剣に乗って空を飛ぶのです。(ちなみにエルフは最初から羽が生えているのでレベル1から飛べます。そして妖族の飛行具はエイです。なぜエイ……)
この時、光り輝く剣に乗り、燃える札を飛ばす魔導師の格好良さに、僕は一目惚れしてしまいました。
妖精4に魔導師1、精霊師1みたいなめちゃくちゃなバランスのパーティで挑んだ初めてのダンジョンは……実際の所、魔導師が格好良かったということ以外あんまり覚えていません。
ボスはめちゃくちゃでかい狼で、当然レベルが高い魔導師が狙われ、それを精霊師が必死で回復している間に僕たち妖精がぺちぺち殴る感じだったと思います。
◆オープンβ → サービス開始◆
クローズドβテストが終わり、カバルに戻った僕は初めて1万円くらい課金して結果何も残らないみたいなことになってモチベーションが完全に落ちていたこともあり、完美のオープンβテストの告知に即飛びつきました。
オープンβテストというのは、誰でも参加できるテスト……というかもうほとんどサービス開始と同意義みたいなもので、この期間中に特に問題がなければそのまま正式サービスへと自動的に移行します。
完美も特に問題なく、いつの間にか正式にサービス開始していたように思います。
僕はクローズドβテストで一目惚れした魔導師を作成しました。
このゲームは、キャラクタークリエイトがかなり細かくできます。
腕や胴回りの太さ、目の間隔、頬骨の高さ……とにかくパラメーターが細かい。
それらを極端にいじり回したバケモノみたいな姿から、美男美女まで作れるというのが売りだったようですが……実際やってみると、美男美女を作るのはめちゃくちゃ難易度が高いです。
最近流行りのアニメ調ではなくリアル寄りのモデルのため、顔のパーツ一つひとつの調和が少しでも乱れると一気に変になります。
現在ではデフォルトで格好いいor可愛い顔が用意されているらしいですが、当時はそんなものはなく。
僕は色々考えた結果、老人の魔導師を作ることにしました。
シワやヒゲを付けて、やや色黒に。
頭髪はなくして、代わりに入れ墨を。
なかなかいかつい、格好いいおじいちゃんができたと思います。
このゲームではキャラクターの顔面がHPバーなどの横にくっついているアイコンとして使用されるため、納得の行く顔を作ることはモチベーションに関わります。
スタートは人間族の城付近からなので、クローズドβテストとは違った新鮮さがあり、他のプレイヤーたちで賑わっていました。(現在はチュートリアル用MAPからスタートするらしいが、当時はそんなものはなかった)
同じような場所で同じ敵を狩ってるプレイヤーを見ると、今同じクエストやってるんだなとか、拠点に戻ると白チャットで色々質問している人がいたりして、なんだか一体感がありました。
このヨーイドンで一斉にスタートする感じは、どんなゲームでも、いつの時代でも代えがたい楽しさがあります。
どんどんクエストを進めていくうちに、ある時パーティを組んだ人からフレンド申請をされました。
お喋り好きな精霊師と寡黙な戦士の二人。
この二人が、僕のMMORPG史における初めてのフレンドでした。(カバルではそもそも他のプレイヤーとパーティを組むことすらなかったので)
ログインすれば挨拶をして、雑談をして、一緒にクエストをやって……と、何もかもが僕にとっては新鮮な体験でした。
偶然職業も被っていなかったためパーティバランスも良く、「この三人ならどこでも行けそうだね」と言われたことを今でも覚えています。
レベルが足りない未知のMAPを飛行縛りで探検したり、初めてPvPを体験したり……とても充実した楽しい時間でした。
まあ、しばらくすると三人はそれぞれ別のギルドに所属して、段々疎遠になっていくのですが……これもまたネトゲあるあるでしょう。
しばらくしてから僕が所属したギルドは、それほど大きくもなく、小さくもなくといった普通のギルドでした。
始まったばかりなのでログイン率も高く、僕が加入すると暇なメンバー数人が集まってきてくれました。
頑張って作ったキャラの見た目を褒められたのは純粋に嬉しく、集まった流れでクエストのフィールドボスの討伐を手伝って貰ったりと、初めてのギルドにビビっていた僕はかなりホッとしたのを覚えています。
ギルドには色々な人がいました。
いつも酔っ払いながら遊んでいる人。
常にテンションが高くてチャットしまくりの人。
夫婦でやってると思しき人たち。
寡黙だけど優しく教えてくれる人。
そこは気楽なコミュニケーションの場で、楽しくゲームを遊びながら、寂しさを紛らわすこともできるという画期的な場所でした。
なるほど、こりゃネトゲにはまる人が大勢出てくる訳だと納得したものです。
そのギルドに入って一番印象に残っているのは、突発的に開催されたお花見イベントでした。
恐らくリアルでも季節は春だったと思います。
ゲーム内にある『桃源郷』という場所でお花見をしよう! ということになり……
都合のつくメンバーはそれぞれお酒(リアルのやつ)を用意して集合することになりました。
『桃源郷』は、その名の通り桃の花がいつでも咲き乱れている美しい場所で、BGMもその場所専用の中国的な穏やかで楽しげなものが使われていて、なかなか素敵な所です。
後半に近いマップなので敵も結構強いのですが……敵は花がたくさん咲いている場所から少し離れた山の斜面などに配置されていたため、お花見中に襲われ続けるようなことはありませんでした。
指定された時間に集まり、ギルドマスターが乾杯の音頭を取り(当然、先に飲んでる人もいた)花に囲まれた池にかかる橋の真ん中で、今で言うリモート飲み会が始まります。
酔っ払って池に飛び込む人や、PvPをおっ始める人、延々歌い続ける人、ちょっと真面目な話をする人など、なかなかカオスな状況で、普段あまり喋らない僕も酔いが回って色々と話したような気がします。あれは楽しかった……。
そんな風に充実したネトゲライフを送っていた僕ですが、時の流れというのは残酷なもの。
やがてレベルが頭打ちになり、ダンジョンの攻略方法などが固まり、毎日やることのパターンが決まってくると、ゲームにログインするメンバーも減っていきました。
別ギルドとの統合などを経て、次第にゲームに飽きを感じ始めていた僕は、ここで一旦完美から離れることになります。
別の新しいゲームに手を出し、そのゲームも飽きて次のゲームへと……
終わることのない流浪の旅が始まったのでした。
◆里帰り◆
里帰りというものがネトゲにはある、と第一回で少し書きましたが、当然完美にもそれはありました。
しかし僕の完美への里帰りは、リアルでの状況も相まって、なかなか深いものになりました。
その時の僕は、会社を辞めて、夢のニート生活を開始していたからです。
僕は新しく、弓使いのキャラを作って一から始めました。
一度やったゲームなので効率よく進める上に、無敵となった僕にはいくらでも費やせる時間があります。
あっという間に高レベル帯に入り、ギルドにも入り、ものすごい勢いでゲームを進めていきました。
結果的に、最初の魔導師よりも高レベルになり、かなり難易度の高いコンテンツに参加するくらいまで行きました。
ところでこのゲームは課金圧がかなり高いゲームです。
課金して買ったトークンを販売所に登録し、他のプレイヤーがそれを買うことでゲーム内コインに変えることができる……そう、言わば公式
また、課金でしか買えない速度の早い飛行具、ペット、現実的に課金しなければ入手不可能な最強の武器など、課金すれば快適に遊べるという段階から一歩進んだ、課金しなければちょっとキツいというレベルのそれでした。
しかし、当時の僕はニートです。
金はないが時間なら無限にある……ならば時間をゲーム内コインに変えれば良い。
ゲーム内コインさえあれば課金アイテムを買えるということも相まって、ある意味僕にうってつけのシステムでした。
ある時僕は思いつきました。
課金するか、高難度ダンジョンに何度も潜らなければ作れない強い装備を、あえて正攻法ではなく時間をかけて金策することで作ってしまおうと。
僕は馬を走らせました。
高く売れる素材がフィールド上に湧くポイントを押さえ、それらのポイントを一周するとちょうど最初に採集した素材がリポップするように時間を調整し、あとは延々と馬で走り続けるのです。
客観的に見て当時の僕は、ちょっとおかしかったような気がします。
何時間も何時間も素材を掘り続け、(ネットラジオか何かを聞きながらやっていたような気がするけど記憶が曖昧)それを持って首都の買い取り専用露天を巡り、一番高く買い取ってくれるところに売れるだけ売る。そんな生活を結構な期間やっていました。
そうしてお金を貯め続けた結果、念願の高レベル帯の武器を手に入れることができたのです。メインウェポンの弓ではなく、サブウェポンのナックルを。
なぜ弓を作らなかったのか……
他人と一緒は嫌という天邪鬼な性格は、カバルで変なビルドにしていた頃から続いていたようです。
それでもまあ、相当やり込んでいなければ取れない装備を見せびらかすのはなかなか楽しかったです。
弓使いは基本的には弓で攻撃するのですが、敵との距離が近くなるとダメージが半減してしまうという弱点があります。それを補うのにナックルは効果的でした。また、短時間の攻撃バフをかければナックルで殴る方がDPSが出る場面も結構あるので、それなりに活躍できたように思います。
その後はまあ、予想通りといいますか……大きな目標を達成して、その成果を存分に味わった後、僕は燃え尽きました。
やり切ってしまったのです。
その達成感は僕の社会復帰へと繋がり、完美とのお別れを意味していました。
ゲームクリア。
僕の中で完美というゲームはもう、一度クリアしたゲームになってしまいました。
その後も一、二度里帰りをしましたが、いずれも少しやったら満足して終わる程度のものでした。
こうして完美の思い出を書くに当たってwikiを読み返したりしたのですが、アップデートされた情報に少し心が動かされ……しかしやはり、僕があの頃と同じくらいどっぷりと完美にはまり込むことはもうないのでしょう。
それは寂しくもありますが、二度と学生時代に戻れないのと同じように、時折懐かしむくらいがちょうどいい距離感なんだろうなと今では思っています。
長々と書きましたが、以上で完美世界の思い出語りを終わりにしたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます