プレゼント

「…………うがあああーー!!

 先週ルリの言った『ヤキモチ』の言葉が、エンドレスで耳にリピしてる!!

 俺の初恋の子にルリがヤキモチって……それって、つまりルリは俺のこと……

 ハアハア、動悸が凄くて心臓壊れそうだ……今週は猫モードのルリが膝に来るだけでバクバクしっぱなしだったし、我ながらアホじゃないかと思うけどどうしようもない……

 ってか、そうこうするうちにとうとうまた来ちゃったよ土曜日が!! どーすんだよ、ルリが俺のこと好きなんじゃないかとか意識した日には、ますます理性のブレーキ効かなくなるじゃんか……!!」

「にゃあ」

「ふぁっ……!! ル、ルリさん、膝来るか? よし、ほらどんと来い!」

「……」

「え、なにその冷たい目……『バカじゃないの?』って言ってんのか? わかってるよバカなことくらい……ってか俺のこのパニックモードは一体誰のせいだと思ってんだ!

 とりあえず、買い物行ってくるから! 今日はいろいろ大事な買い物があるから!」

「……にゃあん」





「こんばんは、タカヤ」

「ハアハアっ」

「ちょっ、一言目からそれやめてよ、マジキモい!……そうだ、ちょうどいい機会だから、大事な情報追加してあげる」

「ハアハア……えっ、情報追加!?」

「うん。

 私の秘密を解くまでは、私にキス以上のことは絶対にしちゃだめ、ってこと」

「…………え」

「もう一回言う?」

「い、いやいい……

 君の秘密を掴むまでは、きっキスまでは許されるけど、それ以上のあれやこれやは絶対禁止……ってことだな?」

「そう。当たり前っちゃ当たり前だけどね」

「とっ、当然だ! そんなこと最初から思ってたことだしっ……」

「本当?」

「……」

「先週、うっかり私がタカヤの初恋の子にヤキモチやいちゃうなんて言ったから……そっ、それに、あんな風に抱きついて変なおねだりもしちゃったし……私、あの夜はほんとどうかしてた。ごめん」

「いや……

 確かに、先週君のその言葉聞いて以来、まあ少なからずパニクッたりはしてるわけだけど……ルリが謝ったりすることじゃないよ。

 むしろ、ルリみたいな子に嫉妬されて迷惑に思う男なんて、世界中探したっていないし」

「……なっ、なにそれ……またバカみたいな冗談言ってる」

「冗談なんかじゃない。これはガチで本気。

 俺のこのパニックは、つ、つまり……

 あーもう、はっきり言うぞ! 俺、ルリに嫉妬されて、ぶっちゃけめちゃくちゃ嬉しいんだ!」

「…………」

「い、いやこれはその、俺の勝手な気持ちであって……君が俺のこういう感情を困るって言うなら、今すぐ引っ込めるけど」

「そんなわけない!」

「……ほんとか?」

「……っ、まっまあそんなに言うなら、これからもたまにはヤキモチ焼いてあげてもいいけどさ」

「ははっ、ルリらしい返事だな。

 でも、今の言葉聞けてホッとした。

 じゃあ、これ、受け取ってくれない?」

「何、この箱……開けていい?」

「うん」

「わあ……首環!」

「いろいろ迷ったんだけど、君の目の色と同じサファイア色の首環を選んでみた。細いベルトに、スワロフスキーのハートのチョーカーが付いてる。チョーカーが深い青色に光って、可愛いだろ?」

「うん、めちゃくちゃ可愛い……!! つけてみていい?」

「えっ、でもこれ猫用だから、人間モードの君にはサイズが小さいんじゃないのか?」

「ふふ。そんなの大丈夫。

 ほら、どう? 似合う?」

「……うん。似合うよ。すごく。

 ……ってかルリ、今気がついたけど、今日の白ワンピ、胸が心なしか前より広く開いてる気が……」

「え、だってもう7月だもん。私の服、これからどんどん夏モードになるよ」

「は、マジか!? 嘘だろ……真っ白マシュマロ寄せたみたいなその谷間がこれからもっとばっちり見えたりすんのか……」

「え、何?」

「い、いやいや、首環すごく可愛いなあーって!」

「えへへ、ちょっと恥ずかしいな。

 でも、すごく嬉しい!! タカヤ、ありがとう!」

「うわっ!! だからっそんなきつく抱きつくな! 特大マシュマロ2個が胸にぴったり密着……しっしかもこの首環つけると首筋の色っぽさ100倍増しじゃんか……あああ、もしかして選ぶもの誤ったか俺!?」

「なによー、さっきからぶつぶつ言って!」

「い、いやなにもっ!!」

「あ、今日もショートケーキ用意してくれたんだー嬉しいっ! もうあんまり時間ないから急いで食べなきゃ! いっただきまーす!」

「頼む、一旦胸離して食べてくれ! 胸!!」



「……にゃあん」

「本当だ。猫に戻っても首環ぴったりなんだな」

「うにゃん……みゃあん」

「はは、めっちゃ甘えるじゃん。そんなに気に入った?……まっ待て、最近君にそうやって指しゃぶられるとちょっとヘンな気分に……ぐあーー、消えろ雑念!!

 実はな、そのチョーカーの裏側に、俺の連絡先の番号を刻印してもらってあるんだ。——これで、君がどこに行っても俺の大切な子だって、わかるだろ?」

「にゃあ、にゃうん」

 

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