第23話 初めてのお仕事
某日夜。
山の中に、空間のゆがみが検知され。
そこに向かっている。今日は、初めてのお手伝い。
数回手伝いをして。対処できそうなら、単独で鬼退治を、させてもらえることとなった。
現場につくと、周りは静かだが。
うっすらと、風に乗り。
血の匂いがする。被害者?は、食い荒らされた猪だった。
「空間の乱れは。こっちだな? 行人。空間の開いている感じは分かるか?」
「ああわかる。鬼も3体かな?」
「ほう。結構離れているのに。わかるのか」
「まあ。なんとなく」
感じた方向へ向けて、歩いて行く。すると鬼が一匹。こちらに気が付き、逃げ始めた。
「あら? 逃げ始めた」
「ああ。行人がまき散らしている。神気?かなぁ。たぶん、それを感じたのだろう」
「これ。自分じゃ、よくわからなくて。抑えられないんだよね」
「とりあえず。倒すよ」
光を絞って、撃ちだす。
200m先で、魔法の光は拡散すようにイメージした。
どうだ。
「ほう。うまく、コントロールできた、ようじゃないか」
光は、鬼を突き抜けた後。少しして、拡散、消滅した。予定通りだ。
「さて。裂け目を、閉じてから。左右に分かれるか」
少し進むと、空間の裂け目があった。
「向こう側へ行って。退治したりは、しないの?」
「昔。幾人か行って。帰って、こられなかったようだ」
「一応、札を入れとくよ。何かの時には、使えるかもしれない」
ポイっと。石でできた札を。空間の裂け目に放り込む。
「さて、ふさぐよ」
見る見るうちに、小さくなり。空間が閉じた。
「さて。この左にいる方が、さっきより力が強そう。
だけど、どっちが、どっちへ向かう?」
「行人は、その強いほうへ行け。今は少しでも、情報を得るのが優先だ。一度見れば覚えるだろう。父さんは、水希ちゃんと、もう一つの弱いほうへ行くよ」
「それじゃあ。また後で」
「さっきのは、小鬼の感じだったけど。こっちは大きいな?」
〈行人。色付き鬼は、魔法も使う。気をつけて〉
精霊が、頭の中で叫ぶ。
「まあ、まず。さっきと同じく。光を。行け」
振り返り、こっちを見た鬼は。突然。手のひらに土の盾を造る。ふせごうとしたのだろうが、その前に、光が突き通ってしまった。
「黄色鬼は、土魔法かな?」
〈そう。ほかにも色々いるし、大きさも。もっと大きいのが居る。さっきのは、2mちょっとだけれど、大きいのは5mくらいの物もいるからね〉
「倒れると、消えるし。不思議だね」
〈かれらは、おなじ。霊的な存在。ただ良くないもの〉
「さあ。もういないかな? んーと。ああ、もういないみたいだ」
「それじゃあ。向こうへ向かおう」
おじさんと一緒に、移動を開始する。
水希は、行人の父親。一人と一緒に、小鬼の気配を追っていた。だがまずい。すぐ近くに、民家がある。
「ちょっと、あちらから回り込んでくるから」
一人が、離れようとしたとき。
「大丈夫です」
水希がそう言って、手を振り上げる。
すると、地面から。土の槍が立ち上がり。小鬼を貫いた。
「おお。便利だな。私のような火だと。どうしても、射線を気にしなくてはいけないが。土の槍なら、座標さえしっかりしておけば、使えるから、かなり有効だな」
見ると、土の槍は消え。盛り上がった土となっていた。
「さて。他にはいないようだし、戻ろうか」
「はい」
水希たちが少し戻ると、行人と二郎おじさんが、こっちに向かってきていた、
「問題はなかったか?」
行人が、水希に向かって聞く。
当然という顔で。
「問題なし」
びしっと、Vサインをしてきた。
「こっちは黄色で、土魔法使いだったよ」
「魔法を使うの?」
「ああ。覚えておかないと、困ることがあるかもしれない」
「まあ。初仕事。ごくろうさん」
父さんが、ばしばしと背中をたたいて来る。くっダメージが。
帰ってから。父さんが、じいちゃんにも顛末を報告したようで。土魔法が、思いのほか便利だと伝えると。悔しがっていたようだ。
翌朝。
一緒に登校できるため、水希は嬉しそうだ。
いつもより、少しゆっくり歩き。学校へ向かう。
次の瞬間。
頭の中に、頭を撃ち抜かれ。額から血を流しながら。倒れこむ、水希が見えた。
あわてて、水希を抱え込み。
周りの状態を、スキャンする。
どこだ? すると、後側。
2mくらいの空間が、揺らぎ始める。
緑色の手が、出て来たため。ありったけの光魔法をぶち込む。
その後、空間を閉じる。
「ふう、無事か?」
「あう。こういうのは、おうちへ帰ってから。ゆっくりがいいな」
「うん?」
「ああ。ごめん。揉んでいるのか」
「うん。気持ち良いよ」
とっさに、抱えこんだ時に。
背中側から抱え込んだため。
左手が、もろに水希の胸を包んでいた。
通学路で、女子学生を後ろから抑え込み。胸を揉んだ。客観的にみると、事案発生だな。
ちなみに水希は、後ろに出てきた空間の揺らぎも。鬼も気が付かず。
突然、俺に抱き着かれてきたことに。喜んでいたらしい。
気を取り直し。手をつなぎながら、登校することになった。
その日。帰って来てから、父さんにその報告をする。
「おまえ。札を空間の裂け目に、放り込んだだろ。使われたのじゃないのか? 対の札を壊しておけ。念のためだ」
「一応。石で挟んで。中の文様は、見えないように、していたんだけどなぁ」
札を取り出し、土魔法で素材に戻す。
「まあ。それで大丈夫だろう。それで、頭に浮かんだ、未来予知は、精霊の仕事か?」
「いや。違うみたいだ」
「お前自身の力か。また、詳しく分かれば。教えてくれ」
「はーい。それじゃあ。まあお休み」
「ああ。お休み」
部屋に戻ると、水希がカモーンな状態で待っていた。
まだ、寝ることが、できないようだ。
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