第14話 壊れた水希

 月曜日。

 普通に学校へ行く。

 そして、いつものように。

 誰かのストーカーをして、教室に入る。


 なぜか教室が鎮まる。

 いや。金曜日に、逃げたせいだろうけど。


 しばらくして、水希が来たが。来たとたん。大きく手を振ると。

「行人。きゅーうん」

 状態。やはり。夕べから、壊れっぱなしのようだ……。


 昨夜。成り行きで、口約束とはいえ。婚約。その後から、ずっとこの状態だ。

 スマホのメッセージでも、訳の分からないメッセージが、ひたすら送られてきている。

 


 無視していると。人に言えない写真も送られてきて。大事に保存した。


 耳をそばだてると、婚約の単語が飛び交っている。

 ばらすなんて、こまるなぁ。


 親公認とはいえ。

 教室は、これ以上ないほどざわめき。そして、変な視線がこちらに向かい。元普と雑古が踊っている。


 その混沌も、先生が来て終焉を迎える。ことは無かった。


「おお。神地おめでとう。飛田さんと婚約したんだってなあ。先生も、お前を締めたいほど。うらやましいぞ。世の中。月夜の晩ばかりじゃないからな。気を付ける事だ。以上」


「それじゃあ。軽く嫌味だ。おととしの東大入試問題から抜粋。解けない奴は、1週間補修。恨むなら神地を恨め」


 あーうん。落ち着くどころか、とことんかき混ぜ。混沌へと教室内を落とす。

 独身の先生が、うっぷんを晴らすだけの? ハラスメント全開の、時間が流れる。


 実はこの時。別の意味で、クラスの中に騒ぎが起こっていた。

「あいつって、神地っていうんだ」




 少し時は戻り、行人達の帰った飛田家では。

 親二人が顔を突き合わせて、目の前に置かれた支度金をぼ~っと見ていた。

 風呂敷に包まれたそれは、神地家としての。御挨拶だそうだ。


「水希が、最近妙に浮かれていたのは知っていたが。彼氏ができていたとは……」

「それも何か。旧家で。国とか、かわありがあるですって。水希にも、才能があるので、嫁に欲しいとの事だけど。……この包みの中。帯の付いたのが、8つもあって。末広がりということでって。今度は、こちらが、ご挨拶に行かないといけないけど、どうすればいいのかしら?」


 夫婦二人で、顔を見合わせる。

「向こうは、こちらの状態は、分かっているような感じだったから。普通にすれば、いいのじゃないか?」


「やっぱり旧家とかで、こっちの事。調べたのかしら。父親が公安関係で、おじいさんが神主さん? なんだか、不思議な組み合わせね」


「ひょっとして、陰陽師とか、そういうものかな?」

「だとしたら。水希の才能って、そっち方面なのかしら?」

「鬼退治とか? 最近流行っているから、なんだかかっこいいな」

「そんなのなら。危ないことに、ならないといいけど」

 ため息をつく、水希の両親。


「ただ。仕事の事とかは、黙っていてくれって言ってたわね」

「単なる公務員ということでって。やっぱり、身分がばれると良くないのかもな」

「下手にばれると、犯罪組織に攫われてとか、あるのかしら?」

「どこかのドラマじゃあるまいし。命が危険とか、あるのかな?」


 飛田家では、突然持ち込まれた話のせいで。眠れぬ夜が、数日続くこととなる。



 行人は、扉を開けながら、首をひねっていた。


 あれだけ、制御ができなかった扉の開閉で。

 勝手につながっていた、別位相への接続。

 それが、じいさんの言う。力の開放後。ぴたりと止まった。

 力の制御ができないから。力を封印していたはずだが、なんでだろう?


 大体、家の人間。報連相が足りないんだよ。


 ――力は、本人だけの物じゃ。――

 ――経験し。会得したものが、本当の力となる――って……。


 すり合わせて、違う部分だけ。

 情報として、載せればいいじゃん。

 まあ。基本が、感覚的なものだから。

 説明すると。全部。こんな感じ。で、終わるのか? それはそれで。

 訳が、分からないことになるな。


 でも、概要位は。

 どんなことが、できるとか。

 ひょっとして。それも、人によって違うのか……?


 ちょっと話をまとめよう。

 爺さんの言っていたことが、本当なら。うちの家系は、時空と炎を使える。

 で、俺は。

 水の精霊から加護をもらったから。プラス1つ。


 精霊の説明で。力は、魂になじめば。使い方がわかると言う事。

 実際。水に関しては、思った通り。使えるしな。


 時空は、訳も分からないほど、実践はしたが。

 制御と、言えるものじゃなかった。


 炎に関しては、全く使ったことがない。

 あれか? 中途半端に、力を封印されていて、魂になじんでいないという事か? 

 封印されたが、力が強くて。勝手に、周りへと干渉をしていたのか?


 希望的には。それが、一番いいな。

 すんごい。迷惑だったけど。


 ボッチ期間。長かったものなぁ。


 やっぱり。ある程度の、説明くらい。

 難しいか。

 6~7歳くらいの子供に、時空がどうのこうの説明して。周りにしゃべるリスクを考えれば。

 そう言うこともあるが、危ないから中に入っちゃダメ。

 強制的に封じるは、正解か。


 結局。いろんな所に、扉が開いて。

 それを周りに、しゃべったせいで。俺はずっと、ボッチになったのだしな。


 とりあえず。力がなじめば、制御できそうだし。

 水希とは、婚約したし。あとは学校か。

 何を考えているんだ。あの先生は。

 結局。全員、夏休みに補習2週間て。

 ほんとうに。するのかな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る