第20話 再び。学校での異変

 朝。

 登校しているときから。すれ違う人の視線が気になる。

 こんな、普通の人間。何が珍しいんだ?


 何かくっつけているのかと、自分の服とかを、確認する。だが、特に何もなさそうだ。


 学校へ到着して、教室に入る。

 みんなが、2度見してくる。

 そして、なんだかため息をついている??


 いつもの二人が、駆け寄ってきたが。2mくらい手前で立ち止まる。そして、頭を下げてくる。

「おはよう。どうしたんだ。ふたりとも?」


「いえ。神地様が、神々しくて。これ以上近づくのは、ちょっと……」

「神々しい? あれか? 内包している精霊が増えたからか? とすると、水希もか?」


 とりあえず。自分の席に座る。

 だが、クラスの人間が、遠巻きにずっとこちらを見てくるのが、なんだか落ち着かないな。


 やがて、水希が教室に入って来る。間髪置かず、俺を見つけ、手を振って来る。

「行人くん。おはよう」


 いつもの水希。だが、やはり。教室内のざわめきが、大きくなった。

 俺には、わからないが。やはり、水希も神々しい雰囲気を出しているのだろう。



 何とか、力を抑えないと。

 これからの生活が、やりにくくなる。


〈おい。精霊たち。この雰囲気というか。周りが言っている、神々しさは、抑えられないのか?〉

〈私たちの力を得たことで、魂自体の階位が上がっちゃったからね。この世界にもある。仏像とかの、後光とか光輪みたいなものだと思って。まあアクセサリー?〉

〈そんな、アクセサリー。いらないよ〉


〈多分。変な考えを持った人間も。これで、近づいてこれなくなると思うし。虫よけと思っていれば、いいじゃない?〉

〈無茶苦茶言うなあ。あてにならん。じいちゃんにでも、聞こう〉


「みんな。おはよう」

 そう言って、教室に入ってきた先生だが。踵を返し。出て行ってしまった?

「なんだ?」

 ざわざわと、クラスがざわめく。


 なんだか。教室のドアの隙間から、覗いているようだが?


「なんだか。教室に入れないんだが。どうしてだ?」

 ドアの隙間から、ぼそぼそと声が聞こえる。


「先生。どうしたんですか?」

「いや。教室に入ろうと思うと、足が震えて。冷や汗が出る。誰か、変なウィルスでも散布していないよな?」


〈あれって。さっき言っていた、虫よけ効果か?〉

〈そうね。もっと、清い心を持ちなさいって。教えてあげれば、いいんじゃない〉


「ちょっと待ってくれ。ほかの先生を、呼んでくるから」

 そう言い残し。先生は、職員室の方へ駆けて行った。


〈今。この空間は、行人くんと水希ちゃんが、両端にいるでしょ。だから、神域に近い感じに、なっているみたいね〉


〈俺らは、狛犬か?〉

〈似たような物よ。若い子は、まだ穢れが少なくて。逆に入ってくると、体調がよくなったりしているけど。ある程度を超えると。入るのが、怖くなるみたいね。しばらく、中にいると穢れが払えて。体調も良くなるはず。なんだけど〉


 しばらくすると、教頭先生と副担任の音楽担当教員木蓮先生がやって来た。

 案の定。


 教頭先生は、担任と同じ症状が出て。教室に入れなかった。

 だが、木蓮先生は、普通に入ってきて。

 さらに、泣き出してしまった。

「ああ、清浄なる大気。私は今。地球の大気に抱きしめられている」

 などと言って、感動している。


「お二方。どうしたのですか? 何も問題はありません。この清浄で、澄み切った空間へ。どうぞ、足を踏み入れてください」


 担任と教頭は入ろうとしてはいるが。

 もう生まれたての小鹿のように、足がピルプルで歩けなくなっている。


 木蓮先生が、手を差し伸べ。二人を導く。

 そして、教室に入った瞬間。二人は、木蓮先生の手を握ったまま。

 ボロボロと涙をこぼし始めた。

 それは、聖母マリアが手を差し伸べ、2人を救済しているかのようだった。


 そしてその救済は30分が経過し。

 授業終了の、チャイムが鳴るまで。続けられた。


 担任と教頭は、その場に倒れ伏し。

 クラスの数人で、保健室へ運んで行った。

 その時の木蓮先生は、大きな何かを成し遂げたような。

 大変、満足そうな笑顔を浮かべていた。


 俺たちは、ただ一時間。

 時間をつぶして、何を見せられていたんだ? みんなの脳内は、その瞬間。クエスチョンマークが、95%以上占有していたと思う。


 ほかの教科も、先生方が、教室に入れず。同じ作業が、放課後まで続けられた。

 この学校。大丈夫なのかと、すごく不安になった。


 後になって。

 水希と二人で、職員室に行けば、よかったかとも思ったが。それは、それで。大騒ぎになりそうだと思い。行くのをやめた。



 結局。その日は授業にならず。家に帰った。なぜか、水希も一緒に帰ってきた。

 家に帰らなくて良いのか聞いても、「良いの」その言葉を、繰り返すばかり。


 結局、そのまま連れて帰って来た。

 帰ってきて、さっそくじいちゃんに。状態を説明した。

 だが、今まで、その域まで至った人間はおらず。抑え方は知らない。だが、自分の意識次第で、何とかできるんじゃないかと。アドバイスはもらった。


 水希と二人で、座禅を組み。

 外に漏れている神威? を押しとどめる。

 皮膚の表面までで、その内側へ。光をとどめるイメージを試す。

 試行錯誤を繰り返していると。

 なんとなく、漏れ出すものの波長? が、分かって来た。

 体に押しとどめ。逆に、体の中へなじませていく。すると、突然爆発するような力を感じた。


〈今のは、何かな?〉

〈うーん。行人くんて、何者かな? もう一階位。魂の階位が上がっちゃった。もう。私は、神だって、宣言しても誰も怒らないと思う。精霊なら、全員跪くよ〉


〈それと。周りに出ていた、神々しさは抑えられているけど。逆に、魂レベルで差ができちゃったから。きっと悪人も、視界に入ったら、ひれ伏すと思うよ〉


〈それはそれで。何かあると、迫害を受けそうで怖いな〉


 まあ。それのおかげか。力の制御が簡単にできるようになっていた。

 非常にありがたい。

 意識すると、数キロ単位で、人の動きを把握ができるようになった。

 ただ、これをすると。頭が割れそうに痛くなる。

 20~30mくらいなら、何とかなりそうだ。


 水希は、何とか。神威を押しとどめることが、できるようになったようだ。

 説明が難しかったので、精霊経由で方法を水希に伝えた。

 感覚を共有できるのは、とっても便利だ。

 精霊が、エッチしているときの、水希ちゃんの感覚を流そうか? 思いついたように言ってきた。興味はあったが、何か戻れなくなりそうで。断った。

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