第22話 あれは何?

 水希と行人君?が、学校帰りに、家へ来たのは良いけど。

 ほんの2日。


 たったそれだけ、会わなかっただけで。

 また変わっている。

 悪い方じゃなく。近くにいるだけで幸せを感じる。

 でも、圧倒的な崇拝対象?に、なりそうなイメージ。


「それでね。お母さん。お父さんが、すっごく、うっとうしいから。しばらく、神地家にお邪魔することにしたの。向こうのご両親も、良いよって言ってくれてるから。だから、お父さんに、説明しておいてね」


「仕様がないわね。向こう様に、ご迷惑をかけないようにね」

「行人君。この段ボールをお願い。さてと、じゃあ行ってきまーす」

「しばらく、お預かりします」

 そう言って、お母さんに頭を下げる。

「ご両親に、よろしくね」

「はい」




 立ち去っていく、二人を見送る。

 その背中は、とても幸せそうに見える。でも行人君。彼は、本当に人間なのかしら? ふとそんな、馬鹿みたいな考えが、頭をよぎる。

 何を考えているのかしら、私ったら……。


 さて、お父さんね。

 過保護なのよ。娘に婚約者ができてから急に。やきもちかしら? これは、ちょっと、問い詰めないとだめね。



 家に帰り。

 開いていた部屋を、少しかたずけ。水希の部屋にした。

「元々。客間にも使っていたから、布団だけど。大丈夫?」

「ここでは、寝ないから大丈夫」

 水希は平然と言い放つ。


「はい? さすがに、それはまずいだろう?」

「なんで? ご家族にも関係言ってあるし。静かにすれば、いいだけじゃないの?」


「その、躊躇のない性格。好きだけど……まあ、いいか」



 その晩。

 夕食時、父さんが突然。願い事があると切り出して来た。

「行人。元服もしたし。ぼちぼち、家業の手伝いと、力の使い方を学ばないか?」

「それは、こっちとしても、願ったり叶ったりだけど。突然どうしたの?」

「まあ、学生のうちは。関わらすのは、ちょっと控えようと思ったのだけどな。その強力な力。失敗すると、お前が討伐対象になりそうでな。修行を早めようというわけだ。最近、空間が不安定なのか、鬼の出現も増えてきているしな」


「お父さん。私もお手伝いします」

「ああ。ありがとう。君は、空間封じはできないが、戦力的にはありがたい。よろしく頼む。2人で組んでもらおう。行人は、最初に空間封じの特訓だな」

「了承」

「爺さんにも、連絡は入れておくか」



「どわぁ。なんで、人が入っているのに。風呂へ入ってくるんだよ」

「そこに、お風呂があるから?」

「なんだよ。それ」



 その週末。家の勝手口から出ると、向こう側だった。出たところにある。要石にしるしを刻んで、空間を繋いでいる。ということだ。


 本来、住宅地で家があるはずだが、当然こちらにはない。

 そこで、水希は攻撃魔法の訓練。俺は、意識して空間を開き。空間を閉じる。

 その訓練だ。


 今までは、能力が暴走し。

 ドアを起点に、勝手に空間が接続されていただけなので。

 今から行うのが、初めての空間接続となる。


「さて。まずは空間だ。普通に考えて、XYZの軸があることは分かるな?」

「ああ。数学の図と同じだろう」

「そうだ。基本XY軸はそんなに力も必要ないが、Z軸は力も必要だ。それに、戻ってこれなくなる可能性が高い。だから使うな。使うなら、起点。つまり、ここでの移動は構わないというか、戻ってこられる可能性が、少しはある。だが、基本的に、時間軸は、ある特異点で、枝分かれしていると考えられる。それは、過去も一緒だ。だから、一旦。過去や未来に行って、帰ってくると。それは、いまではない可能性が、高くなる」


「それで。XY軸の場合は、起点。つまり自分のマークを置いておくこと。細部まで、明確に思い出せるものにしていけば。もし符丁を失っても。帰ってこられる」

「よく行く場所には、2枚の符丁を使い。一枚を置いて来る。今度は、それを思い起こしながら、道を開けばいい。戻りは、どこからでも基本。符丁に帰ってくる」


「そうか、時間軸では、符丁があっても。同じではないことが、あるのか?」

「そうだ。お前は力があるから。時を飛べそうだが。そう言うことだ、使うな」

「ああ。わかったよ」


「開くには。念じながら、空間が開くさまを想像する。閉じるときも同じだ」

「へー。じゃあ。ドアとかがなくても。大丈夫なんだ」

「そうだな」


「今までとは違い。場所を意識する。水の精霊のいたあの池に……」

 目の前に黒い渦ができる。それを、シャッターのように開くと、目の前に池が見える。

〈おお。すごいですね。ちょっと、本体と意識共有させてください〉


 池から、本体が姿を現し。頭を下げてくる。

〈共有できました。これで3千年は、寂しくないそうです〉

〈じゃあ。閉じるぞ〉

 開いた窓が、小さくなるのをイメージする。すると縮まり消える。


 あの河原はどうかな? 場所をイメージし開いてみる。

 おおできるな、よし閉じよう。今度キャンプをしに、行ってもいいな。


 そうか。本来、こんな使い方ができたのか。

 苦労したなあ。

 でも、水中とか。宇宙空間に開かなかったということは。無意識化でも、コントロールが、できていたということだな。想像だけでぞっとするよ。



 あれ、まてよ。

 位置も、ドアの位置にこだわらなくていいなら。じいちゃんの家は、こっちか?


 家の玄関をイメージしながら、開く。うん、できた。

 しかしこれは。みんなに聞いてみよう。

 使い方を、間違えると危ないな。

 いや。できることが、ばれたときの方が危ないな。

 何かあったら、すぐ容疑者にされそう。

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