第7話-③
そう、そういうことだ。
真逆の疾患でありながら、それによって出る症状や寿命の原理はよく似ている。だから、言わなかった。
分かり合えると思ってしまっていては、きっと小さな違いにがっかりし、イライラしてしまう。事前にあの話をしていなければ、僕は今本当のことは言わなかった。
「僕は君の大変さを全てわかることはできない。ほんの少し、他の人よりは共感できる部分があるというだけだ」
「……ただこの話を聞いてたら、先生が共感してくれるって、過剰に期待してたかも」
「期待されちゃあ困るね」
少しだけ笑う。
「長い間生きるって、どうなんだろう。私はちょっと羨ましいかも」
「どうかな。親はとっくに死んでしまったし、誰かと仲良くなってもその人は先に死んでしまう。同じ時は歩めない。自分だけがずっと取り残されてしまうのは、中々に辛いものだよ」
「ああそうか、百年待たなきゃいけないんだもんね」
「そうだね。だから正直に言えば、大切な人がいなくなった世界で長く生き続けなきゃいけないというのを経験するよりかは、いっそ早く死んでしまった方がいい」
「……やっぱり考え方違ったね」
この世の暗いところを他の人よりも長く見続け、大切な人たちに先立たれ。ならいっそ、と思ってしまう。
それなのに僕は生徒のようなものを求め、繋がりを作ろうとする。人間はいつも、ないものねだりと矛盾ばかりだ。
「でも結局人間はいつ死ぬかわからないからね。君も思うより長く生きられるかもしれない。僕も突然コロッと死ぬかもしれない。今隕石やミサイルなんかが降って来れば寿命なんて関係ない」
「ミサイルはやだな、寿命くらい全うさせてほしいや」
誰であろうと、いつ死ぬかなんてわからない。いつだって死は、すぐ隣や後ろにいる。けれど僕にとって死は、石を投げれば届くほどの所にしかいないし、彼女にとって死は目の前にいる。
「先生、疲れたでしょ。今日はこのくらいにした方がいいよ。まだ他に話すことがなければ」
「気遣ってくれてありがとう。それじゃあお言葉に甘えようかな」
ありがたくも退室させていただくことにした。
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