第7話-②


「君とは逆なんだ。心拍数が極担に低い。一分間に二十回はざら、良くて三十回少しだ。君の心拍数が高くて寿命が短いのと同じ原理で、薬で心拍数を上げてはいるけれど、寿命は百年をゆうに越えると思う」

 事実七十歳を越えても見た目は四十そこそこ。体の機能が老いるのにどれだけかかるだろう。僕はだらだらと生きることになる。

「体内に必要な血液が回るスピードが遅いから、激しく動くと酸素を回しきれなくなる。教師になりたかったけど、教師というのはずっと立っているものだし、大きな声で話さないといけないからね。それでも諦め悪く、この病院に入ってからも他の子たちに勉強を教えている。つまり僕は、この病院の患者側なんだ」

「そんな……そうだったんだ……」

「君が倒れた時、慌てて走ったりしたらやっぱり駄目だったみたいだ。一人が緊急事態ってだけでも大変なのに、さらに増やさないでくださいって後から叱られたよ。結局僕の方が回復に時間がかかってしまった。すまなかったね」

「そんなのいいの、そっか、そういうことだったんだ……」

 僕の言動の理由を一つ一つ確かめるように頷く。

「じゃあ、百年待ってるって人は、」

「文字通りの百年だ」

「あの、ごめんなさい。先生のこと冷たい人みたいに言って。亡くなってそんなに経ってないのにあんなにあっさりしているんだと思っていたから」

「いいんだ、言っていなかった僕が悪い」

「どうして言わなかったの? 真逆ではあるけど、ちょっと似てるのに、」

 そこで彼女は言葉を止める。

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