第2話 理科室

チャイムが鳴って二限目が終わる。

次の時間は化学だ。実験をするから理科室に行かなければいけない。

化学の教科書とノート、筆箱をもって教室を出る。

理科室は2階にあるため階段の方に向かう。

この学校にはエレベーターがあるが、階段を使うことができない生徒や先生以外は使ってはいけないという決まりがある。

だが、そんな決まりを無視してエレベーターを毎日使用している生徒は多数いる。

しかも、エレベーターを使用しているのが先生にバレたとしても苦笑いをしながら軽く注意をするだけだ。

そのため、階段を使うことができない生徒や先生しか使えないという決まりはないようなものだ。

エレベーターを使用している生徒は基本的に陽キャなので、自分みたいな陰キャたちは階段を利用している。

今回も自分の事をいじめてくるクラスの陽キャ共がエレベーターを使っている。

そんな光景を横目で見ながら、階段の方に向かう。


「やあ、守くん」


階段を下りている時、後ろから名前を呼ばれた。

変な呼び方、男子高校生にしては少し高めで特徴的な声。

すぐに誰かわかった。自分が一番関わりたくない人物、小山大知だ。

身長が低く声が特徴的で高い声をしている。しかも、皆が想像する典型的な厨二病。

関わりたくないので聞こえないフリをして、階段を下りる。


「なんで無視するんだい?あ、俺様が光っていて見えないのか!アッハッハッハ」


何を言っているんだ。冷たい目で大知の事を見る。


「な、なんだその目は?ま、まさか、俺様が輝いていないとでも言いたいのか!?」


前を向いて階段を下りると大知が後ろから早歩きでついてくる。


「なんの用だ?」


このままつきまとってくると、いざというときに超能力が使えなくなる。

話だけ聞いた方が早いかもしれない。


「やっと俺様に耳を傾けてくれたな。化学のプリントのこの部分なんだが、この答えで合っているか?」


プリントを見ると、元素名に合うように元素記号を書くプリントらしい。

大知が質問してきた問題は水素の元素記号を書く問題だ。

水素の元素記号はHだ。しかし、大知はNと書いてある。


「合っていない。Nは水素ではなく窒素の元素記号だ」

「なに?答えはなんだ?」

「H」

「Hなのか!まさか、この俺様がこの程度の問題を間違えてしまうとは」


コイツは頭も悪いのか。


「次はここの問題だ!」

「却下」


よく見てみると、プリントのほとんどが間違えている。

合っているのは酸素の元素記号だけだ。

よく高校生になれたもんだ。


「良い事を教えてやろう。この酸素の元素記号以外は全問不正解だ」

「な、なんだと」


めちゃくちゃ驚いている。一体、何問正解していると思っていたのだろう。

そんな事を思っていたら、いつの間にか理科室に着いていた。

大知君と自分はそれぞれ個々の班に向かう。

理科室にある背もたれのない椅子に座り、先生が来るまで机に伏せて目を瞑る。

机に伏せていると、後ろから肩を軽く叩かれた。

しかし、振り向いても誰もいない。

遠くで俺の事を見て、笑っている人もいるがあいつらではない。

だが、だれが俺の事を叩いてきたのかは知っているはずだ。

俺の事を見ている連中の方を見て小声で「テレパス」と唱える。

頭の中に笑っている連中の心の声が聞こえる。


「小山大知マジでかまちょやん。机の後ろにしゃがんで隠れてるし」


ここ最近で一番大きなため息をつく。またあいつか。

時計を見ると、授業開始まで残り5分を切ったところだ。

寝させてくれと思いながらまた机に伏せる。

20秒くらい経つと、また肩を叩かれる。

その瞬間振り向くと、大知が目の前にいた。


「ははは。とうとうバレてしまったか。だが、守君。君は我が光速の動きについてこ

られず一度見落としていたな!」


何を言っているんだ。理科室でゆっくりできると思ったのに。


「もう授業が始まるから席に戻ってくれ」

「なに?まだ、3分もあるじゃないか!俺からしたら光速で動ける俺からしたら3分なんて一時間と同じくらいのようなもんだ。はーっはっはっは」


もう一度、思い切りため息をついて寝る。

大知がかまってくるが、先生が来るまで無視をすることにした。


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いじめられている陰キャは超能力者。 ぴおん。 @novePion

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