第17話
俺はちゃんと部長に認められていたんだ。
だけど俺はその期待を裏切ってしまった。
「バレてもバレなくてもすごく怒られてしまうから、じゃあもうここはバレない事を願ってレンを応援しよう」
「はい」
正直に言うことを勧めるんじゃなくてバレない事を勧めるのは部長らしい。
意外と感じるだろうが部長は意外とヤンチャな部分もある。
「それでどうしてレンは戦ってるんですか?」
レンはどうして戦っているのだろう?戦闘狂なのは知ってるがそこまでして戦いたいのか?
「本当にここの警備に必要か試験してるんだよ」
試験?
そっち側が依頼してきたのに?
「部長はもう終わったんですか?」
「うん。僕はもう終わったよ」
それもそうか、1時間以上遅刻してるから終わってるのは当然か。
「もちろん合格ですよね?」
「もちろん」
部長は腕を組みながらピースサインを俺に見せる。
流石だ、やっぱり俺たちの部長だ。
「でも、あの人強くないですか?」
俺は今レンと戦っている人が気になって聞いてみる。
戦ってはないけど、見てるだけでも強いのは分かる。
レンも決して弱いわけじゃないのに軽くあしらわれている。
「僕も実力を見られただけだから勝ったわけじゃないよ」
「そうなんですね」
もしかしてレンが終わったら俺の番かもしれない、バレてなければ。
はぁ〜、寝坊なんかするんじゃなかった。
ふと、部長の方をチラッと見ると怒ってるのか難しい顔をしている。
レンの戦いを見てムカついてくれているんなら良いけど、違うんだろうな。
「部長。…ごめんなさい。期待に応えれなくて」
期待に応えられないって言ってもハードルは低いよ。
寝坊しないだけなんだもん。
「はぁ〜、僕だけだよこんなジンを許すのは」
「ぶちょー…」
部長の強張っていた顔がほころんで少しだけ口角が上がった。
ぶちょーー!やっぱり俺はあんたの事が好きだよ!
「あ、終わったみたいだよ」
そんなこんなしているとレンの試験が終わっていた。
正直どうでも良いから合格しようが不合格だろうがどっちでもいい。
「お疲れ様」
部長はレンの奴に労いの言葉をかける。
「いえいえ、まだまだです」
何をカッコつけて謙遜してんだよこいつは。
「お前来てたのかよ」
「来てたら悪いかよ」
「遅刻してきたくせによく来れるな」
それを言われてしまうと耳が痛い。
レンのクソ野郎に言い返したいところだけど、言い返せないくらい俺が悪い。
「そこの君」
さっきまでレンに試験していた執事っぽい人が声をかけてきた。
ん?俺?
俺だよな?明らかに俺を見ているから俺なんだろうな。
あ、次の試験をやるために俺を呼んでるんだなこの執事は。
「はい、今行きます」
よーし、チャチャっと俺の実力を見せつけて合格するぞ。
「では、お願いします」
俺は位置について刀を抜いた。
「いや、違う」
「へ?」
違う?
あーこいつも俺の事を魔なしだから弱いと決めつけて試験を受けさせないつもりだな。
「君先ほどまでいなかったはず。遅刻しましたね?」
「はい」
「遅刻してきたのに謝りもせずにコソコソして入ってきましたね?」
「はい」
「その行動はこちらをナメてると捉えても仕方ないですよね?」
「はい」
「そんな人を重要な警備に任せられると思いますか?」
「いいえ」
「あなたは魔力が無いんでしたよね?」
「はい」
「ただでさえ少ないチャンスをそういった行動で無駄にするんですよ」
「すみませんでした」
…何も言い返せないくらい俺が悪い。
…ちゃんと反省しよ。
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