第二章 封印解除

第13話 国民証という名の玉手箱 調査

 大和王国から戻って、無事に帰れた安堵(あんど)から。

 部屋で、倒れこんでいた。

 一度。何か物音がしたようながしたが、気にせず寝ていた。


 2~3時間して目が覚め。

 水希がまだ寝ているようだから、国民証というリング? 手首につけたバックルを操作してみる。


 一応、声に応答すると説明表示はあるけれど、当然読めない。


 いや、あそこまで文明が進んでいるなら。バリアフリーも徹底しているだろう。


 適当にコマンドという名の、スイッチを探す。

「ガイド」「音声認識」「案内」「音声コマンド操作」


 とやっていると、騒がしかったらしく。水希が起きだしてきた。

「どうしたの?」

「いや、説明表示があるのだけど、読めなくて」

「音声案内は、ないの?」

 〈ピ! 音声案内を開始します〉


「できるみたいだよ?」

 きっと俺は、まの抜けた顔をしていただろう。


「そうだね。助かったよ」

 とりあえず、頭をなでる。

「えへへ、よかったね」


「音声案内」

 〈ピ! 音声案内を開始します〉

「操作方法」

「……」


「なるほどね、これ便利だわ。ただ管理者のコマンドが、グレーアウト〈解放されていませんのアナウンスあり〉しているけど、不穏な名前があるな。強制停止とかまあセキュリティ上。あるのは分かるけど、拘束とか、内側に針でも出るのか?」


「それで、お土産にくれたものは。……空間拡張型テントとか、携帯用のトイレ室とか。……室ってなんだよと思い。取り出すと、工事現場なんかにある仮設トイレだった。コンロやエアコン。まあ、サバイバルには程遠い。キャンプ道具セットだった。まあありがたい」


 水希の方も、ほぼ同じようなセットだった。


 クラークの三法則の一つ。『十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない』と言うけど、確かにそうだな。


 物品リストから、クレジットの履歴に移動し、金額を確認すると。残高が1千万クレジットあった。ああそうか。額がこれでも、物価が分からないと何とも言えないよな。

 1千万で、パン一個という可能性もあるし。


 ……そう、思っておこう。


 水希の方には、入っていなかったけど、やばそうな武器も。いや、だろうと思える名前が、リストにはあった。これは一人の時に確認しよう。


 水希に、明日はどうすると聞くと、ちょっと行きたい気もするけど。普通のデートでも。と言ってきたので、明日までに、決めることにして、送っていくことにした。


 下に降りると、なぜかまた。デリバリー食品が乱舞していた。

 一度物音がしたとき、母さんに一緒に寝ている所を見られていたようだ。

 結局。飯食って泊って行けとなったが、さすがに泊まりはなしで落ち着いた。

 どんな親だよ。


 

 次の日。

 朝、水希が来ると、親が突然。車に乗れと言い出す。

 なぜか、みんなで出かけることになった。

 それも、じいちゃんのところへ。

 じいちゃんの家。山の中で、遠いんだよな。


 高速を3時間ほど走って。さらに山道を、これから1時間ほど入っていく。

 某テレビ番組が、来ないのが不思議な場所だ。


 到着して。うん、ひたすら山だ。相変わらずだな。

 門から入り?あれ? いつもは門をくぐった瞬間。

 首筋にゾゾっと来ていたのに、来なくなっている。

 どうして、だろう?



「おお。来たか」

 じいちゃんが、玄関に来たが、神官の白装束を着ていた。

「あれ? 今日。何か神事でもするの?」

 聞いたが、答えてくれず。

「まあ、そんなもんだ」 

 それだけ言って。さっさと移動を始める。


 管理をしている、神社の本殿にて。

 柏手が打たれ。祝詞が読み上げられる。

 粛々と神事は進み、「行人」と呼ばれる。


「これから、神降ろしを行い。封じられたお前の力を開放する」

 はぁ??


「飛田水希さん。すまないが、行人の封印を解く。神事の手伝いをお願いする」

「はっ。はい」


「力の開放には、清らかな処女の接吻が必要じゃ」

 どこかのアニメのようなセリフ。訳の分からないことを、言い出した爺。


「申し訳ないが。お頼み申し上げる」

「えっ、でも……」


「できぬか……」

 じいさんの目が、鋭くなる。


「あの。……行人君とすでに」

「うん?」

 じいさんの目が、にやける。


「しちゃって……」


「なんと!」

 じいさん。笑いをこらえているよな。


「そう言う関係に、すでになっていると……」

「はい。すみません……」

 真面目に困り。謝る水希。


 じいさんは、満面の笑みで言葉を発する。

「ほら見ろ、一人。わしの勝ちじゃ」


「くっ。なんということだ。やはり、ご挨拶に行かなくては。手が早すぎるぞ、行人……」


「へっ。なに? この茶番?」


「うん? 水希さんと、仲が良いから。確認じゃ」

「お前らは、好き!!エッチしようで済むが。親はそういうわけには、いかん。きちんと、ご挨拶も必要じゃろう? 親戚になるわけだしな」


 呆然とする。水希と俺。


「それの確認だけに、こんなことをしたの?」

「ほかに何がある? 早速。今晩送って行ったときにでも、仮の挨拶を。親御さんにせねばいくまい? そうじゃろう」


 解せん。が、間違いじゃない。しかし、なんか納得できない。

「一人(かずと)、帰りに水希さんを送って行って。行人との事を、お願いとご挨拶をしてこい」

「仕様が、ないですね。そうしましょう」


「まあ。まだ早い。小一時間は、ゆっくりしていけ」

「はい。しかし行人。……手を出す前に。親に言えよ」

「そんなもの、言えるわけないじゃないか。その時の、雰囲気っていうものもあるし」


「そうか。そんなに、ろまんちっくな雰囲気だったのか?」

 じいちゃんが、とんでもなく。にやけながら聞いてくる。


「いや。あまり突っ込まないで」

「そうか。突っ込むか、なかなかうまいのう」

「じいちゃん。下ネタ」

「はっはっは。良いのう、若いと言うのは」


 ・・・


「で、どうでした?」

「ああ。どこかで、水神様を味方につけている。彼女の方も纏っておるな」

「やっぱり。先ほどの神降ろしでも、本人も気づかんほど、なじんでおった。普通はかなり苦しいはずなのに。わしなど、比較にならんほどの適合状態だ」

「しばらく、纏わせたままでも大丈夫じゃろう。神上げは、もう必要ないかもしれんな」

「そんなにですか?」


※ここでいう神降ろしと神上げは一般の神託用ではなく、神地家独特の言い回しで。先の茶番部分でも触れていますが、能力の解放と封印となっています。一応力のコントロールができない。子供の時は能力を封じていたはずなのですが、主人公はきれいに封じられておらず、勝手に扉を開けるという事になっています。なお、神社の神域には結界があり、今まで行人は、それに触れるとぞぞっと来ていましたが、勝手に水神さんを拾ってしまい、力が増したため、この程度の結界へでもないわ、状態となっています。一応説明です。


「ああ、うちは元々。時空と火の神のはずじゃ。それに相反する水の神。普通はなじむはずもない物」


「あの娘。……飛田水希と言ったかの? 飛田なんぞは、聞いたこともない。どこかの傍系かの?」

「いえ。少なくとも、組織の系図には、含まれておりません」

「ふーむ、あの子が初代か。行人と行動中。どこかで拾ったか」

「その可能性もあります。調べたところ、彼女の両親。家系はいたって普通。……突然、能力の覚醒はおかしい」


「そうか、説明と。口止めは任せたぞ」

「はい」


 夜。少し遅くなったが、両親とともに。水希のご両親へと挨拶に行った。

 いきなり、結婚の話になったが、お互いにまだ高校生ということで、もう少し先でということにして。見送られ帰宅した。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る