第4話 兎口:放課後
「おい兎口、帰るぞ」
鹿島が呼んでる。でも今日はそんな気分じゃなかった。
「ごめん、今日はちょっと用事があるから」
そう言ってあたしはカバンを手にして踵を返した。
「坂木、行こ」
「え、でも」
「いいから」
坂木の手を取って、強引に教室から出る。
おい! という鹿島の声は無視する。鹿島や熊野はアノことについて話がしたかったんだろうけど、あたしはもうあいつらに付いていくのが嫌になったんだ。
階段まで来たら手を離して下りる。それでも坂木はちゃんと付いて来た。
坂木は去年のクラスでも一緒だった。よく話すようになったのは今年からだけど、鹿島たちとつるむようになってからは、鹿島たち以外で話をする数少ない友達だった。
「どこに行くの?」
「えっと……」
どこにしようか、そこまで考えてなかった。歩きながら考えをめぐらせる。別に個室のような閉鎖空間じゃなくても大丈夫だろう。逆に周りに誰もいないことを確認できる方がいいかもしれない。なら、あそこにしよう。
「神社のところにある公園。あそこまで行こ」
十分くらい歩いて公園まで来た。公園といっても遊具があるわけでもなく、植木に囲まれた中にただベンチがいくつか置いてあるだけだ。
キレイそうなベンチを選んで座る。少し間を開けて、坂木も座った。
坂木がこっちを見ているのがわかるけど、あたしは誰もいない公園を見回して気持ちを落ち着けていた。本当に話してもいいんだろうか。でももうあたしだけでは対処できない。鹿島たちはあてにならない。
「なにか、あったの?」
「ねぇ坂木さあ、知り合いいっぱいいるよね。大人のさ、頼りになる人とか、知らない?」
「えぇ!? 急にどうしたの。まあ、内容によっては、話くらい聞いてくれそうな人はいるけど」
「じゃあ、お化けとか呪いとか、そっち方面の話だったら、どう?」
「の、呪い? そういうのは、どうかな」
「ねぇお願い。あたし、『スクナ様』に呪い殺されそうなの」
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