第16話
俺は今布団の上で座っている。
集合時間の1時間も過ぎているのに。
こんな事ある?
あれだけ意気込んで遅刻するどころか、1番にカレンちゃんの屋敷に行ってやると思ってたのに…。
何がどうやってこうなってしまった。
俺は自分が情けなくて仕方ない。
一つ目の理由としては気合いが入り過ぎて眠れなかった事。
絶対に活躍したかったから素振りしたり、ワッフルと特訓兼あそびをしたりしたから寝るのが遅くなってしまった。
ワッフルは一回遊んでしまったら、もっと遊んでもっと遊んでと目で訴えてくるからずっと遊んでしまった。
二つ目はあまりに夢が良すぎた事。
俺が世紀の大怪盗タクトを捕まえて部長に褒められて、カレンちゃんに付き合ってと迫られて最高だった。
天国と勘違いするほどだった。
まぁ俺は本当に天国に逝きそうだったけど…、異世界転生ジョーク!
テンションがおかしくなってる。
1時間も過ぎたらどれだけ急ごうともう間に合わない。
当たり前だけど悲しい。
残り5分ぐらいだったら限りなくゼロに近いけど可能性を感じられるが、過ぎたらゼロになるんだよなぁ。
「はぁ〜」
そらため息も出るよ。
こんな事しても仕方ないから行く準備でもするか。
もう1時間も遅刻してしまったら開き直っちゃうよね。
1時間も2時間も変わらないよね、遅刻は遅刻だから。
…シャワー浴びてから行くか。
***
デケー
こんなでかい屋敷初めて見た。
こんなでかいのは元いた世界にも無いかもしれないデカさだ。
屋敷に着いたのは良いけどこれって敷地に勝手に入っていいものなのか?
一応関係者ではあるからダメではないはずだ。
ここはこっそり入っていくしか無い。
それにバレずに合流すれば怒られずに済むかもしれない。
あと、今庭の方で騒がしい事が起きているから俺が1人入ったところでバレないかもしれない。
そうと決まれば誰にもバレずにこの屋敷の中に侵入してやる。
どうして俺が怪盗みたいな動きをしているんだ…。
塀は高いけど俺にしてみたらこんなのは全然低い、余裕で飛び越えれる。
あとは騒がしいところに行って俺の勝ちだ。
騒がしい原因はどうやらレンと誰かが戦っていて、それを何人かで見守っているようだ。
部長がいた!
部長の隣に行って嫌だが一緒にレンの応援でもしよう。
誰にも気づかれないように静かに移動し、部長の隣へ移動に成功する。
「がんばれ〜!」
「うわっ!」
「どうしたんですか?部長?」
俺は元々ここにいましたよ感を出して乗り切ろうと考えた。
「どうしたんですか?じゃないよ。いつからここにいたの?」
「何言ってるんですか?俺は最初からいたじゃないですか?」
「寝坊したの?」
そんな誰でも思いつきそうな案は部長には通用しない。
それに珍しく部長はちょっと怒っている。
「すみません。寝坊しちゃいました」
さらに嘘をついて部長に嫌われたくないから正直に認める。
「昨日僕言ったよね?寝坊しないようにって」
「はい。言いました」
「僕はジンが強いのを知ってるから寝坊だけはしないように言ったんだよ。ちゃんと実力を出せば活躍出来るのは知ってるから」
「ぶちょー…」
そうだったんですね、俺はてっきり期待してないから言ったんだと思いましたよ。
部長はしっかり俺の事を期待していてくれたんだ。
「でも、寝坊したら意味ないよね」
「はい…」
俺もそう思います。
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