第17話 病院とは1つの社会。

病院にはほぼ3ヶ月ほど入院してました。


その間には色々楽しい事、面白い事が起きました。


まず、1つ目は、40歳くらいのロングヘアーの少し浅黒い感じの細い女性が入院していて、いつもバルコニーに出ては、手を振ってるのを何度か見かけました。

「誰に手を振ってるの?」と聞いたら

「ボーイフレンドによ」って。

聴いてみると、アルバイト先で親しくなった人だとか。


また別の日には、またその彼が彼女の元に来て、親そうに話していて、見てみると歳の感じは明らかに歳下。

彼が帰った後、事情を聞いたら、アルバイト先で知り合った大学生だと言う。

彼女が独身なら別に問題は無いが、彼女にはれっきとした旦那様がおられるといい。

何故、ご主人はお見舞いに来ないの?と尋ねてみたら。

「主人は、麻薬犯を追いかける刑事をやってて忙しくて、来てもらえないの」って。

「え?ドラマで見る世界でしかも刑事って知らなかったけれど、そんな職業の方もいるんだですネ」と興味深々の私。


ところで、彼女の病気は血圧が高く、肝機能を壊して入院していると言い。どうりで顔色が少し浅黒く、家にいるとドンドンと血圧が上がるのに、入院するとスッと下がるそうで、定期的に入院させてもらってるということでした。

当時の入院は、今ほど厳密に何日間で退院させられると言う感じではなく。

そんな曖昧な病変でもベッドを空けておくくらいならと、よく入院させてました。


彼女曰く、刑事と言う仕事は、ドラマみたいなカッコイイ仕事ではなく、夜中でも連絡が入るとすぐに飛び出て行かなければならない仕事で、出かけて行く時には、必ずご飯を炊いて食べて行くのがご主人の生活だったそうで、そのため彼女の生活もそれに付き合わされめちゃくちゃな生活リズムになって、病気になったと言ってました。


そして可笑しかったのは、待合室で、お友達になった台湾人の大学生と話した時のこと。


病院の近くには、大学がざっと見ても3校もありました。彼はそのうちのスポーツの盛んな大学の学生。バスケットボール部の関係で、日本に留学してきたのだが、色々話しているうちに、な、なんと彼のおじさんは、麻薬の運び屋をやっているって。私は彼女のご主人の仕事を知っているから、「きゃあ〜まさかこんなところに、ええ〜どうします?」ってロングヘアーの彼女に聞いたら。

「いいのよ。いいのよ。私と旦那さんとは仲良くなんか無いから、そんなこと黙っててあげるから」って。(笑)


台湾人の彼は、とても爽やかな背も高い素敵な青年で、私のためにプリンまで買いに行ってくださる。とても良い人と思いましたが、その話しを聴いていっぺんに怖くなってきてしまって。

彼のことは、前話で出てきた金魚が気に入ってたので、お譲りしました。(笑)

その後2人がどうなったのかは知りません。

ではなく、何事も起きなかったようですが。


ロングヘアーの彼女は、その後、付き合ってる大学生の彼から、他にガールフレンドが出来たからって、告白され。


泣きながらバルコニーで、手を振って見送っていました。「お見舞いに来てくださるだけでも、良かったよね〜」としか慰めようは無かったですけれど。


結局ロングヘアーの女性は、ご主人の姿を見ることも無く退院して行かれました。

今ごろどうしてるのかな?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る