(一)-5
その日の夜、有紗は仕事を終えて帰宅した。玄関を開けると明は朝と同じTシャツとトランクス姿でキッチンに立っていた。
「おかえり」と言いながら彼は料理を盛り付けた皿を部屋の中のテーブルに持ってきて置いた。
有紗はすぐにスーツを脱いでパジャマに着替えてサラダと素麺のボウルが並ぶテーブルの前に座った。
二人は手を合わせて食事の挨拶を手早く済ませると、素麺を箸でつまんで小さくサイコロ状にカットされた鶏の胸肉の入ったつけ汁の腕の中に浸したあと、それを口へと運んで音を立てた。
そうして二人は数度素麺をすする旋律を楽しんだ後、明がサラダを小皿に取りながら「そういえばさ」と有紗に告げた。
(続く)
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