第6話 砂辺:自室

「で? 僕にどうしろっていうの?」


 夜、珍しく坂木さんから電話がかかってきたかと思ったら、犯罪に手助けするように誘われた。


「砂辺君、犯罪とか言わないでよ。わざとじゃないし、出来る限りのことはやったみたいだし」

「ホントかよ。だって根塚って鹿島たちにイジメられてたヤツだろ。どうせあいつらが突き落としたんだよ。だから今まで黙ってたんだろ」

「だとしてもだよ。助けられるなら助けたでしょ」

「じゃあ警察に届けたら? そっちの方が絶対いいって」

「信じてもらえると思う? 人が『スクナ様』に連れて行かれたって話してさ」


 僕は考える。でも実際に行方不明の子供の情報なんだから、調べてくれるんじゃないの? とか考えていると、


「え、あれなに?」


 坂木さんがなにか言っている。


「なにって?」

「あ、うん……なんでもない。見間違いだったみたい」


 なんだよそれ。


「それよりさ、ほら、警察ならスマホの位置情報とかでわかるだろ。今根塚がどこにいるのか、どこにいたのかとかさ」

「それがね、あの人たち、アシがつかないように、一緒に行動する時はスマホ家に置いて行くんだって」

「なにそれ。悪いことする気まんまんじゃん」

「それもあって、あんまり警察とかには言いたくないみたい」

「そんなの知らねーよ」

「ねぇ、そんなこと言わないでさあ、協力してよ」


 坂木さんが珍しく頼りにしてきた。そういうときは、多分あれだ。

「で、結局僕にどうしろって?」

「ほらだからさ、中川さんに、相談出来ないかな?」


◇◆◇


 スマホを操作して通話を終了する。

 中川さんと会うためのダシに使われているとは分かっていても、幼馴染の頼みとなれば断るのも難しい。

 とりあえず中川さんにメッセージを送っとくか。

 そう思って、適当にベッドに横になってスマホを操作していると、視界の端でなにかが動いたような気がした。


『チチッ』


 なんだ? 机と本棚の間くらいのところだ。人が隠れられるような隙間じゃないし、うちは犬も猫も飼っていない。

 ゆっくり近づいて覗いてみるが。


「……気のせいか?」


 特に何もなかった。

 ただ、気味悪く思ったのは、それが顔っぽく見えた。それだけのことだった。

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