第17話


『ねぇ、エイルまだなの? リゾートスパっていうのは』



脳から通じるアリアの声を耳にしながらエイルはリゾートスパへと足を進めていた。


彼女の言葉に「もう少しだ」と答えたもののエイルの家からリゾートスパまである程度距離がある。どう頑張ってもある程度時間はかかってしまう。


まるで急かすような言い方にエイルは不満をぶつけたくなったが、なんとかこらえた。なにしろアリアとエイルは一心同体になっているのだ。



「かあかあ」という汚い声がふいに空から聞こえてきた。


見ると全身が真っ黒な鳥がエイルの向かう方向とは反対方向に飛んでいるところだった。


初めて見る鳥に少し不信感を抱きつつもエイルは歩みを速めた。






アリア視点


「はあ…はあ…」私は息を荒くしながらエイルの精神世界、無の世界に立っていた。この世界へ降り立った時よりも確実に痛みが大きくなっている。



その痛みは、人を殺めたことによる罪悪感なのか、他の要因なのか…



動くたび私の心臓に強い痛みが走る。


耐えなくちゃ…頑張らなくちゃ…私が頑張らなきゃエイルは今度こそ壊れてしまうんだから…もうエイルに大切な人の大量虐殺なんてもの二度と見せさせてはいけないんだ…私が、守らないと…



今にも倒れそうな体を奮い立たせてエイルの精神世界に足をつけた…







どのくらい時間が経ったんだろう…


まだリゾートスパへは辿り着けないのだろうか…


せめてあとどのくらいでスパに着くかぐらいは知りたい…




エイルに不調を悟られないように、負担がかからないように…



私はもう一度深呼吸をしてエイルの魂と同化しようとした。




『かあかあ』


唐突に烏の鳴き声が響いた。


その瞬間、ずっと感じていた痛みと加えて寒気が襲ってきた。



あまりの寒気に思わず意識が飛びそうになる。


ただの鳴き声なのにどうして寒気を感じてしまうのだろう…




まるで私を弄んで嘲笑うかのような…私が霊だった時代、人に悪戯をしかけてかかった人を楽しそうに笑っていたレイラのような…レイラ?





どうして彼女を思い出したんだろう…大体、彼女とは昔に別れてしまって今はここにいないはずなのに…




それにここはエイルの奥底の、無の精神世界。


今までこんなことはなかった…これは外部の音…?


じゃあ彼女は……まさか…













???


『これでアリアはどのくらい壊れるのかなあ…ふふふ』


烏からすになった   はエイルの家へと向かっていた…




作者 ひるなかのさん

https://kakuyomu.jp/users/hirunakan0

代表作「わたしは」

https://kakuyomu.jp/works/16817330647651149276

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