第5話 破壊王
その日、学校が終わるとさっそく学がレオの家にやってきた。
「アンジュはきのう、飛行機でやってきたんだよ。それが、こわれちゃってさ」
母さんに聞こえないよう小さな声で説明する。
「こわれたって……まさかレオ、
その学の言葉を、アンジュはおびえたようにくり返す。
「はかいおうっ!?」
二人から注がれる
「ちがうよっ。そのあだ名、いつの話だよっ。昔の話じゃんっ」
「昔って……。小4で語るほどの昔、ないでしょ?」
「ようち園のころだよ! それもドライバーでねじを外してまわってたってだけで、またはめれば元にもどるんだから、こわしてたわけじゃないやい!」
「よく先生、困ってたよなあ」
なつかしそうにつぶやく学。
「やっぱりわたし、あんたにはまかせられないわ」
引きつった顔で飛行機をかばうアンジュ。ふとレオは、そんなアンジュに
「ねえ。天使なら、飛行機がなくても自分で飛んで帰ればいいんじゃないの?」
アンジュは思いっきり
「そういうことじゃないのよ! それにさぁ、天使はみんな飛べなきゃならないわけ? イメージで勝手なこと言わないでよ。そういうのって“へんけん”っていうんじゃないの?」
「あれ? だって天使ってそういうもんじゃないの?」
「まあまあ。で? これがその問題の飛行機?」
「あっ、そうそう。どうやったら、これがうまくくっつくかなーって」
天使が飛べるかどうかの話はあっという間にどこへやら。レオは目をかがやかせて飛行機の話を始めた。
「そうだな……。これはそう
「やっぱり。一度反対側も外して、
「まあ、その方がいいだろうな――」
「あんたたち二人とも破壊王だわ。本当にやめて」
青ざめるアンジュ。安心させるように学が言う。
「大丈夫だよ。破壊王ってのは
「ただ……?」
ただに続いて何を言われるのかと、
「問題は、これを修理しただけじゃ、君は家には帰れないんじゃないかってことだ。アンジュ。君は天使ってことは、家は地上にあるわけじゃないんだろ?」
「もちろん。わたしの家は雲の上だけど?」
「えっ? 雲の上っ?」
レオが声を
だって雲の上に住んでるなんて、すごくない?
「でもこの飛行機は、
レオが「あっ」と声を上げた。アンジュはレオが何に驚いているのかわからず、きょとんとしている。
「ほんとだ。なんで気づかなかったんだろ……」
「どういうこと?」
「この飛行機には、自分で上に上がったり、前に進んでいく仕組みがないんだよ。
そういう飛行機だということには最初から気がついていたけれど、これでは天使が住んでいるような高いところ――雲の上までなんて、飛んでいけないじゃないか。
「え? でもそんなわけない。だってこれで自由に飛んでいられるってアリエルが……。落ちていくだけだなんて言ってなかった……」
「アリエルってだれ? 友だち? 飛行機のこと、わかってないんじゃないの?」
「は? なに言ってんの、
「まあまあ」
学がアンジュをなだめる。
「墜落って?」
学はレオにきのうの出来事ことをくわしく聞いた。話を聞いて、学はあらためて飛行機を
「そうか。ここにテープをはったんだな。そのせいでバランスが悪くなった
「ほら~。墜落はぼくのせいじゃないんだよ」
「なに言ってんのよ、あんたのせいよ!」
「とにかく。ぼくらは翼を直すだけでなく、動力をどうにか用意してやんなきゃならないってことさ。アンジュを空に帰してやるためにはね」
そう言って、学はレオをまじまじと見た。
「動力をどうにかね」
ダジャレに気づいてほしそうに、セリフをくり返す。
レオは、
「
「笑うもんですかっっ。あんたたちみたいな
アンジュは、たえきれないようにひざをついた。
「よかったな、学」
「ああ。今日は
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