第39話『奪還編⑩ 残った謎』
そして、場所は変わり、凪兎とニックが運ばれた病院では、凪兎を迎えに来た終夜と、当の凪兎が、病院内の喫茶店で話している。
どうやら、退院の手続きは済ませて、後は帰路につくだけ、という感じだ。
終夜「しかし、ナギも災難やったな…。」
凪兎「あの程度の人斬りの霊に体を乗っ取られるとは…。オレもまだまだ鍛え方が足りん…。」
終夜「いや、あれは相当ヤバい相手やったらしいぞ…。」
終夜はアイスコーヒー、凪兎は、メロンソーダを飲んでいる。
凪兎「しかし、結果オーライだな。」
終夜「それによ、最後の人斬りの霊を追い出すキッカケになった、あのジンって女の膝蹴り、アレ喰らって打撲程度で済んでる事の方が凄いわ…。オレなら内臓グチャグチャになってそうなくらいのエグい膝蹴りだったぞ。いくらオレがジムで鍛えてるとは言え…。」
凪兎「その鍛えキャラもカブってんよなぁ…。」
と、話していると、ウワサのジンと、菜々子、セバス、そしてコチラも退院手続きを済ませたニックが店内に入ってくる。
菜々子が先頭で、終夜と凪兎に気づいていないのか、全く逆方向に行こうとしてたが、セバスに耳打ちされ、ハッとした顔になって、終夜と凪兎の方を見る。
凪兎「よっ!」
凪兎は、笑顔で菜々子達に右手を上げて見せた。
菜々子「ナギ!それにシュウちゃん!!」
菜々子達も、終夜達の隣のテーブルにつく。
セバス「お久しぶりで御座います。」
凪兎「お久しぶりです!師匠!!」
終夜「オイ師匠言ってるぞ。」
菜々子「良かった…。ナギも大丈夫そうで…。」
菜々子は、普段は見せないような、心配したような、安堵したような表情を見せる。
凪兎「ナナのせいじゃない。悪いのは、刀を盗んだヤツだ。」
ジン「アタシは悪くないアル!!」
そう、刀を盗んだヤツが目の前に居たのだ。
凪兎「わ…悪いのは…刀を盗ませたヤツだ…。」
ジン「マスターも悪くないアル!!!」
ジンは、泣きそうな顔で叫んだ。
凪兎「…悪かった。」
終夜「いやナギが謝る事じゃねぇ。理由はどうあれ、オマエラがナナの刀を盗んだ事に変わりは無い。」
菜々子「シュウちゃん…。ソレはもう…。」
終夜「結果オーライだったから良いのか?ヘタしたらナギは命が危なかったかも知れねぇんだぞ?」
終夜は、拳をテーブルに叩きつけた。
ニック「本当に、スマターが、申し訳ありませんでした。そして、ソレに加担した、オレも、ジンも…。」
ニックは深々と頭を下げるが…。
凪兎「ス…スマター…?」
菜々子「ソコは、ひとまずスルーしてて…。」
ニック「ジンも、謝るんだ。」
ジン「嫌アル。」
ジンは、そっぽを向いて頬を膨らませた。
ソコに…。
ウェイター「ご注文は、お決まりで?」
男性のウェイターが、菜々子達の注文を聞きにきたようだ。
菜々子「タピオカミルクティー大盛り。」
ジン「おしるこ大盛りアル。」
ジンは、菜々子と張り合っているようだ。
ニック「お水を。」
セバス「私は結構です。」
ウェイター「おけまるッス。」
そう言うと、ウェイターは離れて行った。
そして、菜々子達が注文した飲み物が到着した。
菜々子は、タピオカミルクティーを飲みながら…。
菜々子「アタイとピーちゃんにとっては、良い結果には、なったんやけどね…。」
流石の菜々子も、ジンとニックを気遣っているようだ。
そんな菜々子を尻目に、ジンは、運ばれてきた、大盛りのおしるこを一気で飲んでしまったようで…。
ジン「あぁっつ!!熱い!!!アルァ!!!」
菜々子「運ばれてきた出来立ての、おしるこ一気したら、そうなるやろ。」
ニックは、予想してたかのように、注文していた水を、ジンの目の前に差し出す。
ジンは、それを引っ掴んで、喉に流し込む。
どうやら、ジンは、先に飲み干した方が偉いと思っているようだ。
そして、少し時間は過ぎ、山神家では…。
夜深がギャル正宗を抜いたまま、壁に背を預けて座り込み、全身汗だくでゼェゼェと息をしている。
どうやら、菜々子が出したという青い炎は出せなかったようだ。
夜深「もう…ヘトヘトで…色気しか…出ませんわ…。」
どんなにヘトヘトでも色気は出るらしい。
ソコに、ニックを連れた菜々子達が帰ってくる。
菜々子「!?おかあさん!?」
セバス「一体何が?何者かが侵入してきたのですか?」
菜々子とセバスは、慌てて夜深に駆け寄る。
付近には、木が真っ二つで倒れているので、争いがあったと思われても不思議ではない。
夜深「い…いいえ…。大丈夫ですわ。少し、トレーニングをし過ぎたみたい…。」
菜々子は、夜深からギャル正宗を受け取り、鞘に納めた。
セバスは、夜深を抱きかかえて、夜深の部屋へと入っていった。
菜々子「何してたんやろ?おかあさん…。」
菜々子は、ギャル正宗をマジマジと見ながら呟いた。
菜々子「コレなら、ピーちゃん残して、様子を見といてもらえば良かった…。」
そう言う菜々子の横に、今度は通常モードのピーチが姿を現す。
ピーチは、もうギャル正宗を依代とする必要もないので、10mという縛りも無くなり、自由に行動も出来るようになったのである。
ソレも、菜々子が傍に居るから、という条件付きで、かも知れない。
そういう理由から、ピーチも、菜々子について病院に行っていたのである。
菜々子「ま、いっか。」
そして、夜深を横にさせて、セバスが再び出てくる。
菜々子「セバス。」
セバス「はい。」
菜々子「ちょっとアタイとピーちゃん、シェアハウスに行ってくるけん、ジンとニック頼める?」
セバス「御意。」
そして、菜々子とピーチは、シェアハウスへとやってきた。
菜々子が敷地に入ろうとしたら、後ろから声がかけられる。
琴羽「ナーナちゃん!」
菜々子「チコ?どうしたん?」
琴羽「セン子さんから連絡もらってね。ナナちゃんが、ココに来るけん、一緒に来て欲しいって。」
菜々子「あのババァ…アタイを警戒しとるんか?」
琴羽「まぁまぁ、私もミンナに会いたかったし。」
そう言って、建物入り口へと向かう2人。
入り口では、イツモのようにセン子が迎えてくれた。
菜々子「おっす!ババァ!」
セン子「ピーチについて話しがあるそうね。」
菜々子「どうしたん?何かイツモと空気が違うけど。」
琴羽「セン子さん、ピーちゃんの事、大切にしてたけんね。じゃ、私はマリカしてくるねー。」
セン子「えっ!?ちょっ…チコちゃん!?」
菜々子「一瞬でキャラ変わってんぞ…。」
戸惑うセン子を尻目に、シェアハウスに入っていく琴羽。
待ち構えていたモエミに引っ張られて更に奥へと入っていった。
菜々子「そんなに警戒せんでも、大丈夫や。今日、来たのは…。」
そういう菜々子の後ろから、通常モードのピーチが姿を現す。
ピーチ「お久しぶりです。セン子ゥ様…。」
ピーチは、少し恥ずかしそうに、俯いている。
セン子「ピーチ…。」
セン子は、一瞬、信じられないという表情になったが、スグに顔をクチャクチャにして、涙を流した。
そして、両手を広げてピーチを抱き締めた。
セン子「良かったわねぇ…。一時はどうなる事かと…。」
ピーチ「ご心配をおかけしました。セン子ゥ様。」
流石の菜々子も、この時ばかりはセン子の気持ちを尊重して、茶化す事は、しないようだ。
菜々子「この報告に来ただけやけん。」
そして、菜々子とピーチは、引き続きギャル正宗は菜々子が持つ事、ピーチも、引き続き菜々子と行動を共にすることを話し、セン子もこれを了承した。
こうして、ギャル正宗からの青い炎と、マスターの疾走という謎は残しつつも奪還編は幕を下ろす。
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