ナツヤスミ

空透 

第1話:国民全員への”夏休み”通告。

夏休み。子ども、広げれば大学生までの専売特許。

私にはもう夏休みなんて来ない、と思っていた。なぜなら私、桜田そらは23歳。

人生の夏休みと言われる大学生を終えて、社会人になっていたのだ。

そのはずだったのだが・・・。


私は、休みの日(月曜)に買い物に行くため、都市の街を歩いていた。

ざわざわと人が多い交差点。なにやらいつもより騒がしい気がする。


「えー」そんな低く、大きな声が聞こえて、私はふと上を見上げる。大画面に映る政府の人と目があった。その大画面からはこんな声が聞こえてくる。


「2100年ー今年の夏から、現状のところ、8、9月は日本国民全員夏休みにします。夏休みの間は、通常の仕事はなし。みなさんに配る通知表をもとに、住む地域に行ってください。その中で問題を抱えている場所をダンジョンと指定しています。ダンジョンを中心に、そこで、活動や生活をしてください。」


ん??夏休み??社会人の私には聴きなれない単語だぞ。私は教育関係の仕事についているから、夏休みはただでさえ忙しいはずなのに、って、え!?夏休みに仕事がなくなる。そんな馬鹿な。声はその後も続いた。


「・・・えーその地域には、お子さんがいる家族はその家族と行っていただきます。塾などにいきたい場合は、その地域で寺子屋などをしてもらってください。この夏休みでは仕事はありませんが自分の特技に合わせて、ジョブを指定してもらいます。そのジョブでの活動が宿題になります。指定したジョブに応じて訓練をしてもらいその後・・・。」


それはつまり、経済を止めるということか!?私の頭はストップしかけた。が、そんな頭を使って聞いた情報を組み合わせて今の状況を考えた。


最近の日本は度重なる自然災害、人口減少、過疎化、一次産業への従事者不足・・・などで、あらゆる地方は、荒廃し急速な進化を遂げた生き物が多く存在してしまった。そしてその生き物は夏が活動の全盛期。もっと増えると食糧の関係から都市を襲いかねない。だからこそ、この夏休みで、なんとか、その荒れ果てた土地、生き物をなんとかしようという考えということらしい。それは、経済を止めてでも、しなければいけないほど緊迫している状況なのだ。


周りのパニックの声、政府の人の緊迫した声と裏腹に私は少しワクワクしていた。実は、私は小さい頃からファンタジー系、サバイバル系のアニメや漫画が大好きで、ダンジョン攻略に夢を抱いていたのだ。


しかし、この頃の私は、この「ナツヤスミ」が、どんな背景でできて、今の世界を、自分達を思いもよらぬ方向に変えていくことなんて考えもしなかった。


                               第二話に続く。







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