第20話 結婚相手を決める声


就職して1年半目が過ぎました。

肝炎を患った身体もかなり回復してきて、身体を動かしてみたいと思い始めました。


新聞の記事に、家の近くの県の経営の公園(愛知青少年センター)で、就労している若者たちを集めてスポーツをしたい若者募集を見つけいってみることにしました。


スポーツは、本当はテニスがしたかったが、肝炎も治ったばかりだし父が炎天下の下で運動するのはまだキツイだろうから、卓球くらいにしておけって言うものだから、卓球のサークルに入ることにしました。


9月中旬、日曜日、ショートパンツにポロシャツ姿でいかにも卓球をやりそうなスタイルに身を包み、ラケットを持って行きました。


最初の日は、いきなり、コーチと呼ばれる人が、卓球がそこそこにできる人と初めての人と振り分けて、できる人と初めての人とで1つのコートで、練習させてくれました。

私が組んだ人は、背もそんなに高くない、無口な人で、いきなり卓球の球を打ち込んできました。(えーピンポンしか知らない私。な、なに〜この速い球)とボーゼンとしていたら、こっちのコートに回ってきて、「君卓球するの、今回が初めて?」って「初めてです」と答えると、私のラケットを持ってる手をラケットごと持って、「こうやってラケットは振るんだよ」って、2.3回振って見せてくれて。


「はい、まずこれをヤンなさい」って、ふるたびに、角度を直され、卓球ってこんなにキツイもの?って自分の心の中で自問自答(卓球でこんなにキツイのなら、やはりテニスなんかにしなくて良かった。父の言う通りにして良かった)と心の中で思いました。


そしたら今度は、反対側に回って。「はい。僕の球を受けるんだよ〜」って、打ち返そうとしても、さっきの構えではちっとも返せてなかったのが、何回も打ち込まれるうちに、段々と返せるようになりました。


終わりのチャイムがなりました。

ふぅ〜1日目にしてこのキツさ、どうしようかなぁ。と思っていたら、お相手してくれた男性が近くにきて「君初めてにしては、けっこう素質あるから頑張って」と励ましてくれました。

無口だけど案外いい人?と思いました。

そうしてるうちに1日目の練習を告げるチャイムが鳴り。1日目は終わりました。


翌週2日目がやってきました。今度は背の高い少し西城秀樹似のかっこいい人。教え方もとても優しくて、ん〜この人にずーっと教えてもらいたいなぁ〜なんて甘いことを考えてました。


その日の練習が終わった時、コーチが皆を集合させて、「次回はがんもどきパーティーをするので、もし出たい人は今から400円ずつ集めるから持ってきて」と話され。


直ぐにコーチの元へ行きお金を払おうとしたら、私の財布には一万円札しかなく。

コーチに「私一万円しか持ってません」と言ったら「細かいお金ができるまで、ここで待っててくれ」って言われてぼうっとコーチの横で立ってました。


そこへ1人の男の人が近づいてきて「あの僕が細かいお金持ってるので、壊しましょうか?」と言いました。見た目さだまさしのような細めの眼鏡をかけた貧相な人。でも親切な人もいるもんだわぁ〜と思いながら、その変えてもらった千円札で支払い。コーチも、「こっちのお釣りも出来たんだけど」と言って600円のお釣りもくれました。


(これで来週はがんもどきパーティーだなぁ。)

と思いながら帰り支度していて、ふっと先ほどお金を壊してくれた人。さだまさしさんのような雰囲気の人が体育館の端っこで、着替えをしてる所が目に入りました。痩せてるのに胸毛がある。自分でも変なとこ見てしまって、少し恥ずかしい。


それにしても、あれ?ちゃんとしたロッカールームもあるのに、なんであんなところで?って見ていたら。

どこからともなく声が聞こえてきました。


「マミ!お前はあの人と結婚しなさい。」

えー?誰今の声。(なんでそんなこと言われなきゃいけないの?)と自問自答していたら、

さらに「あの人と結婚しなければ、もうあの人以上の相手は居ないだろう」と・・・そこまで言ってきました。周りを見渡しても人は居ないし、(第一そんないきなり結婚?私まだ19歳だし。)


と思いながらも、着替えて部屋から出て行く彼を追いかけて。

「あの〜お一人なんですか?お友達はおられないんですか?」と聞いたら、恥ずかしそうにキョトンとこちらを見てる彼、さっきお金を壊してくれた(両替すること)彼がいいました。


「1人で来てます。もうお昼ですよね。どこかで食事でもしますか?」と、向こうから声をかけてくれました。私は公園と家が近いので、その公園にはしょっ中行っていたので。

「はい。ここの上がった所にレストランがあるので、食べて行きましょう」と。


広い公園のそのレストランは、セルフサービス式。入る前にチケットを買って。

彼はいきなり誘った経緯で、チケットも「何が食べたいですか?」と言ってくれて、「ミートスパゲッティ」と言ったら、即「じゃあ僕も」と。


料理をセルフで並べた途端に、お相手の男性喋るは、喋る「僕の名前は○○○○です。」「父親は僕が20歳の時に亡くなり、2人の兄がいます。上の兄は教員をしてまして、下の兄は○○建設で働いてます。」と、まるでお見合いでもしたかのような自己紹介。


「ってことは3人兄弟ですか?」と私。

「はい。3兄弟の中の1番下です。」と。

「うわぁ!お父様はもう亡くされておられるんですか?」しつこくそれを聞いてしまいました。


実は何で、ここでそれを聞いたかと言うと、肝炎入院中に、隣のベッドにはいってらしたご婦人の息子さんとのお付き合いがあり、その男性の父親にまで好かれてしまい。もしかしたら、親子丼になる所でした。


*親子丼とは後々聴いて、知ったのですが、婚家に入り、親とも子供とも相手をしなければならないことを言うそうです。*


そんな目に遭うのなんてもってのほかなので、親子共々こっちから、振ってしまいました。


なので、両替男さんと出会った、この人は、お父さんも居ないし、絶好のチャンスじゃないだろうか?と思いました。


そして、この後この人が私の夫になろうとは?その時点ではとても思っても見ませんでした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る