世界の十字路5~死の遊び~

時雨青葉

プロローグ

違和感

「ふふふ……」



 死神は一人、笑っていた。

 その手には、まばゆく光るものが浮かんでいる。



 一見白く淡い光の中に、よく見ると様々な色が見え隠れしているそれは、いくら見ていても飽きないほどに美しかった。



 それを掲げて、死神はうっとりと目を細める。



 なんと美しいのだろうか。

 こんな魂など見たことがない。



 ここまで輝きに満ちて、色彩に富み、存在感と力強さを大いに放つ魂などあるだろうか。



 つい先ほど取り出したばかりの魂に陶酔しながら、この魂の持ち主のことを思い出す。



 面白い魂の持ち主は、面白い人間であった。



 死神である自分に一切怯えを見せず、どこまで追い詰められても強気な姿勢を崩さない。



 自分が魂を狩り取るその寸前まで、その目にたたえた強い光は揺らがなかった。



 彼と接して、久しぶりに大いに楽しめた。



 彼は面白い。

 この自分が、人格を生かそうかと持ちかけたくらいに。

 そのくらい、この魂の持ち主を気に入っていた。



 ―――しかし、その彼ももう死んだ。



 少々残念だが、仕方あるまい。

 この魂すら手に入れば、彼のことなどどうでもいい。



 死神はローブの中に手を忍ばせた。

 そこから取り出した金色のかごを一度振ると、その勢いでかごの扉が開く。

 かごの中に魂を入れると―――



 す…



 急に、魂の輝きが落ちた。



「………?」



 死神は、かごに入れかけた魂を思わず取り出した。



 魂は明らかにその明度を落とし、何かが抜け落ちてしまったかのように存在感を失くしている。



「これは……」



 ぽつりと呟いたその目が、険しい光を宿した。


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