第21話 翌日の話
よく朝。
登校しているときから。すれ違う人の視線が気になる。
なんていう、デジャヴュを感じている。
だが、今日は、水希が横にいるので、きっとそのせいだろう。そう思うと、少しはましだ。
結局。水希は、泊まることになったが。
理由は、飛田家お父さんが、分からん、ちんだからという。訳の分からない理由だった。お父さんは、桔梗屋さんかな?
学校へ到着して、一緒に教室へ入る。
昨日とは逆に。静まり返っていた。
こちらを見つけて、元普と雑古が、近づいて来ようとしたが。
3mくらい離れたところで、いきなり土下座を始めた。
なんだ? 昨日の練習により。
水希も、変なオーラは、出してはいないはず。
教室の中へ、入るにつれ。
中にいた人間が、徐々に離れていくか、跪く。
水希の席は、入口に近いため別れ。
奥の自分の席に向かい。
様子を見ながら進むが。
座っていたやつまで、立ち上がり離れていく。
うーむ。何か少し。心にダメージが来る。これは、かなりへこむ。
少し経つと、皆も慣れたのか。
少しずつ、周りの席にまで、クラスメートが座り始める。
目が合ったので、ニコッと微笑む。
すると、その場で座り込んで。涙を流し拝み始める。えっ、今の。俺が悪いのか?
なんで、微笑んだだけで。泣き出すんだ?
仕方が無い。
立ち上がり。泣き出した子に近づいていく。
ハンカチを取り出し。言葉をかける。
「ごめん。何か、怖がらせたかな?」
なるべく優しく語りかけ。ハンカチを差し出す。
なぜか、ぷるぷるし始め。
顔まで、縦揺れし始める。
「…………」
突然、瞳がぐるんと、白目になり。
ぱったりと、倒れ込む。
気絶した。えっ?
水希が、あわててやってくる。
「ダメだよ。今。普通の人じゃ。近くにいるのも、恐れ多い感じだそうだから。声なんかかけたら。卒倒するのは、分かっているでしょ」
そう言って。倒れた女の子を抱えあげる。
そして、あわてて教室を出て行った。
お姫様抱っこだ。そういえば、水希は保健委員だった。
いや、それは良いけど。恐れ多いって何?
自分の席に戻り、周りを見回す。
こちらを、みんながちらちらと窺っている。だが、目が合った瞬間。首がおれそうな勢いで、顔をそむける。
泣きたいのはこっちだよ。
ぼやいていたら、先生がやって来た。
今日は無事に、入ってこれたようだ。
後ろには、木蓮先生が付き従っている? 付き添っているのか?
「えー。皆さん。おはようございます」
「本日。まず最初は、出席を取りたいと思います。よろしいでしょうか?」
なんだか、担任の、人間性が変わっている?
「欠席は。見たところ、二つほどの空席がございます? あの席は、どなただった、でしょうか?」
立ち上がり、説明をする。
「先生。すみません。そちら側の席は、飛田水希。僕の隣は、名もなき同級生ですが、倒れたので。飛田さんが、いま保健室に、連れて行っています」
「はっ。ははぁ。神地行人様。貴重な情報を頂きまして、ありがとうございます。恐悦至極でございます。そのお言葉。我が魂に刻み込みましょう」
なんだか、教壇に頭をぶつけそうな勢いで。先生が頭を下げている。神地行人様ってなに?
じいちゃんが、何かをしたのか?
すると、水希が帰って来た。
「あっ先生。高橋さんが体調を崩したので、保健室へ送って来ました。状態は大丈夫だろうけれど、1時間目は休ませるそうです」
「あっ。はい。委員のお仕事。ご苦労様です。並びにご報告。ありがとうございます」
水希に、礼を言い。頭を下げる先生。
水希側に向いていた体を、今度は正面に、ピシッと向き直す。
「では次に。連絡事項が……」
そして、ホームルームが終わる。
「なんだあれ。担任おかしくなかったか?」
「行人くん。みんなに聞くと、生物的な絶対的上位者と、感じるみたいよ」
水希からの、情報。
「なんだか。逆らっちゃダメみたいな感じで。だから、行人くんに、叱られたりすると。普通の人。自殺しちゃうから。絶対叱っちゃだめよ。さっきの高橋さんも、微笑をもらった事で、頭の中いっぱいになっちゃって。涙が出ちゃったんだけど。それをハンカチを出して、行人くん近づいたでしょう? それでもう。お手を煩わしてしまった。私って何という事をしてしまったのって。プチっと来たみたい」
それを聞いて、そんな対応をされて。俺にどうしろと?
「それって、どうしろと?」
思わず、水希を頼る。
「静かに、ただ微笑んでおく。かな?」
「悟りを開きそうなんだが」
「ああうん。もう。十分そう思われているみたいだから。大丈夫よ。逆らってはいけない天上人」
シャボン玉にでも乗るのか? あれは、ちょっと違うか。
「頑張らないと。テストで間違えたりすると、担当の先生とか。やばいことになりそうよ。行人様が、間違えるような問題を出してしまった。とか?」
「やめてくれよ」
あっという間に、放課後。
スマホを取り出し、じいちゃんに電話する。
「もしもし。じいちゃん」
「おお。おっ。行人。何をした? 電話越しでも、手に震えがくるぞ」
「なんか。黙想していたら、魂の階位が。上がったらしい」
「我が孫じゃが。すっかり、人間じゃ、なくなってきた感じがするのう」
「それで。みんなの反応が。気持ち悪いんだけど。どうしよう?」
「力を抑えるのは、しているのか?」
「うん。授業中。少し、ウトっと来て。力が解放されたらしく。周りがみんな泣き出して、えらい目にあった」
「それはもう。慣れるしかないのう。ちょっと強力な、カリスマじゃな」
「カリスマか。今なら、どこの面接でも、通る自信があるよ」
「はっはっは。便利じゃの」
「ああ。まあ分かった。様子を見てみるよ」
「それじゃあ。のう」
「おじいさん。なんだって?」
「力を抑えて。様子見だって」
「そうだね。今日。授業中、力を解放したでしょ?」
「と、いうか。居眠りして、力が漏れた」
「あの時は。私も何というか。幸福感が満ちてきて。涙が出ちゃった」
「あちゃあ。水希にまで、影響を受けるのか。やばいな」
「みんな。幸せを感じる。だけだからいいけど。今頃になって、周りの女の子の目が、行人君を追いかけているのが。すこし気になるのよね」
「堕天するなよ。阿修羅になったお前なんか。見たくもない」
「えへ。愛してくれている間は。大丈夫だよ。多分」
「多分かよ。こわいなぁ。さあ帰ろう」
「あっ。一度。家に寄ってくれる? ちょっと、荷物を取って来たいの」
「ああ。いいよ」
「それに、お母さんには言っておかないと。一応。昨日、電話はしたんだけどね」
「あいよ」
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