あめをしらないひとたち

狂フラフープ

あめをしらないひとたち

 百年ぶりに雨が降った。

 恐らく雨だ。雨だと思う。雨じゃないかなあ。

 なにせ村で最も年寄りの長老でも齢は百に届かない。当然誰も雨なるものを見たことのある者は居らず、もはやこの辺りにおいて雨は良くて伝説、悪ければ与太話の類であった。いやーやっぱり雨は実在したんだなあ。


 おっと失礼。雨をご存知ない方のために説明せねばなるまい。

 雨というのは空から降るやつである。

 降るのは水であるとも氷であるとも、あるいは灰や砂、槍や蛙が降るという話もある。とにかく色々降るのだ。

 とにかく降ってきたのでこれは雨です。


 まず大きい方の雨だが、ぴらぴらしていてヌーっとしたのがついている。

 問題は小さい方の雨だ。なんと舐めると甘いのである。甘いことが判明したとたん、皆は小さい方の雨に群がり、すぐに食べつくした。

 誰もかれもが未練がましくしていたが、なくなったのだから仕方ない。


 皆は農作業に戻ったが、どうにも気になったので大きな方の雨がなんなのか、長老のところへ持っていって聞いてみることにした。

 すると長老はヌーっとしたのを睨み付けながら、急に変なことを言い出したのだ。


「あなたがたは指導者に虐げられている。我が国に来れば飢えることはない」

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