第7話-①

 その後彼女の所へ行けたのはあれから五日後だった。彼女はちょっとした発作程度で済み、命に別状はなし。

 だが、久し振りの病室にはどこか重苦しい空気が漂っている。

「……済まなかった。後から思えばいろいろ兆候はあったのに、僕は自分のしたいことにばかり気を取られて、」

「それはいいの。生きてるし、小説は嬉しい。ありがとう。でもなんで五日も来なかったわけ? 反省してるつもり? 他の先生から咎められたわけでもないよね、聞いたら『そのうち来るから』って言ってたもん。呼んでも来ないって、何?」

 彼女の中で自分の在存が大きくなっていることに心の中で感謝しつつ、僕は一つ深呼吸をした。

「そうだね。不安にさせて悪かった。……僕の自己紹介の続きをしよう」

「続き?」

「そう。本当のことだ」

 とくり、と心臓の動きを感じる。

 僕を見つめる彼女の顔はなんだかいつもより大人っぽく、いや、直接的に言えば老けて見えた。

 もう一度大きく息を吸う。

「僕の実年齢を教えよう。本当は、七十五歳だ」

「……は?」

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