第2話『幽霊屋敷① マリオとクッパ』

翌日の日曜日。

前日とは打って変わって気持ちの良い晴天になった。

まだ梅雨明けもしていないのに、余裕で30度を上回る気温で、道行く人の顔には気だるさが見える。


菜々子「チコ…。」(ゼェゼェ言いながら)


琴羽「ん?」


菜々子「何でエアコンつけないのよ!暑くて死ぬわ!!」


琴羽「だってまだ六月やろ?」


菜々子「その考え方が命取りやぞ!」


琴羽「ナナちゃん汗かきやもんね(笑)」


菜々子「(笑)じゃない!そこ笑うとこじゃない!」


琴羽「だから自分ちに帰れば良かったんよ。」


菜々子「だってぇ~…。」


琴羽「あんなに立派な御屋敷なのに。」


菜々子「帰ったらまたグチグチグチグチ言われるもん。」


琴羽「大変よねぇ…イタコの末裔やっけ?」


菜々子「未だにバンドでドラムやってるん、認めてくれんもんね。」


琴羽「まぁ、気持ちは分からんけどね。」


菜々子「つめたっ!なんウチのバンドって口悪いヤツしか居ないん!?」


琴羽「だって末裔なんてなったこと無いもん。」


菜々子「得体の知れない、木製の剣を振り回させられる気持ちを分かれ!!振ってみろ!!」


と言いつつ、窓を開ける菜々子。


菜々子「あっつ!!」


琴羽「異常気象やなぁ…最近の暑さは…。」


菜々子「チコちゃんエアコンつけて良い?金なら体で払うから♡」


琴羽「だぁめ。」


と言って扇風機をオンにする琴羽。


菜々子「同じ電気使うんなら、エアコンつけてよー。」


琴羽「とりあえず朝ごはん食べよ。」


菜々子「バナナ買ってきたけん、半分こする?」


琴羽「そんな貧しくありません。」


菜々子「なんかさぁ、あるやん?売れないバンドの下積み時代みたいな。」(バナナを食べつつ)


琴羽「売れる予定もないけどね。」


菜々子「何がですか!チコちゃんの歌声は、天下一品やんか!」(バナナの皮をゴミ箱に放り込んで)


琴羽「そう言ってくれるんは、ナナちゃんだけやけどね。」


菜々子「じゃあエアコンを…。」


琴羽「しつこい。」


と言いつつキッチンに向かい、朝ごはんの用意をする琴羽。


場所は変わって、とある大きな公園。

ジョギングをしている体格の良い男が居た。


壱馬「ふぅ…朝から流す汗は気持ちいいな。」


春彦「よお、イチ。」


壱馬「ハルか。どうしたん?こんな朝早くから。」


春彦「朝マックの帰りだ。」


壱馬「オマエ本当に好きやな。」


春彦「オマエこそ。既にクソ暑いのに、よく走ってられるな。」


壱馬「どうせ暑いならな。気持ちいいぞ。」


そこに、春彦のスマホが着信を告げる。


春彦「おうチコ。どした?」


琴羽『ハルって、確か配管工してたよね?』


春彦「おう。前に空調関係の仕事をな。それがどうかしたか?」


琴羽『ナナちゃんがエアコンつけろつけろウルサイけん、つけたけど、ウンともスンとも言わんのよ。』


春彦「またアイツ、チコの家に泊まったんか。どおりでチコの後ろが騒がしいワケや。」


琴羽『私はまだ別に無くても良いんやけどさ、さすがに真夏は使うけん、壊れとらんか心配で。』


春彦「ちょうど外に出てたし、とりあえずチコん家に行くわ。イチも連れてくる。」


壱馬「ちょっと待て!オレは帰ってシャワー浴びて、冷たいコーヒー牛乳飲むんやが。」


春彦「デカい図体で何言ってんだよ。」


壱馬「図体関係ねぇわ!」


春彦「とりあえず行くわ。」


琴羽「ごめんね、宜しく~。」


壱馬「マジでオレは無理だからな。」


春彦(電話を切って)「分かった分かった。じゃあ、後でスタジオでな。」


壱馬「おう。」


そして、暫くして、春彦が琴羽の家に到着する。


琴羽「どう?ハル…。」


春彦「これコンセント抜けてるぞ。」


菜々子「なんてこった…。」


春彦(コンセントを差し込んでエアコンをつける)「問題なさそうやな。」


菜々子「ありがとうございます神様!!」


琴羽「壊れてないなら良かった。」(エアコンをオフにする)


菜々子「ウソだろ…せっかく神の吐息が感じられると思ったのに…。」


琴羽「後でシェイク奢るわ。」


春彦「イイよこれくらい。」


その時、菜々子のスマホが着信を告げる。


菜々子「うわお…。」


春彦「なんだよ。」


菜々子「母上様からで御座りまする。」


琴羽 「怒られるかな?」


そして、少し遠くで電話に出て、「えぇ。」や、「はい。」を繰り返す菜々子。


春彦「アイツ、家絡みやと、大人しくなるよな(笑)」


菜々子(電話を切って)「ハルちゃま。」


春彦「何だよ気持ちワリィ。」


菜々子「アンタあれよ?母上様から、マリオって言われてたわよ。」


春彦「はぁ?」


菜々子「マリオに、調べて欲しい事があるんですって。なんでも、今は使われてない建物でね、毎月電気代が、数万円かかってる物件があるらしいの。」


春彦「え?マリオってまさか配管工の事言ってる?しかも、その案件、配管工よりも電気屋の仕事じゃね?」


琴羽「てかブレーカー落とすなり、しとけば良いのに。」


菜々子「よく分かんないんだけどね、そこクリアしてクッパ倒せば、アタイのPARTYでのドラムを認めてくれるって。」


春彦「クッパは居ねぇだろ。」


琴羽「ちなみに、その建物って?」


春彦「てかそれ以前にナナの一人称アタイじゃねぇだろ。」


琴羽「それは私もツッコんだんやけどね。」


菜々子「三丁目にある、無限地獄シェアハウスって建物らしいの。」


春彦「あのさぁ…。」


菜々子「いやマジなんやって!!母上様、マジなトーンで話してたんやって!!」


琴羽「それ、ヒロが言ってたけど、有名な心霊スポットよ。」


春彦「マジ?」


琴羽「ヒロ、実際に遭遇するのはムリなんやけど、映画とか、YouTubeとか、そういうのは好きらしくて。それ見漁ってるうちに、行きついたらしいけど…。」


菜々子「ハルたん、オ・ネ・ガ・イ♡」


春彦「オレにメリット、何もネェじゃん。」


菜々子「だからクッパ倒したらアタイ、堂々とドラム出来るんだってば!」


春彦「…。」


琴羽「でも、何か面白そうじゃない?」


春彦「じゃぁイチとヒロも呼ぼうぜ。」


菜々子「ハルたん大好き!エアコンの次に!!」


春彦「とりあえずスタジオ入るか。」


琴羽「そうね、二人には、その時に話そうか。」


こうして、PARTYは、地元でも有名な心霊スポットで、『何でこんなに電気代がかかってるのか?』を調べる事になった。


続く。


博記「第二話にして、シリーズに突入すんのかよ。」


果たして、クッパを倒して、菜々子はドラムとして実家に認めてもらう事が出来るのか?

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