第14話『幽霊屋敷⑬ 決着』
シェアハウスから出たSoundSouls+1の5人。
そこから10メートル程離れた場所に立っているセン子達4人。
琴羽「こんばんは。SoundSoulsよ。あと助っ人。」
セン子「どうも。そんな事より、私の大切なピーチの姿が見えないけど?事と次第によっては、アナタ達を消滅させるわよ。」
依然として、セン子は巨大化したままだ。
不快感を露わにした表情でSoundSouls+1を見ている。
菜々子(前に出て)「ココよ。」
菜々子がギャル正宗を前に突き出すと、その鍔付近に、人魂と化したピーチがフワフワしている。
セン子「キャッ………キャワウィィィィイイイイィィ~~~~~!!!」
直前までの表情と一転し、両目をハートマークにしてピーチを見ているセン子。
チャン「なんという事…。」
ワルオ「あれはもう、消滅する寸前…。」
モエミ「おまえマネするな!!」
モエミは、ピーチとはフォルムは違うものの、フワフワとした人魂に、自分と似た雰囲気を感じているようだ。
ワルオ「いや、モエミたんのマネではないでゅくし。モエミたんは、言わばオーソドックスな幽霊で、ピーチたんは、人魂…。」
モエミ「ホットドッグ関係ないめしや!!」
ワルオ「ちがっ…。」
ワルオは、またモエミに首を締められているが、相変わらず嬉しそうだ。
チャン「セン子ゥ様。」
セン子「キャワッ………ハッ…私とした事が…あまりの可愛さに…。」
セン子は正気に戻り、SoundSouls+1の方に向き直った。
菜々子「アタイが、コイツに殺されかけてた時に、悪霊にアタイの体が乗っ取られた。その悪霊によって、コイツはこんな姿にされたん。」
セン子「つまり、オマエがやったも同然…と。」
と、言うや否や、セン子は地面を蹴って菜々子に向かって跳躍した。
琴羽「右下。」
菜々子「…。」
菜々子が、鞘に納めたままのギャル正宗を右下に構えると、そこにセン子の蹴りが飛んできた。
ドンッ!という音と共に、セン子の蹴りを受け止めた。
セン子「なっ…。」
菜々子「ぐっ…。」
菜々子は蹴りの威力に押されつつ、苦悶の表情を浮かべているが、何とか耐えている。
琴羽「セッカチさんは、モテないわよ?」
そう言うと、琴羽は、セン子の足と激突したままのギャル正宗の鞘を、指先でトンッと押した。
ただ、それだけだった。
琴羽「はじけてまざれ…。」
博記「えっ?それベジ…。」
次の瞬間、ハジかれたようにセン子はフッ飛び、シェアハウスの入り口の門に叩きつけられた。
セン子「ガッ………ハァッ………。」
チャン「なっ…。」
ワルオ「ちょっ…。」
モエミ「あのオバサン弱いめしや!」
ワルオ「それダメー!!」
ワルオが慌ててモエミの口を塞ぐが、時すでに遅しであった。
琴羽「ひとまず、話しを聞いてくださる?」
セン子「ハァ…ハァ…。」
セン子は虚ろな目で、通常サイズに戻った。
チャン「セン子ゥ様!」
チャンが慌ててセン子に駆け寄り、肩を貸してセン子を立たせた。
菜々子「だけんチコが来ると、持ってかれるけんイヤやったっちゃん。」
琴羽「ナナちゃん、過程も重要やけど、結果も出さんとイカンやろ?」
菜々子「的を得ているだけに言い返せない…。」
琴羽「では、ナナちゃん、どうぞ。」
菜々子「電気代払え。さもなくば、全員、祓うぞ。」
菜々子は、鞘に収めたままのギャル正宗をセン子達の方に向けて言った。
チャン「セン子ゥ様!今回ばかりは…。」
セン子「な…何をしているの…チャン…ヤツらを…ハァ…ブチのめすのよ…。」
先程と同様に、虚ろな目で菜々子を睨みながら言うセン子。
そんなセン子の支えを解いたチャンは…。
チャン「承知しました。」
菜々子の方に向き直った。
セン子「ワルオ、モエミ…。」
ワルオ「パイルダー………。」
モエミ「オーーーーン!!めしや!」
そして再び、おんぶという名のモエミンガーZが完成した。
凪兎「あのバアサンには、タップリと借りがあるもんでよ。」
終夜「オレは、アッチのババアやな。」
博記「え?オレ、またキュンキュンするの!?」
菜々子「ナギ、シュウちゃん、エロ、ちょっと待って。」
博記「真面目なトーンで言われると困る…。」
博記は、流石に恥ずかしそうだ。
琴羽「話しも聞いてくれんみたいやし。」
菜々子「全員、アタイが祓うしかないようやな。」
セン子「フン…。悪霊に体を乗っ取られるようなヤワなイタコが、そんな事出来るワケないでしょ?」
セン子は先ほどのダメージにより、まだ満足に動けないようだ。
菜々子「修行中の身なもんやけん。でも、アタイも、この子も、共通の目的が出来たみたいやし。」
菜々子は、ギャル正宗を、鞘に収めたまま構えた。
菜々子「もう一度言う。電気代払え。」
チャン「しゃらくさいのう…。」
チャンは、腰に手を回したまま、トントンと軽快に、菜々子に向かってくる。
チャン「セン子ゥ様を脅かすモノは、何人たりともワラワが排除する!」
次の瞬間、チャンは地面を蹴り、体勢を低くして滑るように加速し、菜々子に向かって蹴りを放った。
菜々子は、ギャル正宗を縦に構え、チャンの蹴りを受け止める。
ワルオ「背後がガラ空きでゅくし!汗スプラッシュ!!」
モエミ「汗メイド服アタックゥーーーー…。」
次の瞬間、菜々子は、そのまま腰を深く落とし、モエミンガーZに向かってギャル正宗を振り抜いた。
チャン「!!!」
チャンはフッ飛び、モエミンガーZに激突し、そのまま3人はシェアハウスの壁に激突した。
セン子「なっ…。」
菜々子「払うとや?払わんとや?」
菜々子は、ギャル正宗を鞘から引き抜き、セン子に向けた。
セン子「くっ…。」
セン子の顔を冷や汗が伝う。
琴羽「まだ勝ち目があると思う?何も無理な要求はしてないやろ?電気代を払えって言ってるだけなん。ソレが無理なら、もうこの建物ブッ壊すしかないけん。」
ピーチ「ちょっと待って!」
菜々子「なん?仲間が大切なのは分かるけど。」
ピーチ「ソレもあるけど、それ以前に、幽霊に現金を払う事は不可能でしょうが!」
菜々子「あっ…。」
琴羽「うん…言われてみたら、確かに…。」
もう設定がグチャグチャではあるが、一応相手は幽霊であった。
凪兎「普通に触れ合って戦ってたモンで、盲点だったわ…。」
終夜「現金払うのが不可能なら、いずれにせよ、答えは出てるな。」
博記「どうすんだよ?追い祓うのか?」
菜々子「…。」
琴羽「でも、結局そうなるよね?月に数万円もかかってるワケやし。」
セン子「………。」
苦虫を噛み潰したような表情で考え込むセン子。
既に戦う意思は無くしているようだ。
チャン「ワラワは、セン子ゥ様と離れたくないでありんす!」
ワルオ「小生も、あのサンクチュアリを失いたくないでゅくし!」
モエミ「オマエは、ただの変態めしや!幽霊に現金が払えないなら、プリン買ってくるのも、ウソめしやな?」
ワルオ「ぐっ…そういうトコは察しが良い…。」
またもやモエミに首を締められるが、ワルオにはもはや快感のようだ。
セン子「チャン…ワルオ…モエミ…。そしてピーチ…。」
思いつめた表情で言葉を発するセン子。
菜々子「分かった。アンタが体で払うのね?」
セン子「ちょっ!まだ何も言ってない!!」
菜々子「だってアンタ、エロを引っかけて連れてきたくらいやけん、幽霊と人間の、グレーゾーンみたいなトコに居るんやろ?」
セン子「じゃあアンタ達は何なのよ?」
琴羽「バンドマン。」
博記「えっ?バンド要素、ドコにあんの?」
セン子「分かったわ。私が払う。だから、この場所は…。」
セン子は、覚悟を決めたような表情で言った。
そして菜々子は…。
菜々子「ババアに二言は無いわね?」
そう言うと、ギャル正宗を鞘に収めた。
セン子「マジで息の根を止めるぞ…。」
凪兎「でも、どうやって払うんだよ?こんなエロみたいなヤツ、そうそう引っかからねぇだろ?」
セン子「私は、少しは名の知れたイリュージョニストなの。」
終夜「あぁ…うん…。なるほどな。」
終夜は、ドコか心当たりがあるという顔で頷いた。
セン子「だから、現ナマたんまり貯めこんでるのよ。」
ドヤ顔のセン子。
博記「現ナマて…。」
菜々子「じゃぁ、柱や壁が破損した分も含めて、請求書作って出すけん。」
セン子「はっ…はわわわわわ…。」
琴羽「口は災いの元、ね。」
菜々子「ありがとう。」
菜々子は、ピーチの方に向き直って、真剣な表情で頭を下げた。
ピーチ「なによ気持ち悪い。」
菜々子「アナタの一言が無ければ、アタイは全員祓ってたトコや。」
ピーチ「…。」
琴羽「じゃぁ、ハナシもついた事やし。」
菜々子「この子は、大切にしてあげて。どれだけかかるか分からないけど、きっと元の姿に戻れるハズ。アタイが言えた事ではないけど…。」
そう言いながら、菜々子は、ギャル正宗を、セン子に渡した。
セン子「分かったわ。」
セン子も、大切にギャル正宗を受け取った。
菜々子「じゃ、酒池肉林のマリカも、程々にね。」
琴羽「さて、と。」
終夜「納得いかねぇけえどよ。」
凪兎「マック寄って帰るとすっかな。」
博記「せっかくタダ酒が飲めると思ったのによ…。」
凪兎「てか、オマエ、オレラに迷惑しかかけてないからな?」
博記の額を小突きながら言う凪兎。
博記「オレだって好きでやってるワケじゃねぇよ!!」
博記は、鬱陶しそうに、その凪兎の指を振り払う。
凪兎「オマエは酒に釣られ、その後は女に現を抜かしやがって…。」
琴羽「まぁまぁ、結果オーライやん?」
凪兎「チコが来なければどうなってたか…。」
琴羽「もう!ナギは真面目すぎるけんね。」
終夜「オレは鍛え方がまだ足らん。」
終夜はスマホを操作し、ジムの予約を入れている。
菜々子「母上、納得してくれるかいな…。」
琴羽「結果、電気代を払わせる事に出来たワケやし。あの連中も、居場所を維持出来たワケやし。あの建物を取り壊せって依頼じゃないやろ?原因を突き止めたし、今後は電気代が発生しても問題ない状況やし。」
博記「帰りにサニー(スーパー)寄ってビール買って帰るか。」
凪兎「ビールじゃなくて、やっすい第3のヤツやろ?」
ニヤニヤと、イジワルな笑みを浮かべる凪兎。
博記「うっさい!」
凪兎「さて、帰りますか…。」
その凪兎の一言をキッカケに、シェアハウスの門に向かって歩きはじめる5人。
セン子「ちょっと待って。」
琴羽「まだ何か?」
呼び止められて振り向く5人。
セン子「この子、やはり、アナタ達に預けても良いかしら?」
そう言うと、セン子は、菜々子に歩み寄り、ギャル正宗を渡す。
菜々子「どうして?」
セン子「ピーチと話したの。」
ピーチ「ウチは、アイツを探し出して倒したい。ソレが、ウチが復活する近道になるなら、猶更。」
菜々子の目を真っ直ぐ見つめるピーチ。
琴羽「なるほど、ココに閉じこもってマリカしてる地縛霊どもと一緒に居ても、アイツに遭遇する機会は少ない。」
セン子「言い方よ。それに、私は、滅多にココには来なかったけど、これからは私もココに住むツモリ。」
菜々子「分かったわ。じゃぁ、アイツを探し出して、一緒にブチのめそうや!」
ピーチ「宜しくね。」
琴羽「じゃぁ、またね、無限地獄シェアハウスの皆さん。」
シェアハウスの皆さんに向かって笑顔で手を振る琴羽。
セン子「ピーチに何かあったら、消滅させるわよ。」
菜々子「任せんしゃい!」
凪兎「バアさん…少しは弱れや。」
チャン「余計なお世話じゃクソガキ。」
終夜「毎度、チコの依頼はハードなのばっかやな…。」
ワルオ「小生は部屋に帰るでゅくし。」
モエミ「人間!次はプリン買ってくるめしや!」
博記「了解モエモエキュン!」
こうして、幽霊屋敷騒動は、よく分からないカタチで幕を閉じた。
そして、次回からは、デスゲーム編へと移る(笑)
博記「だけんバンドしろって。」
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