第22話 彼と私の結婚線


仁王立ちして待っていた父。

車から降りてくる彼に向かって「一度家に上がって行きなさい。」と。


そのまま、奥に引っ込んでしまった父。

なかなかリビングに顔も出さず、私が呼びに行ったらしぶしぶと出来て「家にいきなりうちの娘を連れて行くとはどういうことだ。まぁ今日はちゃんと上がって挨拶してくれたから許してやるが、こんなにいきなりなことをする奴は見たことがない」とはっきりと彼に言いつけました。


父には卓球のサークルで男の人と知り合った話しをしていなかったから仕方が無いのだが、母にはそれとなしに話しておいたつもりだったけれど、まさか家に連れて行かれるとは思ってもいなかったので父と同様、母の方も呆れてました。


お互い紹介し合えたし、次の卓球練習後にはデート出来て楽しいってウキウキして出かけて行ったら、彼は次回から仕事の都合で卓球が出来なくなってしまったといい、私もこのままお別れするのも嫌だったので、彼に合わせて一緒に卓球サークルを抜けてしまい。その後は、会社が終ると、会社近くまで迎えに来てくれて、一緒に帰るほどの仲にまでなりました。


2人とも社会人だし、独身同士、家族の反対も合わず順調な交際を続けていました。

1月の成人式には、本当は着物なんて着ないつもりでいました私でしたが。彼が着物姿が見たいと言うので、母が大急ぎで着物屋さんへ買いに走り、振袖を着て彼の家に行きました。


そして3月に、彼は東京へ転勤となってしまいました。最初会った時、「自分は高卒だし、地元採用だから、転勤は絶対に無い」と断言していたのにです。


母から、私は肝炎もしたし、転勤のある人との交際はお断りしなさいと言われてました。

会社の営業マンたちは全国各地に転勤があるから、なるべく恋愛しないように言われていたのに、彼とはお友達以上の関係になっていました。


知り合ってわずか6ヶ月で、離れ離れの生活。その時は、悲劇のヒロインになったような気持ちになり、会社に行ってても、彼の家に行っても、泣けて泣けて、それを観た彼のお母さん(後の姑)は、大急ぎで彼と婚約指輪を買いに行ってくだり、結婚の約束をして離れ離れになりました。


彼の転勤先は東京でした。向こうに行ってから毎日同じ時間に公衆電話をかけて来てくれ、2ヶ月に1度はこちらに帰ってきてくれました。

遠距離恋愛が始まり2ヶ月ほど経ったある日、彼がブライダルフェアに行こうと言い出し、行きました。その日の会場は、大賑わいで、車の駐車させるスペースも無いほどでしたので、道路に駐車させて、会場に入りました。


入ったばかりの所にクイズに答えると何かが当たるって言うクイズコーナーがあって、訳もわからず、答えを書いて出しましたら、放送で車の路上駐車している車を退けるように、ナンバーまで言って流れ、彼と慌てて飛び出してて、車で帰ってきました。

いったい私たちはブライダルフェアに何しに行ったのかさえわからない状態でした。


ところが、その後1ヶ月後くらいに、クイズの発表があり、な、なんと彼の名前が3等の商品が当選して、ハワイツアーのペアチケットが当たりました。彼は結婚もしてないし、そのペアチケットでお母さんと行くなんてことを言い出してましたが、私はそのチケットで新婚旅行に使いたいと迫り、結婚への道が短くなりました。


そのチケットは翌年の3月末が期限でしたので、最後の最後に期間が入るように3月21日の春分の日に結婚式を挙げ、翌日東京の羽田空港からハワイへ飛び立ちました。


ハワイでは、オアフ島だけで無く、オプショナルツアーでカウアイ島への旅も付けて行きました。


ハワイへの飛行機、日付変更線の所ではめちゃめちゃ揺れて、怖い飛行となりましたが、何とか無事着きました。その年のある日ハワイへ行く飛行機が揺れて天井にまでスチュワーデスさんと乗客が飛ばされて怪我する事故も起きましたが、我々の時はそこまでならなくて、ラッキーでした。


付け足しのようですが、私の結婚線は1本しか無く、彼の結婚線も1本しかなかったのです。(結婚線とは小指のすぐ下、感情線までの間に出る線のことです)こんな風に結婚線がお互い1本ずつしかない夫婦は、産まれる前から赤い糸で結ばれた間柄と言われてるものでした。


声が聞こえたこともそうですし、懸賞が当たったこともそうですし、知らず知らずのうちに私たちは結婚をすると言う運命になりました。



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