第3話 初配信を終えて……
「…………では、そろそろ配信を終わります。次回は皆と一緒に配信タグ等や挨拶を決めていくからを忘れずに来てね? 候補や装備の案はボク公式の掲示板を建ててあるのでそこで意見を出し合ってね♪ それじゃあお疲れさま~」
天結らいじゅとして配信を行っていた少年は配信を締めくくり配信修了ボタンを押すやいなや表情を崩しせき込み始めた。
「ゴホゴホッ! カフッ!!」
せきと同時に赤い液体が少年の口から零れ落ちる。……そう少年は吐血していた。
“ピョーン、ピチャ。ピョーン、ピチャ。……ピカー”
そこに窓際にいた青いジェル状の生き物(?)が少年に近寄り体を光らせるとそれに続いて少年も光り出す。しばらくそうしていると少年のせきが落ち着き始めた。
「ハァハァ……ング……回復ありがとうアミー。おかげで落ち着いたよ」
“グッ”
少年の言葉にアミーと呼ばれた青いジェル状の生物は球状から触手の様な物を出し親指を立てるような形に変形させて返事をする。この生物は少年の最初の従魔であるジュエルスライムのアニムリウス。少年が今この様にVtuberとしてデビューできたのも彼のおかげと言っても過言ではないほどの存在で、愛称はアミーと言う。アミーは回復を終えると特等席といわんばかりに少年の膝の上を陣取り、少年もそれが当然の如く受け入れる。そこに金髪ツインテールにメイド服を着た少女がお盆の上に茶器を乗せて近づいてきた。
「マスター。ローズヒップティーです」
「コルティもありがとう」
何処か機械的な声とともに差し出されたのは貧血防止の期待も出来るローズマリーを使ったハーブティー。彼女も少年の従魔で名をコルティといい。装備作成時に疎かになりがちな彼の身の回りのお世話兼監視係として少年に送られた
「鼻血も出てますね。少々失礼します。これで良し……まったく、だから忠告いたしましたでしょう? 今のマスターでは負荷が掛かりすぎると」
「ハハッ、返す言葉もないなぁ。でも最初から頼るのもどうかと思ったしどんな感じかも知っておきたかったからね。次やるときからは二人とも補助お願いね?」
“グッ! ”
「もちろんです」
そう笑って帰す少年の名前は
彼が吐血したのはダンジョンの発生の後に人々が得た力である魔力のせいである。元来人は魔力を扱う器官は持っておらず(あったかもしれないが当の昔に廃れてなくなってしまった)後付けされたものだ。元来保持していなかった魔力器官は体が拒絶反応を起こし蝕む。飛鳥自体はダンジョンが発生してから生まれた世代ではあるがまだ完璧に馴染んだとはいえない。有る程度の量なら大丈夫だが、彼がある時手に入れてしまった[特殊スキル]により大量の魔力を生成するようになってしまった。先ほど慣らす一環とはいえ大量の魔力を使ったことにより体が拒絶反応を起こし吐血してしまったということだ。普段は大量の魔力を使う時はアミーが魔力調節の補助に入る形になる。
それなら他人に魔力を流すのは如何なのかと言うと、これも一緒である。コメントの中にもいたであろう?本来ならば魔力酔いと言う現象を起こすのだ。だがこの少年、電気機器を基につながった魔力の繋がりを使い一人一人の限界値と消費量を図り、各個人に限界値より少し多い気分が悪くなるかならないかのギリギリの魔力を配信で流したのである。それを行うことによって多少の負荷が掛かり扱える魔力量が増えるのだが、それを行うには膨大な処理が必要となり脳に負担がかかる。[成長スキル]によって多少は軽減することは出来るが数が数である為、脳に負荷が掛かりそれ故に鼻血が出るという形で現れたのだ。本来なら機械系の従魔であるコルティと思考をリンクして行うべきことだ。
「でもこれで僕のレベルも上がれば負担も減るようになる。あと、視聴者さんに限るけれど前回までみたいに付与術を受ける感覚に慣れてなくて混乱することも防げるからやめるわけにはいかないよ。出来れば状態異常にも慣れて冷静に対処できるようになってほしいところだけれどね」
「周りの方々を思う気持ちは大変良きものだと思われますが、どうかご自愛も忘れぬようにお願いします。今回は目的を聞いていましたので寛容いたしましたが次は有りませんからね?」
コルティの言葉にアミーも己の体を縦に揺らして賛同している。飛鳥はそういう二人に「分かっているよ」と返しローズヒップティーを口の中に含みながらアミーをつついたりコルティを労ったりしながらしながらのんびりし始めた。すると誰か彼の部屋に走って来る足音が聞こえた。
タッタッタッタッ。バタン!
「あれ? 配信するんじゃなかったっけ? どうしたのち「らいじゅ! 速く配信切って!!」…………え?」
息を切らしながら現れたのは僕の幼馴染の
「…………あ」
『大丈夫!?』
『何が起きたの!?』
『あー……やっぱりやせ我慢してたのか』
鬼姫 ぽらり onihime_porari
『補佐付けてなかったの!?』
『この人数に!?』
『感覚を知りたいって言うのは同意できるが……』
『良かったちゃんと補佐役なる子いるじゃん』
産峰 みこと ubuminne_mikoto
『寧ろいなかったら報告して止めさせるわよ』
『確かにレベル上がれば負担は減るが……』
『俺たちは経験値でもあった?』
『確かにあの時はつらかったな』
『リスナー名は経験値に決定だな!!』
『なんかほのぼのし始めた』
鬼姫 ぽらり onihime_porari
『そろそろ止めに行く』
『いてらー』
『って、行く?』
『うりうりーって。キャワワ』
『アミーそこ変わって!!』
『コルティのお頭撫でられた時の声もキャワ』
『アミーとコルティって誰よ?』
産峰 みこと ubuminne_mikoto
『確かあの子の従魔の名前ね。ほらオープニングにも出てたでしょう?』
『あのスライムとメイドちゃん?』
『ヤッホー』
『やっと気づいた』
『ぽらりちゃん見参!?』
『まあ幼なじみだし?』
コメントを確認してみるとどうやら本当に切れていなかったらしい。念のため視聴者さんに確認をとることにした。
「えーっと……今の話聞こえてた?」
『ばっちり』
『うむ』
『従魔に愛情注いでいてめっちゃいいね』
『従魔の紹介求む』
『私もらいじゅちゃんの従魔になりたい』
『リスナー名は経験値に決定された』
『実名でなかったのが奇跡だね』
「う、うあぁぁ! 絶対変な声出てるよ……実名出てない? 良かったぁぁ」
『ハイ可愛い』
『大丈夫俺も従魔をかわいがる時はそんな感じだから』
『寧ろ癒された』
『従魔と戯れるだけの回も求む』
「ぅぅう……この子たちの紹介はタグ決め終わったらやる予定だったからその時にするね? 次回からはコルティにも確認させよう」
「すみませんマスター。気付いてはいたのですがマスターの方を優先させていただきました」
「コルティその後言わなかったのは」
「はい、ぽらり様。アミーの時はメンタルケアも含めてです、わたくしの時は……その///」
「その?」
「マスターのテクニックに抗えず……///」
「「可愛いか!」」
『それでいいよ?』
『ゆっくり休んで』
『ぽらりんそう言えばいたな』
『配信より主人……いい従魔だ』
『可愛いか!』
『可愛いメイド』
『立ち絵が無いのが悔やまれる』
『ないすシンクロ』
コルティの言葉に視聴者と飛鳥の気持ちが一つになった。普段の業務使用の彼女も凛とたたずんでいていいがこの甘えている彼女もまた可愛いと飛鳥は思っている。まあどちらの彼女も彼一心なだけなので尚更である。そんな彼女の可愛さを提供したところで飛鳥は締めを行うことにした。
「コルティのかわいさを共有出来たところで、今度こそお疲れ様でした」
そう言って飛鳥は今度こそ確実に配信を終了するのだった。
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