第4話 鬼の姫
「うん。今度はちゃんと配信切れてるよ」
「本当に大丈夫だよね?」
「大丈夫ですよマスター」
“グッ”
千尋の言葉に、飛鳥は配信を再度配信を切り忘れていないかを確認している。それはそうだろう先ほど盛大にやらかしたばかりなのだから。そこに千尋はスマートフォンを出して配信が本当に終わっていることを確認させた。コルティのとアミーもそれを見て大丈夫と反応し飛鳥は一安心し息を付く。
「最初からやらかしちゃったな……注意されてたのに」
「やっちゃったのは仕方ないよ。今回の切り忘れで出た情報が身元の分かる物じゃなかったのが救いだよ」
「うん。ありがとう千尋ちゃん」
千尋のの言っている通り今回の切り忘れで出た情報は従魔の名前と飛鳥の魔力に対してのスペックの高さだ。ギルドには従魔の登録はアミーならスライム族、コルティなら機械族という大まかな種族でしか登録されていない。
スライム族は冒険者のパーティーなら一人は確実に登録しているぐらいにはいるし、機械族も武器や防具を作っている人なら身の回りの世話をしてもらうために従魔としている人はそこそこいる。
なので、その程度の情報では身元がばれる可能性は低い。
「飛鳥君。今日はもう休んで? アミーの処置は完璧だけど……結構ギリギリだったみたいだから」
「千尋ちゃんにそう視えたならそうなんだろうね。うんわかった。じゃあこの後の千尋ちゃんの配信にはいけないか」
飛鳥はこういう時に千尋の言うことには素直に従うことにしている。以前彼の言うことに従わずに作業した時はひどい目に合った経験があったのだ。
この後行われるであろう彼の配信を観に行けないことに非常に残念そうにしている。それを聞いた千尋は内心嬉しがっているのか少し口がニヤついている。
「じゃあアーカイブで見てね? 私の古参のらいじゅさん?」
「絶対見るよ。ぽらりちゃん」
──────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────-
時は少し過ぎ千尋はパソコンに向かい自分の配信を開始していた。
配信画面に映るのは、カージナルレッドの前下がりショートボブの髪に二本の角が生え所々露出のある甲冑の様な和装を着ていて包帯で左目を隠してる女の子。
隠している包帯は緩んでいて少し動くと右の紅とは違う黄金の瞳がちらりと見える。
これが5年前からVtuberとして活動している登録者数500万人を超える大御所個人Vtuber、鬼姫ぽらりの衣装である。
【宣伝】幼馴染がVtuberになったぞ!! 【小鬼たちも推せ】
250,811人が視聴中
「今から2時間ほど前に俺の幼馴染が天結らいじゅとしてVtuberデビューしたからお前らも推せ。まったく、今日まで我慢するの大変だった」
『いきなり命令で草』
【¥50,000
祝い金 おめでとう!!】
『だろうね』
『分かる』
『よく黙って入れたな』
『最近嬉しそうなのはそのせいだったのか』
【¥500
今日はデビュー時の衣装だー】
『最近は仮面付きが多かったからな』
『あれタイトル変わってる』
『雑談じゃなかった……ってマっ?』
『幼馴染の子が!?』
【¥10,000
ふえーん。視に行けなかった。開始10分前とか告知急すぎるよ~】
『仲間がいる』
【¥30000
やっとかずいぶん待たされたな】
『でも前言っていた時期より早いね』
『たまたま休みでよかった』
『たまたま浅い層にいたから良かった』
『他のダンジョン系の見てたけどその人も急なデビュー配信に戸惑ってた』
『私の方は急遽予定変更で同時視聴に切り替えてた』
彼女のゲームやダンジョンも含め様々な内容の配信をしているが、中でも一番再生数が伸びている動画は、魔物のアイテムのドロップ率とドロップの傾向をまとめている動画だ。
当時年齢的にダンジョンに入れない彼女がどうやってドロップ率をまとめていたかと言うと、他のダンジョンに言っている人の動画を見る。それだと普通と言う人もいるだろうが彼女の場合、最低でも20以上の動画を流しそのうえコメントにもある程度反応しながらまとめているという特殊性がある。
そしてドロップの傾向を見つけたのは彼女が初でそれが彼女の名前を広げるきっかけとなり、Vtuberファンだけでなく冒険者や魔物研究科を呼び込みここまでの登録者数となっている。
今までは視聴者も行っていたが、ダンジョンに入れるようになってからは自分で検証動画の確認作業を行っており最近では魔物討伐の教科書動画といわれてるほどの者になっておりこのままいけば登録者数1000万越えも確実だろう。
そんな彼女の幼馴染と言うことで当然らいじゅにも注目の目は向けられていた。だが、らいじゅ、ぽらり、そして二人のママであるみこともらいじゅがVtuberとしてデビューすることは発表していてもいつが初配信は言っていなかったのだ。
所謂ゲリラデビューと言うものであろう。
「ごめんな。10分前にいきなり言ったのは配信見てたやつならわかるだろうけどあまり多すぎるとどうなるか分からなかったからな。しかも今回は補助付けなかったからみたいだし……まったくもう。だから有無を言わせず布団に突っ込んできた。気になるやつはリンク張ってるからアーカイブを見な。
あと、今日この衣装なのは前に言ったかもしれないがこのラフを書いたのはらいじゅだったんだよ。それでみことさんが完成させたって感じ。だから、らいじゅがデビューしたら絶対これって決めてたんだよ」
『あ~確かに』
『それなら仕方ない』
『やっぱり無理してたんだ』
【¥50,000
治療費】
『常連なのに今日いなかったのは理由があったのか』
『このあふれ出る面倒見の良さよ』
『らいじゅの話をすると途端に出る素のぽらりん』
『「まったく、もう」いただきました』
『鬼のぽらりんもいいけどたまに出る素のギャップもよき』
【¥3,000
ぽらりんの素が出るほど心配させるなんて罪な子よね】
【¥500
足しにして?】
『何が有ったんだ?』
『アーカイブ見よ』
『今言うのも気が引けるけど、これからは二人が絡んで素が増えると思うと楽しみ』
『幸せそうなぽらりちゃんが見れると思うとね』
『ラフ書いたの彼なの!?』
『言ってたっけ?』
『記憶にない』
【¥1,084
そうか結構初期の時だから知らない人の方が多いのか】
【¥884
あの頃は結構ギリギリの発言も多かったわね】
【¥884
あの時ぽらりが代理出産なのには驚きとともに納得したね】
【¥1,084
みことさんにもトゲトゲしてたからな】
【¥1,084
そのたびにらいじゅちゃんが赤スパで殴って叱ってたのはいい思い出】
【¥884
今でも彼の赤スパには怯えるものね】
【¥1084
そう考えたら随分落ち着いたよな】
【¥884
らいじゅちゃんと私たちの教育のたわものね】
産峰 みこと ubuminne_mikoto
【¥8,840
あの当時は本当にいろいろあったのよね……
それだけあの子が貴女のこと考えて行動した証拠ね】
配信を観ていた人からはらいじゅを心配する声が上がり、観ていない人からは困惑の声が上がる。
そこで出てくる素のぽらりにコメントしている人々は本気で心配していることを感じ取り心配する人。
それでもらいじゅがデビューしたことに感謝するコメントにあふれた。
そしてぽらりのちょっとした誕生秘話におどろくが出てその当時を懐かしむコメントも現れる。
初配信は中学1年の時で当時はちょっとした人間不信を患っており常識に疎かった部分のあったので危ない発言も当時していた。
そのたびに諭していた古参の視聴者には所謂父親・母親面をするものもいる。
「次回からはしっかり補助付けて貰うから問題ないけどな……その節はお世話になりました。だからあんまり話題に出さないで? (……ホントあの当時はみんなにほんと迷惑をかけたな……」
『それなら安心』
『ホントいきなりせき込んだから心臓に悪かった』
『ええんやで』
『……ぽらりん』
【¥884
あの当時が有ったからいまがあるんだからね】
『悔い改めれる事は良い事ね』
ぽらり自身もその当時の出来事は黒歴史と思っているのか苦虫を噛み潰したよう顔をしてその話題を避けようとする。
その後に思ったことが口から洩れてしまったようで慰めのコメントが流れる。
「従魔の子たちがいるから大丈夫とは思っていたけど気が気じゃなかったな……って、俺のことはいいんだよ今はらいじゅのデビュー記念だからな」
『うん』
『そうだね』
『と言ってもなぁ~』
『ここのリスナーは殆ど知ってるならなー』
『たびたびぽらりちゃんが語ってるし』
『何なら声だけならここで出演していたからね』
『公式ウェキも出来てるし』
「いいから! らいじゅについて語っていくからな覚悟しろよ?」
この後時間いっぱいらいじゅの魅力を語って小鬼たちをほっこりさせたのは話すまでない事であろう。
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