第13話  学校見学♫

お出かけ装束ができたので、いよいよ兄さんと学校見学に行くことになった。

 そう フルーツ氏の希望で私は彼のことを「兄さん」と呼ぶことになったのだ。

 わーお!


 パフェ家の皆様が 「その方が落ち着く」「しっくりくる」「何時までも他人行儀の呼び方をされたらおさまりが悪い」というので、そうなったのだ。

マロンさんは「母さん」ドリアン氏は「父さん」私のことは「ナッシー」と呼び合うことに。


「大学は広いから、迷子になったら 正門の守衛室の前で落ち合おうね。

 でも はぐれたところから守衛室まで歩いて行くのもたいへんだから、

 はぐれないように腕を組んで歩こう」と兄さんは言った。


「この歳になって 大人の男の人と腕を組むのは恥ずかしい」


「手をつなぐよりは気楽なんじゃない?」


「そりゃまあ そうだけど」

なんて言いあいながら校門をくぐった。


意外と 男も女も 同性・異性関係なく腕を組んで歩いている人たちが多かった。


同性の友人どうしで腕を組んで歩くのは親愛の情を示す ごく当たり前のことなんだそうだ。


それに 兄が妹を校内見学するときも、妹には俺が付いてるんだぞと周囲をけん制するために 妹の腕をとるのが一般的らしい。


「恋人同士は手つなぎが一般的だから、同性異性関係なく むやみに人と手をつないではダメだよ。」


ということで 兄さんの腕にそっと手を差し述べて案内してもらった。


まず教務課に行って 講義概要と研究室案内をもらった。

 10キロくらいありそうな冊子の山が二つ。


それらを風呂敷に包んで、学内にある兄さんの研究室まで行った。

「無理のない範囲で 学生は自分の勉学の道具は自分で運ぶ!」ということなので

風呂敷包みを背負って うんさかとっと。

 といっても さすがに20キロ担ぐのは無理なので一山は兄さんに持ってもらった。


「君が「生活のために法学、自分の為に医学に行きたい」というから 文系・理系両両方の冊子を運ぶ羽目になったよ」


「だって 可能なら 生活の安心のために法律を、自分の将来を手に入れる為に医学を 欲を言えば 自分の未来を見つけるためにその他の科目を学びたかったんだもの」


「君は15歳だから 今から教養学部と法学部を4年学んでから理系に進学しても年齢的には余裕があるよね」


「とりあえず 見学の順番を決める為にも まずは冊子を見て、興味のある所に印をつけて。 

 11時まで 僕は自分の仕事をしてくるから。

 ピックアップが早く終わったら 遠慮なくコールしてね」

そういって兄さんは出て行ったが、すぐに引き返してきた、お茶セットをもって。


「のどが渇いたら このポットで湯を沸かして紅茶でも緑茶でも好きな方を入れて飲むように。じゃ ごゆっくり」 そういって 兄は出かけた。


たぶん 私が一人で集中できるように気を利かせてくれたんだろうなぁ。


「コール」と言うのは、小型の通信機のことだ。

  短縮番号1で兄 2で母 3で父につなるようになっている。

  それ以外の人との通信方法は 大学に入学後教えてくれるそうだ。


そこで まずは理系の冊子を開いた。

 面白そうな分野がわんさかある。


 冊子を見ていて気が付いたが 医学部って暗記科目がめちゃくちゃ多い

 毎週試験があって それに合格しないと次のステップに進めないシステムだ

  げ~ 面倒な


 生物学の方が まだ探求的側面が強くて面白そうだ。


 私は臨床医学部(山もりてんこ盛りの暗記項目)よりは 基礎医学研究部(人体に特化した生物学とでもいうのだろうか?病理研究から治療法の検証まで多岐にわたる)の方が面白そうだと思った。

 やっぱり 生体研究なら人間を対象とした方が親しみがあっていい。

 それに 人の暮らし・人の幸せに直結して貢献できそうだし。


 天体や地質も面白そうだけど この大学では計算機を使ったモデル作りが主流みたいだから ちょっと~って感じ。

 かといって フィールドワークのロマンを追求するのは お金の算段に悩まされそうなので、貧乏性の私には気持ち的に苦しくなりそう。しくしく


 数学の暗号論は 趣味としては面白そうだし、成功すれば大金が稼げそうだけど、政治的に翻弄されそうで下手すると犯罪に巻き込まれそうなので 臆病な私には生活面でストレスがかかりそうだ。


ここまで読んで 時計をみたら11時5分前だった。

 興味のある所にしおりを挟んで机の上を片付けたら兄さんが入ってきた。


「どうだった?」兄


「時間的に理系のパンフを部分的にしか見れなかった」


「それで?」兄


先ほどの感想を伝えると、

「そっかぁ 自分の性格と絡めて 的を絞るのは良いことだね。

 でも 絞りすぎて 自分で自分をしばっちゃったと感じたときには 再設定してもいいからね」と言われた。


「でも それって 出遅れにならないかしら?」


「その辺は その時に検討すればいいさ。

 君は自由なんだから。

 そして 君の成長を手助けするために 君の学究生活のスタートを支えるために僕たち家族があるんだから。

 最終決定の時期っていうのも その時が来ればおのずと自分でわかるもんだよ。

 それまでは 試行錯誤オッケー。

 そのための応援団が君にできたんだと思ってほしいな」兄


「はい」なんだかウルっときちゃった。

 自分で自分を縛って 倒れそうなのに倒れないように頑張らなくていいなんて

 自分の生きたいところに歩いて行く自由とそれだけの余力があるなんて うれしー。


 いつだって 不測の事態に備えて 自分の力を温存することに気を使わなくても良くて、全力で前に進めるこのぜいたく!

  これが どれほどありがたいことかは、こき使われ、小突きまわされ、成果を奪われ続けたことのない人には、絶対わからないことだろう。


というわけで 午後からは 食堂、私が目星をつけた学部のある棟とその近辺の売店・休憩所などなどを見て回ることになった。

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