第19話

 そうだよ、そうだよ!


 別に警備とかそんなの関係無しに俺が単独でタクトを捕まえれば良いんだ!


 だから部長は俺にあんな事を言ってくれたんだ!


 やっぱり部長は俺が活躍する事を信じてくれてるんだ!


 じゃあ俺はこんな所でいじけてて良いのだろか?


 …違う。


 部長が言っていた通りここで終わってしまうのか?


 …違う。


 俺はタクトを捕まえてカレンちゃんの心もゲットしてみせる!


 ありがとうございます、部長。


 俺はまだ頑張れそうです。


 まぁだからと言って今からやれる事なんて無いんだけどな。


 勝手に捕まるって言っても今から行く訳じゃないからな。


 狙う瞬間があるならタクトが屋敷に入っていく所か、タクトを逃して屋敷から出て行く所しかない。


 屋敷に来るのは確定しているなら闇雲に狙うより絞った方が良い。


 もう俺にはこれしかない、これしか挽回するチャンスは無い。


 何がなんでも俺はタクトの奴をとっ捕まえてやる!


 そうと決まれば修行だ!…ついでにワッフルの散歩でもするか。



 ***



 俺はまた一つ強くなった気がする。

 

 あの絶望的状況から脱して、メンタルが強くなってしまった。


 筋繊維と同じで破壊したら修復の段階で強くなっていくものだ。


 だから俺はメンタルが筋肉になっている。


 メンヘラモードを乗り越えた俺は今までと一味も二味も違うぞ。


 確かタクトは日付が20に変わる時、って書いていたから19日の朝から張ってればタクトを捕まえる事が出来るかもしれない。


 その19日が今日なのである。


 だから気合いを入れて屋敷の周りを今から勝手に警備しに行くとするか。


 …雰囲気作りのためにあんぱんと牛乳でも買っていくか。


 雰囲気作りって大事だよな、俺ちょっとワクワクしてきた。


 とっ捕まえてやるから待ってろ!



 ***



 …暇です。


 張り込みってこんなにも暇なのか?


 何か1人で遊べる道具でも持ってくるべきだったなぁ。


 この屋敷は木に囲まれてるから歩いても歩いても木しか無い。


 景色が全く変わらない。


 ここの世界ってカブトムはシいるのか?見回ってるついでに見つけてみようかな?

 

 あれ?もしかして俺って張り込みに向いてない?


 ちょっとしか時間経ってないのにカブトムシを見つけようとしてる。


 心が少年なんだな。

 

 あ!カブトムシみたいなやつがいる!これは捕まえるしかない!


 俺はカブトムシのいる木に登っていく。


 いやー懐かしいなぁ、あの角がかっこいいんだよなぁ、さすまたみたいで。


 よし、あとは手を伸ばせば捕まえられる。


 これは決して遊んでいる訳じゃなく、タクトを捕まえる予行演習だから遊んでいる訳じゃない。


「何してんの」


 どこからか聞こえてきた声に俺は驚いてしまって体がビクッとなってしまった。


 そのせいでカブトムシはブーンッとどこかへ行ってしまった。


 あー、せっかく捕まえられそうだったのに…。


「あーあ」


 あいつも俺のペットになるはずだったのに…、まぁ俺がいないけど幸せになってくれ。


「虫捕まえようとしてたの?」


「げっ」


 ミキだ、レンの幼馴染みのミキだ。


「失礼な反応しないで」


 するだろ、部室であんな事があったんだから普通の反応ではあるだろ。


「その歳になってまだ虫取りしてるの?」


 煽ってるのか?


「虫取って何が悪いんだよ。人の家の柿取ってる訳じゃねぇんだし」


「悪いなんて言ってないから」


 言っているようなもんだろ、年相応の行動をしろと言ってもないのに聞こえてくる。


「で、お前はなんでここにいるんだよ。お前はボランティア部じゃないだろ」


 少し大きな手提げのカバンを持ってるようだが、1人でピクニックにでもしに来たのか?


「私はレンにお昼ご飯は渡そうとしに来たけど…」


「けど?」


「入らせてもらえなかったのよ」





 ざまぁ!


 

 

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