第5話 アンジュを肴に、アリーシャとシュレが会話をする? 2


「アリーシャ。 付き合ってほしい」


「うん」


(え、何よ。 シュレったら、私を呼んで、何をしたいというのよ。 ……。 あ、格闘技室だわ)


「アリーシャ、私は、綱を使って登る事ができない」


(うわっちゃぁ、シュレったら、何よ、突然、私に言ってくるのよ。 ……。 おっと、いけない、いけない。 この娘は、目的の事しか言わないのよ。 それにしても、ジュネスも、余計なトレーニングを追加してくれたわ。 まあ、あの程度なら、私には、特に問題ないから、平気だけど、シュレは、……。 どう見ても、一般人と変わらないか、な)


「……」


(あら、シュレったら、私を、ジーッと、見ている。 ああ、綱登りの事よね。 どうしよう。 正直に話した方が、いいのかしら? それとも、オブラートに包んだ方が、……。 いや、この娘は、直接的な言葉で言わないと、明後日の方向に進むかもしれないわ)


「あのねぇ、シュレェ。 綱登りはぁ、腕だけで登るにはぁ、ある程度筋力がついてないと無理なのよぉ。 あなたはぁ、魔法職だからぁ、体を鍛えるよりぃ、勉強してたでしょぉ」


「そうだ。 狩りの無い日は、全部、図書館で過ごした。 図書館の本は、毎回、全部読んでたぞ」


(ああ、これ、始まりの村の時の事を言っているのね。 ……。 そうよね。 シュレって、そんな感じがするわね。 ただ、ひたすら、本を読んでいる人みたいな感じが、伝わってくるわ)


「じゃあ、シュレはぁ、体力作りとかはぁ、始まりの村ではしてこなかったのぉ?」


「そうだ。 ジュネスとレオンは、木刀で型の稽古とか、組手だとかしていた」


「……。 それをぉ、シュレはぁ、見ていただけだったのぉ?」


「いや、それを横目で見て、図書館に行った」


(ああ、トレーニングになりそうな事はしてないのね)


「あのねシュレェ。 それならぁ、足を使って登ってみるのも手なのよぉ。 足で綱を固定してぇ、落ちないようにしてぇ、腕を使って登るのよぉ。 それがぁ、ダメならぁ、床で足を伸ばしてお座りするでしょぉ。 それでぇ、綱を両手で持ってぇ、お尻を上げるのよぉ。 まあ、私はぁ、少しでも登る距離を伸ばしたいからぁ、座った状態で登り始めるけどぉ、力が無いシュレならぁ、最初はぁ、お尻を浮かせるだけでもぉ、効果は有るはずよぉ」


「分かった。 試してみる」


(シュレの腕力で、どこまで出来るようになるかは、分からないけど、やるだけやってみた方が良いわね)




(あー、シュレに引き換え、アンジュは、どうするのかしら? 冒険者になろうというのだから、基礎トレーニングは、大事なのに、……。 シュレは、意外にも、トレーニングの方法について、聞いてきたけど、アンジュは、どうするのかしら)


「……」


(うわ、シュレったら、私の事、睨んでいるわ)


「どうした? 何を考えている」


(うっわーっ! 考えている事に気がつかれてしまった)


「ん、ああ、ええっとね。 アンジュはぁ、どうなのかなと思ってたの。 ほら、シュレはぁ、聞いてきたけどぉ、アンジュはぁ、聞いてこないでしょ」


「アンジュは、綱登りは、半分位までなら登れる。 私より、上だ」


(あ、まあ、そうよね)


「うーん、でも、それはぁ、足を使って、途中まで登っただけよねぇ」


「そうともいう」


「それにぃ、アンジュはぁ、綱登りはぁ、あまりぃ、やりたく無いみたいなのよぉ」


「アンジュは、可愛いを目指していた」


「……。 可愛い、……、冒険者、かなぁ?」


「多分、そうだ。 アンジュは、可愛いが好きだから、可愛い冒険者を目指していると思う」


「それってぇ、冒険者としてぇ、役立たずだって事じゃないの?」


(ちょっと、どういう事なのよ。 魔物が出てきたら、「きゃーコワイ! 」とか言って、後ろに下がったり、盾役の後ろに隠れようって事なの? それって、マジ、ムカつく女性冒険者よね。 男達に守られて生きていくみたいなやつ。 それで、ランクだけは、メンバーが倒した魔物で、ランクアップじゃないの。 それって、寄生ってやつじゃないの。 弱い上位ランカーの典型じゃないのよ)


「アンジュは、弓も使うから、綱登りは、弓のためだと言っていた。 だから、アンジュは、弓で役に立った上で、可愛くありたいみたいだ」


(それなら、構わないのか。 戦う事を優先して、そこに、可愛いさを足したいのね。 何だか、アンジュって欲張りみたいね。 ……。 だけど、アンジュは、弓でしょ。 弓を引くって、腕の力が、強くないといけないのよ。 弦を引く腕は、綱登りが効きそうね。 左腕は伸ばすのか、……。 でも、強い弓だと左腕に力がないと、震えてしまいそうよね。 ちょっと、可愛いは、難しそうね)


「でもぉ、シュレはぁ、なんでぇ、綱登りが出来るようになりたいの?」


「……」


「ん? どうかした?」


「言いたくない」


(あら、シュレったら、何だか、恥ずかしそうにしている)


「……」


(何だか、本気で、言いたく無い見たいね。 まあ、いいか)


「アンジュに、負けたくない」


「えっ!」


(何? アンジュに対抗意識があるの? そう、そりゃぁ、エルフの美少女と一緒なのだから、男達の目は、アンジュに向くと思うわ。 ……。 あ、ジュネスが、気になるのか。 でも、シュレだって、可愛いと思うわよ。 アンジュとは違った感じで、何だか、守りたくなるって感じがするわ。 可愛いシュレと美人なアンジュって、構図は、何だか、いい感じよね。 ……。 えっ! その中で、私の立ち位置って、どうなるの?)


「姉さんは、綺麗。 アンジュは、美人。 私は、味噌っカス。 だったら、綱登り位、アンジュに勝つ!」


(あら、それで、綱登りって、何だか、方向がズレている、よう、だけ、ど、……。 まあ、パーティーとしては、その方がいいのか。 ……。 でも、シュレから見たら、私って、綺麗に分類されるの? ……。 ま、いいか。 それも悪くない。 うちのパーティーの女子は、レベルが高いのかぁ)

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