第6話
街に着くとまず、私達はその活気に呑まれた。
行きゆく人々は買い物袋を片手に道脇に並ぶ露店にたむろし、青い屋と白い壁とが────まるで大空の延長のように私達を包んだ。
「おぉおおおおおおお!!」
エイルは両腕をオーバーに広げて、その感動を全身で感じる。
「ちょ…ちょっと待ってよエイル…!」
と、人混みを難なく突撃していくエイルに、マリーは困り顔で、
「迷子になったらどうするの?この先1人だよ?!」
「うむ…1人は良い」
ステステ
「あぁ嘘じゃ!わしを置いて行くな…!」
颯爽とエイルから離れてゆくマリーを、エイルはすんでの所で引き止める。
まったく…そこまで怒らなくても良かろうて。
ぴよぴよと、まるで親ガモの後を続く子ガモの様なエイルに、マリーはふっと笑って────しかしエイルに気づかれ無いように口元を細く純白の指で覆って、
「ここからは私から離れないでね?もし離れても探さないからね」
マリーの言葉にエイルは「はい」と返事をして、私達は街を歩いた。
街を歩いて気がついたのだが、騒々しい壁とか衛兵とか、そんなものが一切見当たらなかった。
余程治安が良いのだろう。
マリーはエイルの手を引いて、意外と自分もこの平和な街を満喫しながら…と、これはフラグだったのか、右から来た影に私は押し倒された。
ドザ
「いてて…」
「お主、大丈夫か…?!」
「あはは…まぁね」
マリーは受け身を取った手に着いた砂を払うと、一瞬、エイルに視線を送ってから、その視線をそのまま横に流した。
…それは男2人だった。
1人は茶色のスボンに青いシャツの男、それにもう1人は酔っ払いと思しき、異常な程に顔を赤くした男だった。
「それは僕の金だろうが!早く返せや!」
「あぁん?!今は手持ちがねぇから少し借りるだけだろうが!」
「そんなの僕は了承してないぞ!」
「あぁん?!」
2人は同じ店で飲んでおり、先に酔っ払った男がもう1人の男の金を強奪────取っ組み合いになりここまで転がってきた…と、そんな所かな?
マリーはそんな予想を立てながら、よいしょと立ち上がり、
「2人とも」
あろう事か、ついに殴り合いを始めた男2人の間に入った。
エイルはポカンと口を開けて、意味のわからないマリーの行動に驚愕する。
ふとマリーは、2人の男に手をかざして。
『メモリアルウインド』
瞬間、大の2人男は面白いほどよく吹っ飛び、近くの壁に激突した。
「喧嘩するのはいいけど、それは私に謝ってからして貰おうか」
そして健やかな笑みを浮かべて、白い壁にくい込み伸びる男に言うのだった。
作者 四方川かなめさん
https://kakuyomu.jp/users/2260bass
代表作「レッドアイツー」
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