第13話 兎口:山道

 ここ数日で、いつもつるんで遊んでいる四人のメンバーのうち、三人が死んでしまった。残ったのはあたしだけ。もう一刻の猶予もない。昨晩殺されなかったのがむしろ奇跡に感じるくらいだ。


 あたしはクラスで頼れそうな坂木に相談した。いつものメンバーはバカばっかりだったし、他に頼れそうな人を知らなかったから。彼女は友達も多くてしっかりしている。なんとかしてくれそうだと思ったんだ。


 彼女は期待通り、頼りになりそうな大学生のお兄さんを引き込んで、情報を集めたりしている。そして今は、原因になった場所に向かって歩いている。


 正直怖い。


 あんな大きな穴がなくなるとか、意味がわからなすぎるもん。しかも根塚君も行方不明になっちゃうし。

 呪いの元に近づくこと自体、かなり怖い。木や草が風で揺れて音を立てるたびに、そこからネズミの群れが飛び出してくるんじゃないかって気が気じゃない。


 舗装された道がなくなったら、川沿いを登って行く。地図を確認しながら、実際に祠まで行ったことのあるあたしが先を歩く。最初に来たときは雨上がりだったからこの辺まで水が流れていて、もっと歩きにくかった。今はまだマシだ。

 辺りを確認して、道を思い出しながら進む。って言っても、まだ何回かしか来たことない場所。とにかく通れるところを通って、川の上流を目指すだけ。


「ちょっと、待って。休憩、休憩しようよ」


 一番後ろを歩いていた砂辺がそんなことを言う。コイツなんで付いてきたんだ? 坂木が相談したのは知ってるけど。


「じゃあ少しだけ休憩しよう。そこの石、座れそうだよ」


 中川さんが声をかけながら、大きなリュックから水を取り出してみんなに渡して回る。あたしも会釈して受け取った。

 彼は地図と時計を見比べている。まだまだ明るい時間だけど、帰りのことを考えるとそんなに余裕があるわけじゃない。


「兎口さん、あとどれくらいかわかる?」

「そこの段差を越えて、少し行ったところです。十五分はかからないと思いますけど」


 あたしは砂辺を見ながら言った。コイツのペースに左右されなければね。


「じゃあそろそろ行こうか」


 えー、もお? とか言ったのはその砂辺だ。足手まといになるなら帰れよ。


「調べる時間もあるからな。こんな山の奥で真っ暗になったら、それこそどこからネズミが湧いてくるかわからんよ」


 そう言われて急に怖くなる。木々の間、石の隙間、どこから襲われてもおかしくなかったんだった。

 水をしまって立ち上がり、先に立って歩き始めた。

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