第4話

疲れた…。今日の回診がちょうど終わった。


朝の一件で、回診に遅れた僕は、小児科医に「遅い!」と怒鳴られ、結衣には「なんか昨日よりおじさんっぽい」と言われ、もう散々だった。


―――しょうがないじゃないか、おじさんっぽくても。今日の朝何時に家出たと思ってるんだ。


ショックを紛らわすための言い訳を自分に言い聞かせながら、僕はナースステーションへとトボトボ歩いていた。


と、その時、背後から光を感じた。

振り向くと…なんとあのナースがいたのだ…!


ナースは僕に会釈をし、微笑かけた。しかし、それがザ・作ってると言うような具合で、僕の精神的ショックはさらに増えた。


ナースはスタスタと歩いていってしまった。


はぁ…。


「そんなに気にすることないよ」


振り返ると、舞がいた。

気にするなと言われてもな…。


「名前は谷口友紀。年齢は22歳。彼氏はいないらしい」


「…は?」


何言ってんだ、こいつ?

誰のことだ? 


「せっかく情報入れてあげたのにその反応?」


舞は不満げに頬を膨らませた。


情報…?

も、もしかして…!


「あのナースに関する情報!?」


「そうだよ」


他に何があるんよ、というような口調で舞は言った。


こいつの情報網、どうなってんだよ…。


昔から舞は性格が明るいせいか、友達も多く、とにかく情報をいっぱい持っていた。


だけど、ここまでとは…。


「あ、そうだ。あの子の好きなタイプも知りたい?」


「知りたい知りたい知りたい!!」


知りたくないわけあるか!


「もう確信犯じゃんか」


しまった。舞にバレてしまった…。

こいつの情報網なめたらやばい。

すぐに病院中に広まるぞ…。


僕は憂鬱な気分で歩きだす。


「まあ、恋愛経験少ないあんたがいきなり近づいたらひかれると思うから」


そんな舞の言葉を背中に受けながらとぼとぼと歩いた。

早く帰ろうと思ってたのに。


今日はやけ酒だな…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る