第7話 初デートと、ちょっとしたイベント

 夜ベッドで考えていた。


 そうだ。連れて行くにしても、平日はきっと無理だろう。

 週末だけ連れて行けばいい。

 それできっと満足をしてくれる。だろう? 多分?


 それで、失う物は、ボッチだけとなる。はず。


 俺は、ドキドキしながら、彼女に連絡ツールで、お休みと送ってみた。

 すぐに既読マークがついて、お休みのにゃんこキャラクターが送られてきた。


 おもわず、その画面を眺め。えへへっと笑いが出た。

 周りで誰かが見ていれば、さぞかし気持ち悪いことだろう。


 それから、10分ほど。ベッドの上で、じたばたしていた。

 今まで、広告しか送られてこなかった。連絡ツール。


 こっちから送るなんて、どこかの店のクーポンを貰うため。

 会員登録以外で初めてだ。


 連絡ツールって良い。

 多分。初めて、本来の使い方をした。


 家族からの連絡は電話だ。

 家族だと、無料だからね。

 トイレに居ようが用事をしていようが、無慈悲に着信してくるあいつだ。


 うっとうしいから、着信を切っておくと、つながらないと文句を言われる。

 逆だと用事をしていたんだから、仕方がないじゃない。と、言われる理不尽さ。

 


 翌日の朝。

 俺は、舞い上がっていたのか、玄関ドアを開けて。

 そのまま出てしまった。


 そこは、運悪く。トカゲな人たちの住む沼地。

 足を取られて、全身ダイブしてしまった。


 頭から突っ込み全身が泥だらけ……。何かの天罰か?


 ドアを開けて、家に戻る。

 時計を確認すると、まだ6時半だ。


 シャワーを浴びても、学校には間に合うだろう。

 うれしすぎて、舞い上がり。

 普段よりも、一時間も前に出ようとしていた事に、気が付いた。

 ……浮かれすぎだろう。俺。


 シャワーを浴びて、タオルを濡らしす。

 カバンとかの泥をぬぐい。

 いつもの時間に、家を出た。

 考えれば、これはラッキーだったのか?


 学校には、いつもより。なぜか15分も早く。ついてしまった。

 いつもの靴を濡らしてしまい。今日は普段はかない靴で、色が赤だったから。抑えていてもきっと基本性能差でスピードが違うのだろう。

 などと、本人は思っているが、鼻歌を歌い。陽気にスキップをしながら。高速で移動するところが目撃されていた。



 いつものように、誰かがドアを開けるのを待って。中へ入る。

 だが、教室の雰囲気がおかしい。


 昨日。踊ったせいなのか?


 ちょっと、周りを気にしつつ、机に向かう。

 なんで、こんな雰囲気なんだ……。


 少しして彼女が登校してきた。

 その瞬間。ざわめきが大きくなる。


 彼女も、それが分かったのか、首をひねっている。

 ただ俺と違うのは、すぐに駆け寄って行く友達だろう。


「昨日はどうしたの? 心配したよ」

 と、問いかけていた。


 これは後で彼女から聞いたのだが。

 昨日、俺ともつれるようにドアを出たのを、心配した彼女の友達が、廊下に様子を見に行った。

 しかし、心配した彼女の姿が、どこにも見えず。

 あわてて、連絡ツールで連絡を取ろうとしたが、既読もつかない。

 

 電話も電波が届かないと言われて、パニックになり、けっこうな時間。みんなで探し回ったようだ。

 彼女はどうなっていたかを問われたが、さすがに答えることができなかったようだ。


 行人くんの苦労が分かったと、言ってくれた。


 結局。

 普通に帰った。

 スマホは、電源が落ちていた。

 そう言って、終わらせたそうだ。


「心配をかけてごめんね」

 と、言ったら、納得してくれたようだ。


 俺? 誰も、何も聞きに来なかったよ。当然。

 踊ってたという枕詞が、変な奴の上に増えただけだ。


 学校での、基本的な生活も、何も変わらなかった。


 彼女は登校から下校まで、友人と行動をしているし。

 学校で俺となれなれしくしていると、よくないだろうから、その辺は気にしていない。


 だが、なぜだか。学校から帰って少しすると、俺の家に彼女が現れる。

 俺の部屋で、彼女と勉強をすることになっていた。

 平日の、不純異世界ライフが、潰えた瞬間である。


 日曜日に、異世界へ遊びに行くことを約束して、土曜日に必要そうなものを買うため。一緒に出掛ける事になった。


 ただこの。必要なものというのが曲者。

 開くたびに環境も違うし。

 目的地を狙うと、それを読んだかのように、つながらないことがある。

 きっとひねくれた神様が、サイコロを振っているのだろう。


 そういえば、彼女が家に来た日。

 親の方が舞い上がり、寿司やピザのデリバリーが、食卓の上で乱舞をしていた。

 ただ、変な息子だけどよろしくね。と言う挨拶は、親としてどうだ?


 土曜日。

 専門家御用達の、アウトドア専門店に行くというのは、初デートにしてはおかしいので、ショッピングモールの中に、ある方のアウトドア専門店に行った。

 彼女が、デートと考えているかは不明だが、俺的にはデートだ。


 買い物の内容は、彼女の身の回りの物や。

 軽食を持ってもらう予定。

 基本的な、30L程度のザックと、薄手のシュラフを購入してもらった。


 今まで使わなかったが、テントとかも必要だろうと、80Lタイプのザックを購入して。さらに、目についた使えそうなものを購入していく。


 斧やナイフも購入した。

 自分だけなら逃げればいいが、男には守らなければいけない時が…… あるかもしれない。


 気が付けば、かなり散財してしまった。

 こういう店は、ロマンが溢れている。

 一人で来ると、必ずタイムリープをするんだよね。

 ホームセンターも危ない。


 買い物が終わり。

 軽く食事をしていると、ちょうど、見たい映画があるというので、買い物をロッカーにぶち込み。映画を見に行く。


 地球から遠く離れた星で。体を対応させるため、現地の生物と掛け合わせた生き物に憑依する映画で、作中の風景がすごくきれいだ。

「きれいだ」と声に出してしまったのか。なぜか隣で、水希があたふたしている。


 見終わり。隣接したフードコートで椅子に座る。

「あんな景色のところも、あればいいね」


 などと話をしていると、少し離れた所からこっちを見ている奴らがいる。

 なんだか、睨んでいるなあ。

「なあ水希。あそこでにらんでいる奴。知り合いか?」


 すると、知っているようで。

「えっ。あれって、同じクラスの。え~と元普(もとぶ)君と、隣は雑古(ざこ)君だよ」

 えっ。同じクラスだったのか?

「そうなのか。覚えてないな。なんで、にらんでいるのだろう?」


 睨んでいるのが、気にし始めると、気になってしようがない。

「気になるから、ちょっと聞いて来よう」

 そう言って。水希と、つないでいた手を放す。


 彼女が、慌てる。

「えっ、やめなよ。ほっとけば、いいじゃない」

 そう言われて、考えるが。

「いや悪意があるなら。周りに人がいるところの方がいい。2人に襲われたら、お前を守れる自信がない」

 そう言って、二人に向かう。

 水希はなんだか、赤くなってパクパクしている。


 相変わらず、睨んでいる奴らに声をかける。

「さっきから、なんか用か?」


 すると、ちょっと引いていた2人だが。

「誰だよおまえ。飛田さんと、仲良くしやがって」

 と、言って来た。


 ほう。彼女に用事か。

「なんだ。水希に用があるのか。でも残念だが、あいつは用がないようだ。それじゃあな」

「ちょっと待てよ。こっちへ来い」


 強引に、2人掛かりで、連れていかれる。

 おとなしく連れて行かれながら、ドアを開ける瞬間。

 ドアノブへ、先に俺が手を出す。

 体は、お互い触れている。


 よし。向こう側を確認していないが。

 二人を押し込む……。

 うん? 砂漠か。ここって、あそこかな?


 少し向こうの方で、全長10mくらいのワームが、砂から飛び出して、上にいた4足歩行の動物を丸呑みにした。

 

 着地した、ズンという振動が、こっちまで伝わる。


 2人は、その光景を見て、絶句している。


「なあ。ちょっとこっちに来いって。ここでいいのか?」

 しれっと、聞いてみる。


「なぁなぁ。なんだ此処……」


 俺に聞いたわけじゃないだろうが。

「砂漠だろ」

 しれっと答える。


「砂漠は分かっている。ショッピングモールにいて。ドアをくぐっただけなのに」

「なんかの、タイトルみたいなことを言わずに。話をしようぜ。こっちは、デートの途中なんだ」

 やった。言いたかったセリフ。ついに言った。『こっちはデートの途中なんだ』なんて良い響きなんだ。


「でーとぉ。……そうだお前。憧れの飛田さんと付き合っているだと? お前。思い出したけど、踊る変人じゃないか?」

 そういや。枕詞が増えていたな。

「踊る変人ね……」

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