(一)-6

「なぁに」

「次の仕事、決まったよ」

 いつもならすぐに何か返事を返すところだが、それが一瞬遅れた。自分でもその言葉を聞いて返事をためらったことに有紗は気づいた。

 もちろん、彼が言う次の仕事はスタントの仕事だろうと有紗は思ったのだ。

 もともと彼の希望は俳優の仕事だ。セリフある役をもらい、演技する。

 しかし、スタントでは、危険なアクションシーンを役者の代わりに務める。確かにある意味それは俳優の仕事と言えなくもない。しかし同時にその仕事は毎回、危険を伴う。


(続く)

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