第18話 力の開放

 その後。

 結局、水希は動けなかったので、俺の布団に寝かせた。


 朝になり。

「おはよう」と言いながら、ダイニングに入る。


 誰もいなかったが、勝手にコーヒーを入れる。

 席に着く。

 ここは、まあ。いつも来た時の、定位置だ。

 そのうち、じいちゃんが来たかと思ったら、いきなり変顔されて。吹きそうになった。


「なんだよ。朝早々から、そんな変な顔して?」


 じいちゃんは、まじめな顔して聞いてくる。

「おまえ。行人か?」

「うん? そうだよ」

「昨夜。いったい、何があった」

 あ~精霊の件。気付かれたか。

「あ~。なんか、気が付いた?」


 じいちゃんが、あきれたような顔をする。

「さすがに、それだけ変わっていれば。普通。気が付くじゃろう」


 ちょっとだけ、説明しておこう。

「なんだか。寄ってたかって、精霊が入って来た?」

「なんで疑問なんだ? それで、結局いくつ入った」

「4つ。水、火、光、土、かな?」

 そう言うと、じいちゃんはすごく驚く。


「体は、異状ないのか?」

 

「今のところは、爆発も。しないみたい」


 すごく驚いている。百面相状態だ。

「ふーむ。外でちょっと、力を見せてくれ」

「ああ。良いけど。まだちょっと、慣れてないから。光とか土は難しいかも」

「何を言っとる。一つ使えれば、全部使える」


 そうなのか?

「あっ。ちょっと待っとれ。一人を連れてくる」

「ほーい」


 クッキーがあったので、かじりながら待つ。

 じいちゃんたちが、やって来た。


 うん? おじさんも、泊まっていたのか。

 父さんの弟で、二郎さん。

 一緒に、裏へ向かう。


 そうそう。ここがいつもの。見知った玄関。

 こっちが、勝手口だとは、思わなかった。


 前を行く、父さんたちの会話が耳に入る。

 ひたすら、おかしいを繰り返しているな……。


「おい。行人。的はあれにしよう」

 指さす方向には、稲を積んだ。積みわらが見える。


「燃やしちゃうとまずいから。水で行こうか」

「何でもいいさ。やり易いもので。普通で撃ってみろ」

「ほーい。撃つよ」


 やばそうだから、力を籠めず。

「ドン! なぜか、空気が震えたと思ったら。直径3mほどの水の玉が飛んで行った。……あれ?」

 ちょうど。積んでいたわらと、同じくらいの大きさだ。

 着弾? すると、中にさしてあった竹竿ごと。爆散した。


「あちゃあ。すごいなこれは」

「練習しないと、危なくて使えんな」

「もっと小さいのを、意識的に撃ってみろ」

「ああ。はい」


 手の先に、水球を作ってみる。

 ほんのちょっとだけ。小さいやつ。

 何とか作り。撃ちだす。10mくらい先で、霧散した。


 試しに、土の塊を作り。撃ちだす。

 10mくらい先で、燃え出し。的に当たる前に、燃え尽きた。


「すごいな。石が燃え尽きた。ほい。次は光」

「あっ。ああ」


 光を集めて撃ちだす。

 レーザーのイメージ……。

 積みわらを貫通して、向こうに見えている。山へと吸い込まれた……。

 あっ。積みわらが、燃え出した。


 燃えているのに、気にもせず。じいちゃんたちは、話し込む。

「光は、使えそうだな」

「光は、もともと、音速を越えているしな」


 さらっと無理を言ってくる。

 コントロールできないのを、見ていたよね。

「とりあえず。積みわらの火を消そうか。行人。消してみろ」

 さっきより、ちょっと大きく。30cmくらいの水の球を、山なりで投げるように、撃ちだしてみる。


「おお。いけそうだな」

 上から3個ほど落とし。2個ほど、真ん中の穴に打ち込む。

「消えたかな?」


「ちょっとこの辺りに、土を盛って。土塁を造ってみろ」

「行くよ。……ほい」

 自分が今居るところを起点に、10mくらいの高さの壁が。一気に数キロ単位で出来上がった。


「これも、練習が必要だが、便利だな」

 俺が驚いたのに、平然と感想が述べられる。


「力を得たのが、昨夜か。それでこの出力。まあ、練習あるのみだな」

「ちょっと。山のふもとが気になる。見てくるよ」

 おじさんはそう言うと、車を取りに行った。


「わしらは帰って。朝飯でも食うか」

 ぞろぞろと、家に入っていく。


 そこに、ちょうど。

 飛田の両親が居た。

「おはようございます。お散歩ですか?」

 そうと聞くと。

「おはようございます。散歩ではなくて。水希が見当たらなくて」


 ああ。そういえば、俺の部屋に寝かせたままだ。

「あっ。たぶん僕の部屋で、寝ています。昨日酒を飲んで、酔っていたから、部屋を間違えたのでしょう」

 お父さんがにらんでいるが、気が付かないふりしよう。


 じいちゃんが、すかさず。

「なら、大丈夫だろう。朝食にしませんか?」

 言ってくれる。

「ありがとうございます」

 水希から、意識が離れてくれた。


「朝食は、和食と洋食。どちらが、よろしいですか?」

「どちらでも、お手を煩わせない方で、お願いします」

「じゃあ。和食かな」

「はい。お願いいたします」


 そんな話を聞きながら、こそっと抜けて、部屋へ帰る。


 水希はまだ寝ていた。誰得な格好で、いろんなものを見せながら。

 とりあえず起こして。風呂でも入って来いと追い出す。

 朝食だからと、説明はした。


「水希ちゃんは、いたか?」

 爺さん鋭いな。

「いや、いなかったから。風呂かな」

 とぼけてみる。

「そうか。じゃあ先に頂こう」



 朝食をとっていたら。おじさんが帰ってきた。

「行人。光も、ちょっと使い方と、手加減を考えた方がいい」

 小声で、教えてくれた。


 後で詳しく聞くと。50cmくらいの穴があき。

 先が見えないくらい続いていた。

 途中で、水脈を打ち抜いたのか、水が出ていたようだ。

 山の反対までには、届いていなかったが。

 水脈に当たり、拡散と崩落をしたせいかもしれないと、いう事だった。


 朝食をとっている間に、水希が風呂から出てくる。

 そこでも、じいちゃんが気がつく。


「彼女もそうなのか。信じられん」

 そう言ったせいで、場が少し騒然とした。


「実は、お宅の娘さんは、水神様の力を。その身に宿していたのだが。昨夜、行人と共に。ほかの神様の力を、受けたようだ」

 とざっくり説明した。


 最初は。うちの娘は普通の子です。お父さんは言い張っていたが、表に出て、力を見せると。納得したようだ。

 爺さんに言わせると、俺より使いやすそうだと言っていた。

 力の制御力をつけなきゃ。ずっと馬鹿にされそうだ。


 結局。昼頃までプラプラしていた。

 その間に、飛田の両親はまた、風呂に入っていたようだ。


 まあ。源泉かけ流しだから。いいよね。気に行ってくれれば、何よりだ。

 ご両親も仲が良いな。

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