第12話 砂辺:放課後
「ふわぁ……」
大きなあくびがおさえられない。昨日、熊野と鹿島が死に、しかもその両方の死に際に直面して、昨日の夜はほとんど寝られなかった。実際、今日はクラスでも何人も体調不良で休んでいる。
クラス内で一日に二人も不審死した事で、今日の授業は午前中で終わりになった。
先生からは、くれぐれも家でおとなしくしているように、と言われていたけど、僕、坂木さん、兎口さんは、中川さんと一緒に調査の続きをするつもりだ。
学校では、昨日の出来事については詳しい説明はされなかった。とにかく今は調査中で、むしろなにか知ってる事があれば情報提供して欲しいと頼んでくるほどだった。
集まった僕たちは、公民館に行くことにした。スクナ様の詳しい話を少しでも聞くためである。祠の場所は兎口さんが知ってるはずだけど、専門家の人からもいろいろ聞いていれば、なにかのヒントが見つかるかもしれない。
「今日はまだ他に犠牲者は出てないのか?」
中川さんが聞いてくる。
「少なくとも、学校からは聞いてないね」
「みんな自身はどうなんだ? なにか変わったことは?」
「実はこれが……」
僕はズボンの裾をずり上げる。そのスネの辺りに、青紫の傷痕が。
「いつの間にかこうなってたんだ」
寝てないのに、全く気付かなかった。これで僕も他人事ではなくなったわけだ。別に今までが他人事だと思ってたわけじゃないけど。
「中川さんは? その荷物はなに?」
中川さんは珍しく大きなリュックを背負っている。
「これか? まあ、もしかしたら必要になるかもと思って、いろいろな」
そういうだけで、実際に見せてはくれないらしい。
そうこうするうちに公民館に着いた。
受付の人に、学校で話をしてくれた久松さんがいるか聞いてみると、呼び出してもらえるそうだ。壁に貼ってあるポスターなど見て待つ。
「お待たせいたしました。なんやら、スクナ様について詳しく聞きたいとか?」
「お忙しいところすみません、すごい興味深いお話だったんで、もっと聞きたいと思って。少しだけでもお願いできませんか?」
「ああ、ええですよ。どんな話が聞きたいんですか?」
僕たちはある程度当たり障りのないところから話を聞いていく。その中で今回の事に絡む話題に言及していく。
「あの、スクナ様が人を呪う、ような事はあるんですか?」
中川さんが質問をする。
「ああ、そうだなあ。そもそもこういう神様の伝承ってものは、自分たちではどうにもならない自然の被害とかに理由を付けたくて出来上がっていくものでもあるから。ネズミやイノシシに農作物を荒らされる被害を、スクナ様の天罰みたいに扱ってた事もあるみたいだな」
「それは、動物が直接人を襲ったりとか、そういう事もあったりしたんでしょうか」
「まあ、実際には病原菌を媒介したり、弱った人を襲ったりなんて事はあったんだろうけど、スクナ様が直接ってのは聞かないなぁ」
「そうですか……」
もしそういうのがあるなら、それを止めるための儀式とか解呪の
「ありがとうございます。いろんなお話が聞けて良かったです。あと最後に、僕たちも実際にスクナ様の祠を見てみたいんですけど、どうやって行けばいいか教えてもらえますか?」
「そうだなあ、最近は雨も降ってないから大丈夫でしょう。ちょっと地図を……ああこれこれ」
久松さんは、パンフレットの後ろにある町の地図に印を書き入れながら道順を説明してくれた。
「舗装された道があるわけじゃないから、足元によく気をつけて行きなさい。ただ、雨が降ったあとには行っちゃだめだぞ」
「何故ですか?」
確か、スクナ様に貢物をするときには、スクナ様が祠に帰っている雨の後にすると言ってたはずだけど。
「祠は川沿いにあるから、増水して危険なんだ。滑って転んだら、怪我じゃすまんからね」
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