第2話 格闘技の授業後のレオンとカミュー


「なあ、レオン。 今日、初めての格闘技の授業だっただろう」


「ああ、そうだった」


「教官は、教える側の威厳を見せるがために、特待生であるジュネスを呼びつけたんだよ。 あの後、レオンが出て行く事は無かったんだぞ。 あれだと、レオンのやられ損だろう。 どう考えたって、ジュネスを、簡単に倒すほどだったんだ。 お前が、敵うわけない位は、分かっていたんじゃ無いのか?」


「うん。 多分、っていうより、絶対、無理だと思った」


「じゃあ、なんで、そんな無謀な挑戦をしたんだよ」


「うーん、多分、にいちゃんのため、かな」


「ジュネスのため?」


「だって、俺は、ここの学費から生活費まで、ジュネス兄ちゃんにも出してもらっているんだから、少しでも、恩返ししたいじゃないか。 休める時間も作ることもできたと思うし、それに、兄ちゃんって、本当に、転んでもタダじゃ起きないタイプっていうか、何かをキッカケに、どんどん、変わっていくんだ」


「へー、そうなんだ。 お金、ジュネスが出していたんだ」


「うーん、正確には、兄ちゃんと姉ちゃんなんだ。 2人とも、ここに入学するために、お金を貯めてたらしいんだけど、2人とも特待生になったから、俺の分を出してくれたんだよ」


「ふーん。 でも、始まりの村の周辺って、お金を稼げる場所って、一気に魔物が強くなるだろう。 俺とアンジュもだけど、多分、アリーシャも、稼げる弱い魔物を狙って、国を移ったんだよ」


「ああ、それも、兄ちゃんが、盾役をしてくれたから、なんとかなったんだ。 フルメタルアーマーを改造して、関節を衝撃から守れるようにとかしていたんだ。 あれだと、魔物の攻撃が通りにくいから、兄ちゃんが受けている間に、俺が、魔物の動きを止めるんだ」


「へー、お前も、魔物を倒せたんだ」


「俺だって、倒せる! ……、って、言いたいけど、俺の力だと、傷を入れられるだけだったから、足の腱の辺りとかを狙って、動けなくするのが、俺の役目。 後は、動けなくなったところを、兄ちゃんが、トドメを刺すんだ」


「レオンは、足止めが役目だったんだな。 ところで、ジュネスは、何か、ヒントを見つけたのか? お前の、無謀な、教官への挑戦で」


「うーん、よくは、分からないけど、でも、後で、教官と何か話してたよ」


「そうなのか。 じゃあ、何か、ヒントを見つけたのかもな」


「なぁ、カミュー。 ところでさぁ、アンジュって、なんで、あんなにツンケンしているんだ? あれだけの容姿なんだから、少しお淑やかにしたら、モテモテだろう」


「……。 ああ、なんでなんだろうな。 それに、プライドが、高いぞ。 パーティー決めの時だって、オイラが、レオン達と組もうって話したけど、こっちから、声をかけちゃダメだって、アンジュが言ったんだぜ」


「ああ、兄ちゃんが、アンジュに睨まれたと思って、ビビったみたいだよ。 だから、最初にアリーシャ姉さんに声をかけたんだって」


「まあ、なんとか、6人のパーティーになったから、規定に達したけど、アレで、もめて、喧嘩別れにならなくてよかったよ」


「そうだったな」


「アンジュには、ヒヤヒヤものだったんだぜ」


「そうだね。 あの時、兄ちゃんが怒って、喧嘩別れになったら、6人全員が退学になってたかもしれないしね」


「そうなんだよ。 アンジュって、全く考えずに行動してしまったり、余計な事を言って、相手を怒らせるとか、良くあるから、本当に困るんだ。 パーティー決めの時だって、本当にヒヤヒヤしたんだよ。 他は、もう、決まってしまって、オイラ達だけが残っていたんだから、残る道は、全員が、まとまるしか無かったのに、アンジュったら、プライドばかり主張していたんだ」


「ああ、なんとなく分かる。 兄ちゃんが、アリーシャ姉さんに声掛けた後に、アンジュったら、兄ちゃんに食ってかかっていたからね。 でも、あれで、6人パーティーになれたから、助かったけど、あれで、アンジュが、ヘソを曲げてしまって、パーティーにならなかったら、本当に大変だったね」


「ああ、ジュネスが、上手くまとめてくれたから、助かったよ」


「そうだね。 兄ちゃんが、アンジュと同じような態度を取ったら、きっと、決裂してたね」


「「ハァ〜っ」」


「お前の姉ちゃん、美人なのに、プライド高いから、大変だな」


「違う! あっちが、妹だ!」


(あー、ヤバ! これって、面倒なやつだ。 きっと、どっちが、兄だか姉だかで、きっと、もめてるやつだ)


「ああ、ごめん。 妹の面倒を見るの大変だね」


(どうせ、双子なんだろうし、転移してきた時だって一緒だったんだから、どっちだっていいだろうに)


「ハァ、頑張ってくれ、カミュー」


「……。 あ、ああ」


(レオンのヤツ、何を考えているんだ? どう考えても兄と妹だろう。 なんか、変な事、考えてないだろうな)




「なあ、カミュー。 ところでさぁ、格闘技の授業の時、兄ちゃんが、シュレ姉ちゃんと、アリーシャ姉さんと、何か話した後、教官と話してたよな」


「ああ、そういえば、ジュネス、教官と、天井から綱が何とかって、言ってたぞ」


「ふーん。 綱ねぇ。 なんだろうね」


「サー? なんだろうね」


「カミュー、ひょっとしたら、格闘技が、簡単に強くなる、何か、ヒントを得たのかもしれないね」


「はーっ、本当に、レオンは、単純だな。 そんなに簡単に強くなれるわけないだろう。 強くなるっていうのは、大変なことが付きものなんだよ」


「そうだよね。 強くなるって、本当に頑張らないと、できないし、継続しないといけないよね」


「うん。 オイラ、この後の展開が、なんとなく、分かるような気がする」


「いや、カミュー。 きっと、それ、確定だぜ」


「……」


「諦めよう、カミュー」


「そうだな」


「「はーぁ」」

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