第3話 格闘技の授業後のレオンとカミュー 2
「なあ、ところでさぁ、アンジュって、不器用なのか?」
「うーん、どうだろう。 弓は、上手だよ。 結構、的に当てるよ」
「でもさぁ、シュレ姉ちゃんと組んで、練習してた時、最初は、シュレ姉ちゃんも投げられなかったけど、そのうち、シュレ姉ちゃんは、投げてたけど、アンジュは、投げられなくて、ヒーヒー、言ってたよね」
「ああ、アリーシャが、なんか、指示してたよね。 負荷をかけるとか言ってたけど、それでじゃないのか」
「あれさぁ、アンジュとシュレ姉ちゃんだと、どう見ても、アンジュの方が、強そうだよねぇ。 シュレ姉ちゃんって、魔法職だから、始まりの村の辺りでも、魔法しか使わないし、休みの時でも俺とジュネス兄ちゃんとで、トレーニングしていても、シュレ姉ちゃんは、ギルドの図書館に行ってたよ。 本なんて、少ししか無いから、直ぐに読み終わっちゃうと思うのに、いつも、通ってたんだ」
「ふーん。 そうだよな、シュレって、本当に線が細いから、格闘技に向いてない体型だよね。 まあ、時間があれば、常に図書館って、シュレって勉強熱心なんだな」
「ああ、きっと、魔法の事だと思うんだ。 でも、あれだけ通ったら、同じ本を何度も読んでいただろうに、何度も読んで、意味があったのかなぁ」
「ふーん、そうなの」
「なぁ、どう考えても、シュレ姉ちゃんの方が、弱そうだったのに、結果は、違ったんだ?」
「ああ、きっと、格闘技っていうのは、力の掛け方とか、タイミングとかが重要なんだろ。 だから、体格差があっても、弱そうなシュレが、アンジュを投げたんだろうな。 でも、それにも限界があると思うよ。 別のところで、筋肉の塊のような大男がいただろう。 覚えているか?」
「ああ、覚えている。 すんげー、腕と足だったけど、腹も出てたそ」
「へー、レオンは、それに気が付いたんだ」
「俺だって、その位は、分かるよ!」
「ああ、悪い。 でも、あれと組んでいたやつ、ジュネスよりも体格良かったけど、全く歯が立たなかったじゃないか。 技とかを研ぎ澄ませても、力には、勝てそうもないって、見本だっただろう」
「ああ、確かにな」
「だから、技にも限界があると思うんだ。 きっと、技と一緒に力も付けないと、強くなれないと思うよ」
「ふーん。 でもさ、シュレ姉ちゃんを投げられなかった、アンジュって、何か良かった」
「……」
「おい、カミュー。 何で、そんな変な顔で、俺を見るんだ! そんな可哀想な目をするなよぉ」
「お前、アンジュの表面しか見てないぞ。 あれは、本当に、黙っている時だけしか、見るところはないぞ」
「それは、分かる気がする。 顔立ちとか、とても整っているし、スタイルだって、ウエストとかすごくくびれているよね」
「あれは、きっと、弓を使うから、胸側が大きいからだと思うぞ。 ウエストに脂肪は、少なそうだけど、結構、筋肉は多そうだぞ」
「ふーん、さすが、兄妹だな。 そんな事まで知っているんだ」
「そりゃそうさ。 入学するまで、本当に切り詰めたから、安宿を2人で使ったんだ。 見るなといっても、目に入っちゃうだろ」
「何だか、そそるな」
「オイラは、もう、見慣れた。 って、言うか、むしろやめて欲しかった。 妹のそんな姿を見ても、家族だと思ったら、そそるよりも、残念さの方が、先に出るぞ」
「へー、俺は、喜んじゃうと思うぞ」
「そうか、俺は、凹んだ。 ……。 きっと、下着姿だとか、裸だとかは、それを恥ずかしいと思うのを見るのが、そそるんだと思うぞ。 当たり前で、そんな姿で歩き回られたら、ガッカリ感の方が強いよ」
「そうかなぁ、40代のエルフで、超美人で、スタイルも良いなら、それだけで、興奮しそうだけどなぁ」
「それは、他人だからだよ。 兄妹だと、どんなに美人だって、全く、そんな気にならないよ」
「ふーん。 カミューも、アンジュが、美人だと認めるんだ」
「アッ! う、うん。 そうだね」
「……」
「だけど、レオンに、アンジュの裸とか、下着姿について、言われると、何だか、ムカつくな」
「えっ! そうなの?」
「ああ、オイラが話す分には、気にならないけど、他人にアンジュの、そんな姿について、言われるのは、……、嫌だ」
「ふーん、そう」
(ちょっと、カミュー、本気で、怒っていそうだ。 もう、この話題は、やめておいた方がいいかもしれない。 いや、もう、やめておこう)
「なあ、カミュー。 アンジュは、誰が見ても美人だと思うけどさぁ」
「……。 な、何だよ」
「お前、顔の形とか、アンジュに似ているし、美男だと思うんだけど、お前、モテないよな」
「……」
「アンジュは、あの高飛車な性格だから、近寄っていく男って、全員、撃沈しているみたいだよね」
「ああ、時々、食事とかに誘われているみたいだけど、全部、断っているみたいだよ」
「やっぱり、アンジュって、モテてるんだ」
「ああ、モテてるみたいだ」
「お前は、誘われた事あるのか?」
「……」
「おーい、カミュー」
「聞くな」
「あ、そっ!」
(でも、何でなんだ。 カミューだって、美形だぞ。 ああ、そういえば、冒険者、じゃない、学生に、エルフは、居なかったな。 ・・・。 それでなのか?)
「おい、何で、オイラの顔を、じーっと、覗き込むんだ?」
「いや、まぁ、そのー、カミューは、美形なのに、女の子に声をかけられているところを、見た事ないなと思った」
「……。 ん! あぁ! ……。 無い」
(ああ、そうか。 カミューって、性格が臆病っぽいから、それが、表に出ているのか。 ……。 そうか。 カミューって、いつも、自信がなさそうな顔をしてるから、それが、周りに、見えない壁を作っているのかもしれないな。 ……。 それに、あのアンジュが、横に居たら、周りは、声を掛けにくいのかもしれないな)
「「はぁ」」
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