第14話 ユメグイ肆

 明が目を覚ますと、シノノメ探偵社の古びたソファーの上だった。身体を起こしてあたりを見回すの、反対側のソファーに久斗が眠っていた。美しい顔にチャラそうな態度が乗らなければ、こんなに美麗な芸術品のようになるのだと見つめてしまう。

 起きた明の気配を感じたのか、久斗も一瞬眉間を寄せて、目を開いた。

「ん……おはよう明」

「……おはよう」

 久斗がソファーで寝て固まった身体をほぐすように伸びをして、ソファーから立ち上がった。そのまま明がいるソファーに移動してきて、明の前髪をかきあげ、明の顔をじっと見つめてきた。

「……何かついてるか?」

「お前、三日も寝ていたんだぞ」

「は?」

「心配するな。お前を俺も夢から出られたし、あの依頼者も無事。あ、そうだ。依頼者がお礼に持ってきたゼリーがある。食べるか?」

 久斗の問いかけに頷くと、久斗は立ち上がり、冷蔵庫に向かった。明の前にピンク色をした白桃入りのよく冷えたゼリーが置かれる。蓋もはがしてくれていて、久斗の気遣いになんだかくすぐったさを感じる。三日も寝ていたらしいので、心配してくれているのだろうかと思うことにする。口に入れたゼリーをちゅるんと食べやすく、白桃の果肉も疲れた身体に染み渡るのがよくわかった。

「うまい」

 ご満悦な明の様子を見て、久斗が声なく笑った。

「よかったな。……明は祓う力が異常に強いみたいだ」

「? 全然祓えてなくないか? 俺見えるだけだぞ」

「普通の祓師なら祓えない質のバケモノを祓ってる。ユメグイはベースが人間だから祓うのが難しいんだよ。何か発動条件があるのかも」

 久斗が明を探るように見つめるが、その視線から逃げるようにゼリーを口に運ぶ。

「おい、お前もゼリー食えよ」

「んー、そうだね」

 二人で並んでゼリーを食べた。

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