第20話
ざまぁみろ!
やったー!レンのお弁当イベントが消えた!
「レン!」
「なんだよ、来るなって言っただろ?」
「別にいいじゃない。はい、これお弁当。これで元気つけてタクト捕まえれるように頑張ってね」
「まぁ、お弁当はありがとう」
「じゃあ、私はお弁当渡しに来ただけだから」
「もしかして彼女だったりする?」
「違います、シューヤさん。あれはただの幼馴染みですよ!」
みたいな会話がなくなった!
俺がいないところで行われてても吐き気がしてしまう。
あいつもまだまだ主人公にはなれないようだな。
「何ニヤニヤしてんの?」
やべ、顔に出てしまってたか。
「別にニヤニヤしてないぞ」
その言葉にミキは俺を睨んでくる。
どうやらまだ俺はニヤニヤしてるらしい。
「で、なんであんたは1人で外にいるのよ」
「え、それは…」
どうしよう、遅刻したから警備を外されたなんかこいつには言えない。
「お、俺だけ特別に外での警備を任せられたんだよ」
大嘘をついてしまった。
「へぇー」
多分バレたな。
まぁ、バレてもいいから一応嘘をつく事が大切だから。
「もう私用ないから帰る」
「わざわざ報告なんかいらねぇから。さっさと帰れ」
あー、帰らないでぇ〜。とでも言うと思ったか?
「はい、これ」
ミキは持っていた手提げのカバンを俺に差し出してくる。
「捨てるの勿体無いからあんたにあげる」
俺は残飯処理か?
「毒でも入ってるのか?」
こいつが俺を殺そうとしてる可能性がゼロでは無いからな。
「じゃあ、あげない」
ミキは差し出したカバンを引っ込めた。
「ちょ、ちょ、ちょっと待て!いらないなんか一言も言ってないだろ!」
俺はすぐに木から降りてミキの前に立つ。
あんぱんと牛乳しか食べてないからお腹は空いている。
「ん。ちゃんと洗って返しなさいよ」
「ありがとう」
「じゃっ」
そう言ってミキは帰って行った。
悪いな、レン。
お前が本来食うはずだった弁当を今から食ってやる。
弁当の蓋を開けるとなんとも美味しそうな物がいっぱい入っている。
「いただきます」
俺は両手を合わせた。
1人でもちゃんと言うタイプなんだ。
***
「ごちそうさまでした」
ふぅー食った食った。
いやー美味しかった。
あいつ口は悪いくせに料理は上手いんだな、プラマイゼロだな。
これがレンの胃袋じゃなくて俺の胃袋に入ったのが何より嬉しい。
レンは空腹の方が似合ってる。
「ジンさん」
「ん?…カレンちゃん!」
俺は思わず立ち上がった。
「ど、どうしたの?」
「外を眺めていたらジンさんが見えたので」
俺が見えたから俺に会いに来たとか可愛すぎるにも程があるだろ!
「わざわざ来てくださったのですね」
「はい。たとえ中の警備が出来なくても力になりたくて」
「ありがとうございます」
「いえいえ、困ってる人がいたなら助けたいと思うのは当然の事です」
今の俺はかなりカッコをつけていた。
「良い人なんですね、ジンさんは」
「エヘェ」
あ、ダメだ。
褒められて思わず変な声が出てしまった、これはかなりキモい。
「どうしても奪られたくないんです。とても大切な物なので」
「宝石のこと?」
「はい。あれは今は亡き母に父が贈ったとても大切な物なんです」
「じゃあ、俺がその宝石を死ぬ気で守ってみせるよ」
「それは頼もしいです」
「そ、そうですか?」
あ、キモい。
気を抜くとキモくなっちゃうんだよなぁ。
「ジンさんには期待していますね」
「はい。期待に応えられるように頑張ります!」
「では、私はここで失礼します」
カレンちゃんはペコリと頭を下げた。
「じゃあまた会いましょう」
俺は手を振ってカレンちゃんを見送った。
これは何としてもでもタクトを捕まえなくちゃ!
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