第5話
牧場郡を抜け、マリーとエイリンゲール・ドゥマニティア・パッキャオは長閑な田舎道を歩く。
「いやー……それにしても襲われるなどあの子も可哀想じゃの。」
「そう、ですね。」
エイルと会話するマリーは緊張しているのかガッチガチになっている。
「むぅ……。マリー、敬語は使わんでよい。」
「へっ⁈いや、でも……」
「使わんでよい。」
「わかった。パッキャオ。」
「エイル。」
「……ああもう!わかったわよ。エイル」
「うむ。それで良い。」
マリーの敬語なし&エイル呼びを聞いてエイルは満足げに頷く。
ふとマリーは疑問に思ったことを尋ねた。
「エイルはあの牧場群に行くまでどこにいたの?」
「森じゃな。」
「森?」
「ああ。森じゃ。厳密には王都を守る結界のカモフラージュ?として使っている木の密集地じゃ。」
「へぇ。私も行ったことあるからわかる。えっと、森の前はどこにいたの?」
マリーはあの美しい王都を思い出しつつ次の質問を投げかける。
「覚えておらぬ。気づいたら森にいた。」
「へぇそうなん……え?覚えてない⁈」
「うむ。かろうじて名前は思い出せたのじゃがな、それ以外はさっぱりじゃ。腕やら脚やらから血は出ておったし服は何故かズタズタでのう。服は買わねばならなかったし、治癒魔法を思い出すのも一苦労でのう。しかも買った服がこれじゃ。店で一番防御力が高い服を注文したらこれが出てきたんじゃ!」
そう言ってバシィィンと自分の服を叩くエイル。
フリルやストーンがついた黒から青にグラデーションになった服だ。ゴスロリ?感が歪めない。
マリーはポカンとした表情でエイルを見る。なんだこの人は……。驚きすぎて言葉が出なかった。
その後もたわいない話をしながら長閑な道を歩く。
「む?あれは!」
エイルがピンクの髪を揺らしながら思いっきり飛び跳ね先の方を指差す。身長が低いせいでめちゃくちゃ可愛い。
マリーもつられて先を見る。飛び跳ねはしなかったが。
「街、だね。」
エイルがさした先にあったのは街だった。
街といっても山と山の間にあるひらけた場所に屋台や家が立ち並ぶだけの小さな街。
でも、それらは屋根は青。壁は白で色が統一され
青色の屋根は半球状になっているとても美しい街だった。
青空と山。そしてその先に見える海。色のコントラストが抜群にいい。
心なしか潮の匂いもしてくる。
景色に呆けているとエイルのお腹が鳴る。
すると「マリー、走るぞ!」と言ってエイルは走り出す。
「えっ?エイル!待って〜」
自己加速魔法でもかけたのかめちゃくちゃ速く走るエイルにマリーも自己加速魔法をかけてマリーの後を追ったーーー。
作者 伊狛美波さん
https://kakuyomu.jp/users/kirakira381
代表作「君と私の秘密の放課後。」
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